レポート
2019.05.21
「TOWER ACADEMY presents ボヘミアン・ラプソディ」最高級オーディオでクイーンを堪能

大貫憲章、QUEENESSのヴォーカル、フレディ・エトウ、サンプラザ中野くんが登壇。面白いのは映画『ボヘミアン・ラプソディ』だけじゃない!

タワーレコード主催による「音楽を題材とした映画」の音楽に焦点を当ててアカデミックに解説していくシリーズ講座。4月6日、音楽の友ホールで開催された第1回『ボヘミアン・ラプソディ』の模様を、オーディオ誌「Stereo」の筆者でもあるカメラマン、高橋慎一氏がリポート!
当日は、音楽評論家、大貫憲章氏をはじめ、クイーントリビュートバンド・QUEENESSのヴォーカル、フレディ・エトウ氏と、サンプラザ中野くん氏が登場し、会場をおおいに沸かせた。6月29日開催の第2回への期待が高まる!

写真・文
高橋慎一
写真・文
高橋慎一 フィルムメイカー
/フォトグラファー/ライター 

東京工芸大卒。雑誌・書籍・CDジャケット等でフォトグラファーとして活動中。音楽之友社では『ステレオ』誌の撮影を担当、徐々にオーディオへと開眼しつつある。2015年にド...

協賛:アキュフェーズ株式会社、株式会社ロッキーインターナショナル

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クイーンマニアが結集。大貫憲章氏のガイドで70年代初期のクイーンに聴き入る

アカデミー賞を4部門制覇し、世界中で音楽映画の記録を塗り替えるヒットとなった映画『ボヘミアン・ラプソディ』。ロックバンド、クイーンのデビューから、活動のクライマックスとなる1985年のライブエイドでの歴史的ステージまでを綴ったこの映画、世界的ブームの発火点は日本だと言っていい。映画の興行記録は本国イギリスを越えるほどで、熱狂的ファンがリピーターとなり興収は100億円を突破した。

そんなクイーンマニアが集い、映画とはまた違った角度から、この稀代のロックバンドの魅力を再考する画期的イベント「TOWER ACADEMY presents ボヘミアン・ラプソディ」が音楽の友ホールで開催された。

クイーンを語らせたら人後に落ちない特別ゲストを講師として招き、彼らのデビューから1975年近辺までの活動に焦点を当てて語りつくすこのイベント、最大の見どころ(聴きどころ)は、総額1000万円を越えるハイエンドなオーディオシステムを会場内に用意したことだ。

(左)スピーカーは、トライアングルのMagellan concerto
(上)アキュフェーズの製品は、プリアンプC-2850、パワーアンプM-6200、SACD/CDトランスポートDP-950、D/AコンバータDC-950、クリーン電源PS-1230など最上位モデル

左右に黒光りしつつ鎮座するスピーカーは「TRIANGLE(トライアングル)」のMagellan concerto。その威容にふさわしく、お値段は495万円なり。

スピーカーには左右それぞれ「Accuphase(アキュフェーズ)」のモノラルパワーアンプM-6200が繋がれ、黄金に輝く巨魁の存在感に圧倒される。そのほかのシステムもAccuphase の最上位モデルで統一され、クイーンの伝説の音源群を鳴らす準備は整えられた。とりわけ、コンサートホールでオーディオを鳴らす場合に必携といえるクリーン電源には、Accuphase のPS-1230が投入され、絶大な効果を発揮した。

会場となった音楽の友ホールの前には長蛇の列が

開場前のホールには建物を取り囲むように長蛇の列が並び、その熱気がこちらにも伝わってくる。驚いたことに参加者の多くは女性で、ざっくり見て男性は3割といったところだ。2部に別れて行なわれたこの日のイベント、第1部はロックDJといえばこの人、大貫憲章氏が登壇し、日本での“クイーンの第一発見者”としてのエピソードに客席は大いに沸きかえる。

第1部で登壇した大貫憲章氏(左)と、MCの矢口清治氏(右)

それにしても、セックス・ピストルズの日本への紹介者にして、パンクロックを日本に広めたDJパーティー「ロンドンナイト」のオーガナイザーである大貫氏の、リスナーからの信頼度は抜群。この日も80年代にロンドンナイトに通っていたというファンに囲まれていた。

 

ハイエンドオーディオが奏でる、1973年デビュー当時から1975年までのクイーン

そんな氏が最初にかけた曲は、クイーン以外の同時代を象徴するアーティストとして『デヴィッド・ボウイ/ジギー・スターダスト』。左右のスピーカーからボウイの哀切な歌が艶かしい存在感を持って迫ってくる。初めて聴くハイエンドオーディオが奏でる音の力感に、客席からは嘆息が漏れた。

 

続いていよいよクイーンのデビューアルバム『戦慄の女王』から「Great king rat 〜May Fair king」の2曲がかかると、クイーンの重層的なサウンドと、それを余すところなく伝えるオーディオシステムの迫力に皆じっくりと聴き入った。

このイベントの趣旨は、1973年のデビュー当時から、3枚目のアルバム「Sheer Heart Attack」リリース時の1975年あたりまでのクイーンの活動を探ってゆく、というもの。大貫氏の案内で、セカンドアルバムの「Queen 2」から「Father To Son」が選曲されると、参加者はさらなる集中度で楽曲に聴き入った。

じっくりと聴き入るオーディエンス

ハイエンドオーディオで70年代初期のクイーンを聴くことによって浮かび上がってきた事実は、彼らがデビュー時から卓越した演奏能力を持っていたことと、当時の英国ロックの録音環境が実に豊かだったということだ。プロトゥールスによるデジタルレコーディングが主流になる数十年前に、これだけのオーバーダビングやコーラスワークを一枚のアルバムにパッケージするまでに、一体どれだけの時間と金銭と情熱を注ぎ込んだことだろうか。

筆者も10代の頃、ご多分に漏れずロックファンだったが、この日のイベントでは当時所有していたミニコンポで聴いていたクイーンとは、まったく違ったバンドとして音の巨魁となって目の前に立ち現れた。

サンプラザ中野くんと、クイーンのトリビュートバンドQUEENESSのフレディ・エトウ氏が登壇

第2部では、QUEENESSのヴォーカル、フレディ・エトウ氏(左)と、サンプラザ中野くん氏(右)が登場

第2部ではサンプラザ中野くん、クイーンのトリビュートバンドQUEENESSのフレディ・エトウが登壇。アーティストならではのギター・ピアノ演奏、生歌ありの舞台は、講座というよりもまさにステージ。クイーンに人生を捧げたエトウの深い解釈、中野くんの笑いに満ちたクイーン噺も忘れがたい印象を残した。

それにしても生楽器を次々と演奏し、外見に似合わぬ美声を響かせるエトウのパフォーマーとしての能力の高さはどうだ。QUEENESSをクイーン完コピバンドと侮ることなかれ。同バンドは近年スケジュールがギッチリ詰まって大忙しとのことだが、決して『ボヘミアン・ラプソディ』のブームに便乗しただけの人気ではないはずだ。クイーンという素材をフル活用した上質なエンターテインメントを楽しませてもらった。

中野くんによるクイーンの解釈も実に愉快で、ここでは執筆することをためらわれるネタから、「犬から猫にペットの王者が移行したことによって、猫型ロッカーのフレディ・マーキュリーは大メジャーシンガーとして再評価された」という珍説? まで飛び出し、場内に爆笑の渦を巻き起こした。元祖インテリロッカーの面目躍如といったところか。

参加者からは「いい音で聴くことで、同じクイーンのアルバムでも新たな音楽的発見が数多くあった」「いままでオーディオの良し悪しについて考えたことがなかったが、こうまで音に違いが出るなら学びたい」との感想が上がった。ロックこそ「いい音」で聴くべきとの気づきをくれたこの講座、続編は6月29日の開催が予定されている。

イベント情報
TOWER ACADEMY presents 音楽・映画連動講座「ボヘミアン・ラプソディ」Part 2

開催日時: 2019年6月29日(土)
1st Session 13:00~15:00 終了予定
2nd Session 17:00~19:00 終了予定

講師: 1st Session:ROLLY / 2nd Session:清水一雄(QUEENESS)
MC 矢口清治 ゲストMC 萩原健太

会場: 音楽の友ホール(東京都新宿区神楽坂6-30)
チケット代: 各Sessionともに3,000円(税込)
申し込み方法: 下記TOWER ACADEMYのホームページの応募フォームへ入力
https://tower.ac/

写真・文
高橋慎一
写真・文
高橋慎一 フィルムメイカー
/フォトグラファー/ライター 

東京工芸大卒。雑誌・書籍・CDジャケット等でフォトグラファーとして活動中。音楽之友社では『ステレオ』誌の撮影を担当、徐々にオーディオへと開眼しつつある。2015年にド...

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