家族のために書かれた名曲〜バッハから兄へ、ドビュッシーから娘へ……家族愛を聴く
2020.07.22
楽聖の故郷で作られるベートーヴェンビール
京都産業大学外国語学部助教。専門は18世紀の文学と美学。「近代ドイツにおける芸術鑑賞の誕生」をテーマに研究し、ドイツ・カッセル大学で博士号(哲学)を取得。ドイツ音楽と...
ドイツではスーパーでも見かけるくらい馴染みのある、ハッカー・プショル社のヴァイスビア(白ビール)。クローブのような香り、シルクのような口当たりが特徴である。約1ユーロ(約120円)で買うことができるお手軽さ。
このビール、実は作曲家リヒャルト・シュトラウスと深い関係がある。
瓶には、ゲオルグ・プショルという人物が描かれている。なんと、彼はリヒャルト・シュトラウスの叔父にあたる。巨大なビール醸造所を保有し、バイエルン随一の資産家だったらしい。
プショル家は邸宅に音楽家を招き、しばしばサロンコンサートを催していた。リヒャルト・シュトラウスの父は、ホルン奏者として参加し、やがてプショル家の令嬢と結婚した。つまり、瓶に描かれているのは、リヒャルト・シュトラウスの母の兄というわけだ。
結婚後シュトラウス一家は、プショル家の邸宅に移り住んだ。リヒャルト・シュトラウスも親族と室内楽を楽しんだようで、叔父に「ピアノ三重奏曲第2番 」を、叔母に「ピアノ・ソナタ第3番 変ロ長調 」を、従兄弟に「兵士の歌(Soldatenlied )」を献呈している。
これらの曲に耳を傾け、白ビールを飲みながら、大作曲家の日常に想いを馳せてみたい。