読みもの
2023.10.06
ONTOMO MOOK「ヨハネス・ブラームス 生涯、作品とその真髄」より

ブラームスを知るための25のキーワード〜その1:生誕と生家

毎週金曜更新! 25のキーワードからブラームスについて深く知る連載がスタート!
ONTOMO MOOK『ヨハネス・ブラームス 生涯、作品とその真髄』から、平野昭、樋口隆一両氏による「ブラームスミニ事典」をお届けします。どんなキーワードが出てくるのか、お楽しみに。

平野昭
平野昭 音楽学者

1949年、横浜生まれ。武蔵野音楽大学大学院音楽学専攻終了。元慶應義塾大学文学部教授、静岡文化芸術大学名誉教授、沖縄県立芸術大学客員教授、桐朋学園大学特任教授。古典派...

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ブラームスは北方人的気質?

ヨハネス・ブラームスは1833年5月7日にハンブルクに生まれた。よく北国人ブラームスと言われるが、ハンブルクはエルべ河が北海に流れ込む 広大な河幅になる起点に位置している。ハノーファーと、バルト海に臨む軍港として有名であったキールとを結ぶほぼ東経度の経線上にあり、東北へ約50キロ行けばリューベック、真北 へ約80キロでもキールというような北方にあるわけだ。

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ちなみにハンブルクの北緯53度30分というのは、樺太の最北端とほぼ同緯度ぐらいにあたるだろう。緯度の高さがそのまま気候や気温につながるものではないにしても、随分と北になるわけだ。とはいえ、南欧的気質うんぬんといわれるウィーンや ミュンヘンでさえも北緯48度15分で、 北海道最北端の同度よりはるか北にあるのだから、ドイツ人たちの言う北と南というのは、我々には簡単に理解 できるものではないかも知れない。なんだか地理の勉強のようになってしまったが、ブラームスを語る場合の北方人的気質という規定句は、よほど注意して使われねばならないということだ。

彼の生家は、商業都市ハンブルクで もエルベ河に臨む埠頭に近い、貧民窟のような木造家屋が立ち並ぶ下町シュペック通り60番地のアパートの2階に あった。この生家は第二次世界大戦前 までは存続していたそうだが、戦時中に爆撃を受けて破壊されてしまった。 写真で見られるその生家は、木枠組と漆喰で固められた木造6階建ての、いかにも貧乏長屋(?)といったもので ある。太陽光線もあまり入らず、空気も陰湿で悪かったということだから、 恐らく健康には良くない住環境であっ たのだろう。

1891年に撮影されたブラームスの生家
第1章 演奏家が語るブラームス作品の魅力
第2章 ブラームスの生涯
第3章 ブラームスの演奏法&ディスク

今回紹介した「ブラームスミニ事典」筆者・平野昭と樋口隆一による「1853年の交友にみるブラームスの人間性」、「ブラームスの交友録」、「ブラームスを育んだ作曲家たち」、「ブラームスの書簡集」をはじめ、多岐にわたる内容を収録!
平野昭
平野昭 音楽学者

1949年、横浜生まれ。武蔵野音楽大学大学院音楽学専攻終了。元慶應義塾大学文学部教授、静岡文化芸術大学名誉教授、沖縄県立芸術大学客員教授、桐朋学園大学特任教授。古典派...

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