レポート
2026.06.11
10月18日東京オペラシティコンサートホールで記念リサイタル

金子三勇士「21世紀のフランツ・リストになりたい」~デビュー15周年の壮大な決意 

音楽の友 編集部
音楽の友 編集部 月刊誌

1941年12月創刊。音楽之友社の看板雑誌「音楽の友」を毎月刊行しています。“音楽の深層を知り、音楽家の本音を聞く”がモットー。今月号のコンテンツはこちらバックナンバ...

ハンガリー大使館における記者懇談会に登壇した金子三勇士 ©友澤綾乃

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15周年で掲げる目標と、次の15年に向けた3つの活動ポイント

6月10日、都内のハンガリー大使館にて、金子三勇士の日本デビュー15周年記念の記者懇親会が開かれた。日本デビュー以来、国内外で舞台に立った回数は1,300回以上になるという金子。求められればどこへでも駆けつけて生演奏を届けるという活動を続け、多い年には年間160回ほどステージに立つこともあったという。

日本デビューの際には、自身の音楽的アイデンティティであり、もっとも尊敬する作曲家であるフランツ・リストの作品を世界で演奏するピアニストの「5本の指に入りたい」、という目標を掲げ、それがデビュー5周年では「3本の指に入りたい」に代わった。コロナ禍で迎えた10周年では、リストを演奏するだけでなく彼が残してくれたさまざまな教えを現代の社会で生かすためには、リストになりきるくらいのつもりで臨まなければという覚悟が生まれた。そして今の大切な目標は、自身へ最大のプレッシャーをかけることになる「21世紀のフランツ・リストになりたい」というもの。

15周年を機に、次の15年に向けて新たなステップへ向かうため、3つの活動ポイントも設定している。それは、1)コンサートピアニストとしての活動、2)教育的活動、3)社会の中での生き方=文化活動からなる。

リストもピアニスト・作曲家としてだけでなく、教育面や文化面でも偉大な足跡をのこした。もし今リストが生きていたら、このテクノロジーが席巻する社会でどのような生き方をしているだろう。人間だからこそできる表現とは?と自身に問い続けている。

記念リサイタルでは、自身のアイデンティティであるリストとベートーヴェンを

ハンガリー国立リスト音楽院大学に11歳で飛び級入学し、16歳まで、リストから5代目の直系の弟子にあたる教授に師事した金子。リストの師はチェルニーであり、チェルニーの師はベートーヴェンであることから、リストとベートーヴェンは金子のアイデンティティであり、10月18日の記念リサイタルではこの二人の作品を取り上げる。

金子が学んでいた時代に比べ、今のリスト音楽院では世代交代が進み、リストの教えを継いできた教授の人数や、国際的な活動をするハンガリー人ピアニストの数も減ってきているという。リストの教えを広めていく人が減ってきていることに危機感をもつ金子は、リスト音楽院で学んだベートーヴェン、リストの解釈を演奏で届けたいと意気込む。

たとえば、とピアノの前に座り、リサイタル曲目の「《月光》ソナタ」冒頭を演奏してみせた。作曲家が付けたわけではない《月光》というタイトルを一度忘れて、楽譜に込められたメッセージを読み解いていくと、テンポがそれほど遅くなく、ペダルも踏みっぱなしにするという、耳慣れた演奏とはだいぶ違う音楽が立ち現れる。でもこれは、すべて楽譜に書かれていることなのだ。

「《月光》ソナタ」冒頭を演奏する金子三勇士 ©友澤綾乃

「日本=ハンガリー未来プロジェクト」がスタート

教育・文化活動としては、「日本=ハンガリー未来プロジェクト」が長野県千曲市でスタート。35年以上にわたり、ハンガリーとの交流が続いてきたこの地で8月に選考会を行ない、選ばれた10人の子供たちが11月末にハンガリーに派遣され「子どものためのバルトーク国際ピアノコンクール」に参加する。このコンクールの大きな特徴は、演奏に対して順位をつけないこと。渡航費や滞在費はすべてプロジェクト負担で、家庭環境に関わらず才能ある子どもたちに、コンクールのみならず民族舞踊や現地の子どもたちとの交流など、さまざまな体験の機会を提供する。

コンクールの審査員席に座るようになって初めて、点数で決められないのが音楽だということがよくわかったという金子。技術面の審査はもしかしたらAIにもできるようになるかもしれない。人間が演奏することの大切さは芸術面にあり、それが人の心に響く音楽体験につながると信じている。その部分を、もしリストが生きていたらきっと究めていただろうし、自分自身も究めていきたいと熱を込めた。

記念リサイタルで演奏するリスト「ロ短調ソナタ」は、「人間の一生、人類の歴史を描いているような壮大な作品。何かが生まれて人生を経て、最後に魂は天国に向かうのか、地獄に向かうのかがわからない不思議な世界観があります。でも最近はなんとなく、リストは私たちに天国のような、居心地のよい世界を最後に味わわせたかったのかなと感じるようになってきました。その最終的な答えは、10月18日のリサイタルで出るのかなと思います」(金子)。

左から駐日ハンガリー国大使のオルネル=バーリン・アンナ氏、金子三勇士、ジャパン・アーツ代表取締役社長の二瓶純一氏。 金子は日本とハンガリー両方のルーツをもつことから二国間の文化交流にも熱心に取り組んでおり、駐日ハンガリー国大使は会の冒頭で、「金子氏の活動は二国間の対話に不可欠なものとなっており、その15年にわたるキャリアは、芸術に国境はなく、音楽こそが我々のもっとも強力な外交手段であることを証明している」と述べた ©友澤綾乃
公演情報
金子三勇士 日本デビュー15周年記念
日時:2026年10月18日(日) 16:00開演
会場:東京オペラシティ コンサートホール 
出演:金子三勇士 

曲目

ベートーヴェン:
ピアノ・ソナタ 《月光》
ピアノ・ソナタ 《悲愴》
ピアノ・ソナタ 《熱情》

リスト:

ピアノ・ソナタ ロ短調

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