レポート
2020.07.28
新国立劇場の感染対策と、世界初演・新作バレエ公演レポート

森山開次×新国立劇場バレエ団『竜宮』で、5ヶ月ぶりに共有する「時」をかみしめる

新国立劇場が5ヶ月ぶりの公演再開! 子どもも大人も楽しめる浦島太郎を題材にした新作バレエ『竜宮りゅうぐう ~亀の姫と季(とき)の庭~』のゲネプロを、劇場が実施する新型コロナウイルス感染症対策の様子とともに岩崎由美さんがレポートしてくれました。

取材・文
岩崎由美
取材・文
岩崎由美 ジャーナリスト、フリーアナウンサー

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員 岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、キャスター、レポーターとしてテレビ、ラ...

撮影:鹿摩隆司
写真提供:新国立劇場

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感染対策を施して、新国立劇場が5ヶ月ぶりの始動

5か月ぶりに新国立劇場バレエ団が動き始めました。2020年2月の『マノン』から公演が中止され、はや5ヵ月。新国立劇場バレエ団が7月23日(金)、世界初演の新作バレエ『竜宮りゅうぐう ~亀の姫と季(とき)の庭~』でスタートしました。

政府や東京都の方針、(公社)全国公立文化施設協会による新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドラインを踏まえて、感染予防、拡散防止対策を実施しての開幕です。

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まず来場者は、会場に入る前にWebサイトに掲載されている「お客様へのお願い」と同様の文面で、体調のチェックや検温結果などを確認し、来場者カードへ名前、電話番号、席番号を記入して提出。これで、何かあったときに、すぐに連絡がつくようにしている。開場時間は、入り口が密集しないよう、今までより長い45分前になっている。
入り口前に赤外線サーモグラフィで検温があり、係の人が来場者の手にアルコールを吹きかける。自分でチケットをもぎり、チラシをとるため、人の手から手渡しされることはない。劇場内はマスクを着用し、1席空けて座るよう指定される。
ホワイエでは、今までは始まる前や休憩時間にコーヒーやワインを飲んだり、当日の演目に合わせてつくられた特別なスイーツを食べることができたが、今回は熱中症対策のための水だけの販売となった。テーブルははずされ、椅子は横並びで間隔をあけ、会話は控えるようにと、注意が促されている。

開場時や休憩時に外気を入れて換気を強化するので、体温調節ができるように脱ぎ着ができる服装のほうが良いだろう。
感動したときは「ブラボー」という声援ではなく、大きな拍手で讃え、退場するときは、混雑しないように座席ブロックごとに案内される。また、出演者へのプレゼントや花束を預けることや、出演者の出待ち、入り待ち、クロークに荷物を預けることはできない。

観客だけではなく、出演者やスタッフからの感染がないように、彼らはまず自宅で検温して申告し、体調に変化がないことがわかってから会場に入ります。稽古もマスク着用で、大勢ではなく小さなグループ単位で行なったそう。これから本格的なリハーサルを始めるというタイミングでの緊急事態宣言。ステイホーム中、身体や気持ちを維持するのは、どれほど大変だったでしょうか。

「浦島太郎」を題材に、テーマは「季(とき)」

久しぶりの生のバレエからは、舞台に立てること、ひとつのものをつくりあげる喜びなど、凝縮されたエネルギーが伝わってきました。

『竜宮りゅうぐう ~亀の姫と季(とき)の庭~』は、ダンサー/振付家の森山開次、初めてのバレエの演出作品です。もともとコンテンポラリーをメインにしている方が、演出、振付のみならず美術、衣装も手掛け、どんなふうにバレエをつくりあげるのか期待が高まります。

もとになっているのは、御伽草子の「浦島太郎」。浦島太郎がいじめられていた亀を助け、その亀に誘われて竜宮城に行くと、夢のような世界が広がっているという物語。この竜宮城には、一度に春夏秋冬を堪能できる「季(とき)」の部屋があり、長い時間入ってはいけないその部屋に入ったとたん、故郷への思いが募ります。玉手箱を手に太郎が帰った故郷は700年後。あまりの変化になすすべもありません。玉手箱を開けると、封印されていた時が流れ出し翁に変わり、さらに鶴となって大空高く飛んでいくのでした。

森山開次の溢れる才能を注ぎ込んだ舞台

2019年秋には、森山がつくりこんだ台本が手渡されワークショップを始めたということで、細かい指示が書き込まれたその本に沿って「音楽、衣裳・美術制作、技術、映像、照明、音響、劇場技術スタッフ、バレエ団のスタッフ・ダンサーたちなど、意識の高いプロフェッショナルたちが、開次さんのお人柄もあって、力を結集してつくりあげていきました」と、新国立劇場制作部舞踊・佐藤弥生子プロデユーサーが話してくれました。

登場するキャラクターどれもが実に楽しく、可愛らしく、美しい! おもてなし担当のフグ、タンゴを踊るイカ、マンボウ、タイの女将、エイ、タツノオトシゴ、タコなどたくさんの海の生き物が、それぞれのテーマ音楽で登場し踊ります。遊び心にあふれていて、思わず観客の笑顔がこぼれます。
撮影:鹿摩隆司

太郎の登場のシーンでは「むかし むかし 浦島は 助けた亀に 連れられて 竜宮城へ 来て見れば 絵にもかけない 美しさ」のメロディが聴こえてきます。ボカロ風の曲があったり、タンゴ風だったり……和楽器も使った生演奏をスタジオ録音して、ミックスしたそうです。海の中の場面では音が反響し、まるで本当に水の中にいるようです。

歌舞伎のような型を決める場面や、クラシック・バレエにはない動きがありますが、それが見事に調和しています。森山がイメージを伝えると「バレエだったらこういう動きがある」とダンサーからアイデアが出され、ともに作り上げていったと語っていました。和のようでも、洋のようでもあり、兎と亀の話や、羽衣伝説など日本のお伽噺が埋め込まれ、翁になる場面では能装束に面がつけられ、さながら能舞台が登場したようでした。

美術も、床も壁も背景も、まるで波打ち際や海の中にいるがごとく、まさに森山開次の才能があふれていました。

森山が「竜宮は『時』の物語です」と語るように、狂言回しとして登場するのは、「時」の案内人。

「現代を生きる私たちも、今という『時』をどのように生きるべきか、改めて見つめることができるかもしれません。ダンスや音楽は時の芸術でもあります」と語っています。

当たり前だったことが当たり前でなくなった今、「時」を共有することがどれほど感動や喜びを倍増させてくれるか。そのありがたさをかみしめられる舞台でした。

撮影:鹿摩隆司
公演情報
新国立劇場 こどものためのバレエ劇場 2020 世界初演・新作バレエ公演『竜宮 りゅうぐう~亀の姫と季(とき)の庭~』

【公演中止】

日時: 2020年7月24日(金・祝)13:00

25日(土)13:00/19:00

26日(日)13:00/19:00

29日(水)13:00

30日(木)13:00

31日(金)13:00

(上演時間約2時間 全日程、開場は開演の45分前)

 

会場: 新国立劇場 オペラパレス

 

料金: 子ども(4歳〜小学生)2,200円
大人(中学生以上) 3,300円

 

音楽: 松本淳一
演出・振付・美術・衣裳デザイン: 森山開次
映像: ムーチョ村松
照明: 櫛田晃代
振付補佐: 貝川鐵夫、湯川麻美子
取材・文
岩崎由美
取材・文
岩崎由美 ジャーナリスト、フリーアナウンサー

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員 岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、キャスター、レポーターとしてテレビ、ラ...

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