レポート
2026.03.09

山田和樹らが芸術選奨文部科学大臣賞を受賞

ONTOMO編集部
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東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

©Benjamin Ealovega

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芸術各分野において、国内外において優れた業績を挙げた方、または新生面を開いた人物に贈られる芸術選奨文部科学大臣賞、同新人賞の2025年度の受賞者が発表された。音楽部門では、指揮者の山田和樹、新人賞にクァルテット・インテグラが選出された。

部門は、演劇、映画、音楽、舞踊、文学、美術A、美術B、メディア芸術、放送、大衆芸能、芸術振興、評論の12部門。受賞者には賞状と、大臣賞に120万円、新人賞に80万円が賞金として授与される。

音楽関連のおもな贈賞理由

文部科学大臣賞

音楽

遠藤千晶 地歌箏曲演奏家

全曲独奏曲による本演奏会は、選曲と楽器を隅々まで鳴り響かせる優れた演奏によって、箏という楽器の無限の可能性を示した。各作品を丁寧に把握し、その上での端正な演奏によって、作曲された時代も性格も全く異なる作品の魅力を引き出すことに成功している。特に終曲の「手事(てごと)」では、和洋の各要素をバランスよく表現し、そこに込められた立体的な音の構造を際立たせたことで、作曲者の意図に迫るものであった。

山田和樹 指揮者

令和7年の山田和樹氏の活動は、その見識と主張、音楽的内容の充実において刮目すべきものであった。バーミンガムを中心に海外での活動を主軸にしながらも、国内においても氏しかなし得ないプログラミングとその演奏内容の充実を示した。大阪の4つのオーケストラと、盟友である東京混声合唱団と展開したメンデルスゾーンの4回の演奏会の充実はその典型であり、日本フィルハーモニー交響楽団定期を含む11月末まで、その快進撃は続いた。

舞踊

宮川新大 バレエダンサー

宮川新大氏は、所属する東京バレエ団で主要な役柄の多くを踊り、ゆるぎない技術とそこに立脚する気品ある物腰で注目されてきた。令和7年は古典名作「眠れる森の美女」の王子役でさらにその美点に磨きがかかり、またモーリス・ベジャール振付の「ザ・カブキ」では、削ぎ落とした感情の奥に静かな覚悟を宿した新世代のヒーローを造形。「ベジャールの「くるみ割り人形」」でも闊達でコミカルな猫役で新境地を開き、幅広い作品に対応する柔軟な表現力を示した。

森山開次 舞踊家

創造性に富んだ作品で知られるダンサー・振付家。東京2020パラリンピック開会式に関わったスタッフを中心に、新たなメンバーも加わって制作された舞台「TRAIN TRAIN TRAIN」では演出・振付を担当。不思議なSLに乗った詩人の旅を、様々なパフォーマーの声や身体表現に、演奏、映像、テキストも駆使し、視覚だけ、聴覚だけでも楽しめる舞台に仕上げた。多様な表現を統合する演出手腕を発揮するとともに変幻自在なソロも披露。振付、踊りの両面で高いレベルにあることを印象付けた。

大衆芸能

大貫妙子 音楽家

シュガーベイブの「SONGS」がリリースされてから50年。ソロ・アルバム「サンシャワー」「ミニヨン」といった初期ソロ作品が、海外で再評価され、世界的なシティポップ・ブームの立役者の一人である大貫妙子氏は、デビュー50周年を迎えた。令和5年から「ピーターと仲間たち」という発表当時のオリジナル音源に忠実なサウンドや、シークェンサー、シンセサイザーを使用した楽曲を中心としたコンサートもスタートさせ、活発に音楽活動を展開。日本のポップス界を牽引しつづけている。

芸術振興

福井健策 弁護士

福井健策氏は、著作権法を専門とする弁護士として、幅広い文化芸術分野の基盤整備に長年貢献してきた。とりわけ舞台芸術や映像作品の記録保存を可能にする権利処理の体系化を主導し、作品のアーカイブ化を大きく前進させた点は高く評価される。令和7年は特に、「エンタテインメント法実務 第2版」(編著)の出版や現場での知識普及活動を通じ、将来にわたる文化資源の継承と活用に不可欠な基礎を築いた。さらに政策形成や生成AIと著作権をめぐる議論にも尽力し、文化芸術支援の発展に寄与した。

文部科学大臣新人賞

音楽

クァルテット・インテグラ 弦楽四重奏団

西洋音楽の基本形態ともいうべき弦楽四重奏。これに継続的に取り組み目覚ましい成果を上げている若い世代が、近年我が国で多くみられる。中でもクァルテット・インテグラは、アンサンブルの緊密さ、解釈の清新さと大胆さにおいて一頭地を抜いている。そのことを、難度の高いバルトーク、ヤナーチェク、ベルクの作品を合わせた一夜で、まざまざと見せつけた。結成10年を迎えた令和7年は、ベートーヴェン・ツィクルスをも開始し、知的に練られた演奏を聴かせた。日本発の弦楽四重奏団として、今後、必ずや世界の第一線で活躍するであろう。

中井智弥 地歌箏曲演奏家・作曲家

中井智弥氏の第12回リサイタルでは、箏・三絃・二十五絃箏の演奏家および作曲家として、古典を意識しつつ新生面を切り開く多彩な活動の成果が示された。古典曲「秋風の曲」の演奏には確かな技量のなかに瑞々しさがあり、歌舞伎「刀剣乱舞 東鑑雪魔縁」のテーマ曲をはじめ、次々に披露された自作曲の音楽性と演奏にも輝きがあった。ART歌舞伎の音楽や多様なジャンルの演奏家との共演など、多方面に躍進し、観客を魅了する彼の活動は、「時をこえて」というリサイタルの副題に象徴されるように、未来につながる新しい風として高く評価できる。

舞踊

岩井優花 バレエダンサー

令和6年末にプリンシパルへ昇進し、同7年においては古典全幕やガラ公演において八面六臂の活躍を見せた。「白鳥の湖」ではオデット/オディール、「ドン・キホーテ」では快活な町娘キトリと夢幻的な森の女王と、性格の異なる大役をいずれも見事に務め上げた。高度な技術と豊かな音楽性を融合させ、役に命を吹き込む表現力は、ドラマティックな熊川版バレエの表現者として大きな成果を挙げ、今後も更なる飛躍が期待される。

3月17日、都内で贈呈式・祝賀会が行なわれる。

音楽部門の選考審査員
大田美佐子
國土潤一
白石美雪
千葉優子
塚原康子
野川美穂子
舩木篤也

受賞者一覧

演劇

大臣賞:齋藤雅文(劇作家)
大臣賞:味方 玄(能楽師)
新人賞:尾上 右近(歌舞伎俳優)
新人賞:望海 風斗(俳優)

映画

大臣賞:吉田大八(映画監督)
大臣賞:李 相日(映画監督)
新人賞:石川 慶(映画監督)
新人賞:広瀬すず(俳優

音楽

大臣賞:遠藤千晶(地歌箏曲演奏家)
大臣賞:山田和樹(指揮者)
新人賞:クァルテット・インテグラ(弦楽四重奏団/三澤響果、菊野凜太郎、山本一輝、パク・イェウン)
新人賞:中井智弥(地歌箏曲演奏家・作曲家)

舞踊

大臣賞:宮川新大(バレエダンサー)
大臣賞:森山開次(舞踊家)
新人賞:岩井優花(バレエダンサー)
新人賞:花柳壽輔(日本舞踊家・振付家)

文学

大臣賞:いしい しんじ(小説家)
大臣賞:堀江敏幸(小説家)
新人賞:朝比奈 秋(小説家)
新人賞:大塚 凱(俳人)

美術A

大臣賞:安藤榮作(彫刻家)
大臣賞:岡﨑乾二郎(造形作家・批評家)
新人賞:青木千絵(漆彫刻家)
新人賞:玉山拓郎(アーティスト・美術家)

美術B

大臣賞:深澤直人(プロダクトデザイナー)
新人賞:evalaエバラ(音楽家・サウンドアーティスト)
新人賞:永山祐子(建築家)

メディア芸術

大臣賞:鶴巻和哉(監督)
大臣賞:槇村さとる(漫画家)
新人賞:龍 幸伸(漫画家)
新人賞:花江夏樹(声優)

放送

大臣賞:柴田岳志(演出家)
大臣賞:四元良隆(ディレクター・プロデューサー)
新人賞:新井順子(プロデューサー)
新人賞:バカリズム(脚本家・お笑い芸人)

大衆芸能

大臣賞:大貫妙子(音楽家)
大臣賞:清水ミチコ(タレント)
新人賞:翁家和助(太神楽曲芸師)
新人賞:玉川太福(浪曲師)

芸術振興

大臣賞:小田井真美(さっぽろ天神山テンジンヤマアートスタジオAIRディレクター)
大臣賞:福井健策(弁護士)
新人賞:牧原依里(映画作家・演出家)
新人賞:山重徹夫(ビジュアル・アートディレクター)

評論

大臣賞:大出 敦(慶應義塾大学教授)
大臣賞:松隈 洋(建築史家・神奈川大学教授)
新人賞:ザヘラ・モハッラミプール(国際日本文化研究センター特任助教)

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