インタビュー
2026.07.22
東京文化会館シアター・デビュー・プログラムで、子どもも大人もクラシック音楽&観劇デビューを!

新演出で新たな魅力が生まれる、音楽劇『シミグダリ氏~鉄靴の姫と麦粉の王子~』

現在休館中の東京文化会館の「シアター・デビュー・プログラム 音楽劇『シミグダリ氏~鉄靴の姫と麦粉の王子~』《新演出》」が、会場を渋谷区文化総合センター大和田 さくらホールに移し、2026年8月7日、8日に上演されます。
クラシック音楽と他ジャンルがコラボレーションしたオリジナルの舞台作品で、ますます楽しみな新演出での再演に向けて、脚本・演出を務める久恒秀典さん、音楽監督・作編曲とピアノ演奏を担当する新垣 隆さんにお話をうかがいました。

取材・文
長井進之介
取材・文
長井進之介 ピアニスト/音楽ライター

国立音楽大学演奏学科鍵盤楽器専修(ピアノ)卒業、同大学大学院修士課程器楽専攻(伴奏)修了を経て、同大学院博士後期課程音楽学領域単位取得。在学中、カールスルーエ音楽大学...

舞台写真は、2023年8月6日「シアター・デビュー・プログラム 音楽劇『シミグダリ氏または麦粉の殿』《新制作》」から。
©ヒダキトモコ

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おはなし

昔々のギリシャのお話

あまたの求婚者に目もくれず 自分で恋人を作ったイリヤ姫

粗びきの麦粉と砂糖とアーモンドをこねてできた麦粉の殿 その名もシミグダリ氏!

美しく優しい殿のうわさは世界に広まり 遠い国の女王の耳にも入り

シミグダリ氏は女王の国へさらわれてしまいました

でもイリヤ姫はあきらめない 鉄の靴を履いて 恋人を探す旅に出ました

月の母子や太陽の母子にたずねても シミグダリ氏のゆくえはわからない

星のお母さんにたずねたら 星の子どもたちが教えてくれた!

たどり着いた遠い遠い黄金の国 長旅でボロボロのイリヤ姫

はたして無事にシミグダリ氏と再会し いっしょに故郷へ帰れるでしょうか!?

イレーヌ・ナウマン=マブロゴルダートが収集したギリシャの昔話より

(出典 “Es War Einmal: Neugriechische Volksmärchen”)

新演出で生まれる新たなインスピレーション

——3年ぶりの上演となりますが、タイトルが『シミグダリ氏または麦粉の殿』から変更されています。どのような意図が込められているのでしょうか。

久恒 原作のタイトルが『シミグダリ氏または麦粉の殿』で、初演時にはこちらを踏襲したのですが、ご覧いただくみなさまに、もっと物語の世界に入り込んでいただけるようなものにしたいと思いました。

そこで、主人公イリヤ姫が鉄靴を履いて恋人のシミグダリ氏を探しに行くという旅路、そして彼女の人物像への理解が深まるタイトルに変更しました。

久恒秀典(脚本・演出)
国際基督教大学卒、東宝演劇部専属契約の後イタリア政府奨学生としてボローニャ大学、ヴェネツィア大学、マルチェッロ音楽院、州立ゴルドーニ劇場演劇学校に学ぶ。文化庁芸術家在外研修員。絨毯座『偽のアルレッキーノ』(佐治敬三賞受賞)にてオペラ演出デビュー。最近の作品として東京文化会館『泣いた赤おに』、東京藝術大学『コジ・ファン・トゥッテ』、調布市民オペラ『カルメン』、新国立劇場オペラ研修所『悩める劇場支配人』『領事』がある。東京藝術大学、東京音楽大学、新国立劇場オペラ研修所講師。

——「新演出」ということですが、具体的にはどのような点が変わってくるのでしょうか。

久恒 脚本は基本的に初演のままですが、会場となる空間が変わるので、舞台セットやキャストが変わります。

空間と人の新たな組み合わせから、また新たなインスピレーションが生まれるはずです。同じ題材であっても、新たな出会いで作品は大きく生まれ変わっていきます。

今回、イリヤ姫はミュージカルの分野でも活躍中の田代 明さん、シミグダリ氏は新進気鋭のオペラ歌手である大久保惇史さんにお願いしました。金の女王は前回から引き続き、元宝塚歌劇団娘役トップスターの月影 瞳さんです。さまざまな分野で活躍している3人が、新たに出会い相高め合うことで、作品の新たな魅力を引き出してくれると期待しています。

田代 明(俳優)
大久保惇史(バリトン)
月影 瞳(俳優)

3人の音楽が響き合い、溶け合う芳醇な世界

——新垣さんは音楽において、ご自身の作品とともにベートーヴェン、ラモー、ハイドンの楽曲も使われています。

新垣 初演の会場であった東京文化会館は、クラシック音楽にとって大事な拠点です。そこで演奏される音楽劇として、クラシック音楽を取り入れることは自然な流れでした。選ばせていただいた3人の作曲家の作品は、物語の世界観ともよく響き合うと感じています。

私のオリジナル曲は、クラシック音楽の300年ほどの歴史の中にある“音の世界”を、この作品の中に仕込んでいくようなイメージで書きました。同時に、登場人物の心情や場面の動き、舞台の流れに寄り添うことを意識しています。

——音楽は全編ピアノ・トリオの編成で演奏されます。奏者は前回と同じく新垣さん、岸本萌乃加さん(ヴァイオリン)、加藤文枝さん(チェロ)ですね。

新垣 ピアノ・トリオという編成は、みなさんと相談する中で決まりました。室内楽としての親密さがあり、劇場の規模にも合う形でもありますね。

そして岸本さん、加藤さんは本当にすばらしい奏者です。室内楽の喜びというのは、同じメンバーで音楽を作り上げていくことにあります。今回はさらに熟成した音楽をみなさまにお届けできると思います。

久恒 オペラや演劇、ミュージカルなどさまざまな要素が入った作品で、そのまま混ぜてしまうと水と油のようにうまく溶け合わないのですが、新垣さんの音楽がおいしい料理のソースのように見事に乳化させ、ひとつの世界にまとめてくださっています。

新垣 隆(音楽監督・作編曲・ピアノ)
桐朋学園大学音楽学部作曲科卒業。作曲を南聡、中川俊郎、三善晃、ピアノを森安耀子の各氏に師事。2015年「ピアノ協奏曲新生」、2016年「交響曲連祷 Litany」を発表。コンサートのための作品、バレエ、映画、ゲームなど様々なジャンルの作曲も手がける。川谷絵音プロデュースのバンド「ジェニーハイ」にキーボードとして参加。桐朋学園大学講師、富山桐朋学園大学院大学特任教授、大阪音楽大学客員教授。日本現代音楽協会、日本演奏連盟会員。
岸本萌乃加(ヴァイオリン)
©ayaneshindo
加藤文枝(チェロ)

——「シアター・デビュー・プログラム」は小学生、中・高校生が初めて劇場を体験する企画ですが、作品を通して子どもたちに伝えたいことはありますか?

久恒 まずは、舞台で人が呼吸し、声を出し、動き、歌うという“ライブの喜び”を感じてほしいです。

また、確かに子ども向けに作ってはいるのですが、内容としては大人の方も楽しめるものです。大人の方にもぜひご覧いただき、私たちが生きる世界の美しさを、奇跡のように存在している人間の力強い姿を、舞台を通して再発見してもらえたら、と願っています。

新垣 音楽も“子ども向け”ということを意識して書いたものではありません。音楽の喜びがそのまま伝わるように、わかりやすさや親しみやすさは自然と意識しています。

クラシックを初めて聴くという方にも、音楽そのものの楽しさが届けばうれしいです。

公演情報
東京文化会館シアター・デビュー・プログラム 音楽劇『シミグダリ氏~鉄靴の姫と麦粉の王子~』《新演出》

日時:

2026年8月7日(金)19:00開演、

8月8日(土)14:00開演

会場:渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール

音楽監督・作編曲:新垣 隆

脚本・演出:久恒秀典

出演:

イリヤ姫:田代 明

シミグダリ氏:大久保惇史

金の女王:月影 瞳

ピアノ:新垣 隆

ヴァイオリン:岸本萌乃加 *第9回東京音楽コンクール弦楽部門第1位

チェロ:加藤文枝 *第7・8回弦楽部門第2位

曲目:

ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第1番 変ホ長調 Op.1-1

ラモー:クラヴサン曲集第2組曲より ロンドー形式のミュゼット、タンブラン

ハイドン:ピアノ三重奏曲 ト長調 Hob.XV:25「ジプシー風」より 第1楽章

新垣 隆:

プロローグ/麦粉の歌/ときめきの歌/嘆きの歌/旅人の歌 月/旅人の歌 太陽/旅人の歌 星/旅人の歌 イリヤ/二重唱と窓辺の歌/ガチョウ小屋の夢/アーモンドの歌/二日目の夜/眠り薬の歌その1/三日目の夜/眠り薬の歌その2/パスティシュ/エピローグ

料金:

S席3,300円 A席2,200円

小中学生(全席共通)1,100円

親子セット券(全席共通)<親1名、小学生1名>2,200円

詳しくはこちら

取材・文
長井進之介
取材・文
長井進之介 ピアニスト/音楽ライター

国立音楽大学演奏学科鍵盤楽器専修(ピアノ)卒業、同大学大学院修士課程器楽専攻(伴奏)修了を経て、同大学院博士後期課程音楽学領域単位取得。在学中、カールスルーエ音楽大学...

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