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2026.03.16
特集「アニバーサリー2026」

チェロの巨匠・カザルス生誕150年! 遠藤真理、伊東裕、北村陽からお祝いメッセージ!

2026年は、20世紀を代表するチェロの巨匠、パブロ(パウ)・カザルスが生まれて150年。カザルスを敬愛する3人のチェリスト、遠藤真理さん、伊東裕さん、北村陽さんからお祝いのメッセージが届きました!

ONTOMO編集部
ONTOMO編集部

東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

パブロ(パウ)・カザルス(1876~1973)

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20世紀でもっとも影響力のある音楽家の一人、パブロ(パウ)・カザルス(1876~1973)はスペインで生まれ、チェリスト、指揮者、作曲家として世界的に活躍しました。

1914年、第一次世界大戦の勃発に伴いニューヨークに移住します。1919年、バルセロナに戻り、パウ・カザルス管弦楽団を設立しますが、スペインで内戦が起こりフランスに亡命。1957年以降はプエルトリコのサン・フアンで暮らし、1973年、96歳でその生涯を閉じました。カザルス本人の遺志で、故郷のエル・ベンデレルに移葬されています。

カザルスを敬愛する3人のチェリスト、遠藤真理さん、伊東裕さん、北村陽さんに、お祝いメッセージとともに、お気に入りの演奏音源を教えていただきました!

遠藤真理

時に支え、時にリードするカザルス・トリオの演奏

© Yusuke Matsuyama
第72回日本音楽コンクール第1位、2006年「プラハの春」国際コンクール第3位(1位なし)、2008年エンリコ・マイナルディ国際コンクール第2位。2009年齋藤秀雄メモリアル基金賞受賞。大阪フィル、読売日響、都響など国内主要オーケストラに招かれ、故ゲルハルト・ボッセ、山田和樹など著名指揮者と、またウィーン室内管、プラハ響らと共演するなど、国内外で高い評価を得る。2017年4月より読売日本交響楽団のソロ・チェロ奏者にも就任。
NHK大河ドラマ「龍馬伝」紀行演奏(第三部)を担当。エイベックス・クラシックスから同曲が収録された「Cello Melodies 龍馬伝紀行Ⅲ」や「ドヴォルザーク:チェロ協奏曲」をはじめ4枚のソロCDと、2019年12月に川久保賜紀(Vn)、三浦友理枝(Pf)と「ショスタコーヴィッチ:ピアノ三重奏曲第1番、第2番」「ピアノ三重奏 坂本龍一曲集」が同時発売され、トリオCDアルバムも3枚リリース。NHK-FMクラシック音楽番組「きらクラ!」(全国放送)のパーソナリティを8年間務めるなどテレビ、ラジオでも幅広く活躍。
オフィシャル・ホームページ http://endomari.com

カザルスへのお祝いメッセージ

カザルス先生

強い志のもと、技術の革新に踏み込んでくださり、本当にありがとうございました。

当時はきっと、保守的な考えの方々も多くいらしたことと思います。それでも信念を貫いてくださったからこそ、数々の素晴らしい演奏が生まれ、私たちは今日も健やかにチェロを弾くことができます。

正直なところ、どの弦楽器よりもチェロは身体への負担が少なく、健康的に演奏できる楽器だと感じています。

150歳のお誕生日、天国でもチェロを弾いていらっしゃいますか。心よりお祝い申し上げます。

私のお気に入りのカザルスの演奏はこの曲!

カザルス・トリオによるメンデルスゾーンとシューマンのピアノ三重奏曲が収められたCDは、再生ボタンを押した瞬間、アナログの世界へと引きずり込まれ、まるで時代をワープしたかのような臨場感に包まれます。

カザルス、コルトー、ティボーの3人の演奏は時に支え、時にリードするように……とにかく変幻自在です。

時代背景もあり、演奏に向かう姿勢は命懸けだったことと思います。戦争を経てもなお再結成しお互いを認め合い、3人揃うと音楽にさらなる広がりを感じます。

Casals, Thibaud and Cortot – Mendelssohn: Trio in D Minor & Schumann: Trio in D Minor (Historical Recordings 1927 and 1928)

伊東 裕

齋藤秀雄先生が「カザルス神社」と呼び、拠り所にしていたカザルスの演奏

©︎ masatoshi yamashiro
奈良県出身。第77回日本音楽コンクールチェロ部門第1位受賞。葵トリオとして、第67回ARDミュンヘン国際音楽コンクールピアノ三重奏部門第1位受賞。
札幌交響楽団、名古屋フィルハーモニー交響楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団、日本センチュリー交響楽団他オーケストラと協演。武生国際音楽祭、北九州国際音楽祭、宮崎国際音楽祭、東京・春・音楽祭、木曽音楽祭等に参加。NHK-FMリサイタル・ノヴァ、クラシック倶楽部等に出演。斎藤建寛、向山佳絵子、山崎伸子、中木健二、E・ブロンツィ、D・モメルツ各氏に師事。東京藝術大学音楽学部を首席で卒業し、同大学院音楽研究科修士課程を修了。ザルツブルク・モーツァルテウム大学、ミュンヘン・音楽演劇大学にて研鑽を積む。紀尾井ホール室内管弦楽団メンバー。東京都交響楽団首席チェロ奏者。

カザルスへのお祝いメッセージ

チェロの神様、パブロ・カザルスの生誕150年、心よりお祝い申し上げます。

私は6歳からチェロを弾いていますが、高校まではマイスキーやロストロポーヴィチ、ケラスらの録音を好んで聴き、カザルスのLPは音質の古さゆえにあまり手に取っていませんでした。転機は大学時代、山崎伸子先生のもとでベートーヴェンの「チェロ・ソナタ第4番 ハ長調」に取り組んだことです。カザルスとゼルキンの録音に触れ、齋藤秀雄先生が「カザルス神社」と呼び、その演奏を拠り所にしていたと伺いました。それ以来、作品に向き合う際まずカザルスを聴くようになりました。

彼の音楽には一音たりとも無意味な音がなく、骨太で揺るぎない確信が宿っています。

私のお気に入りのカザルスの演奏はこの曲!

ソロの主要レパートリーも素晴らしいですが、葵トリオのメンバーとしてピアノ三重奏に取り組む立場から、ぜひ挙げたいのがパブロ・カザルス、ジャック・ティボー、アルフレッド・コルトーによるシューベルト「ピアノ三重奏曲第1番 変ロ長調 D898」です。冒頭から瑞々しく気高く、推進力に満ち、第二主題で歌い上げるカザルスの音色は格別です。とりわけ第2楽章冒頭の旋律は胸を締めつけるほどの美しさ。ティボー、コルトーも霊感に満ち、3人の芸術が高い次元で結実した奇跡のような名演です。

Thibaud, Casals & Cortot: Haydn, Beethoven & Schubert

今後のコンサート予定
伊東 裕

2026年6月30日(火)11:30 ランチタイム・コンサート
会場:横浜市青葉区民文化センター(フィリアホール)

2026年7月22日(水)19:00 葵トリオwith東京クヮルテットLegends
会場:横浜市青葉区民文化センター(フィリアホール)

2026年9月3日(日)14:00 東京都交響楽団(ドン・キホーテ)
会場:東京芸術劇場

2026年9月4日(月)19:00 東京都交響楽団(ドン・キホーテ)
会場:サントリーホール

北村 陽

音楽の本質を、時代の先駆者として世界中の人々に伝えたチェリスト

2004年生まれ。2024年エネスク国際コンクール・チェロ部門で日本人初優勝、同年カザルス国際賞第1位、23年ブラームス国際コンクール第1位。英国の弦楽器専門誌『The Strad』にて「卓越した音楽的才能の持ち主」と評される。日本音楽コンクール第1位および増沢賞など5つの賞を受賞。22年ハチャトゥリャン国際コンクール第2位、17年若い音楽家のためのチャイコフスキー国際コンクールで満場一致の優勝。9歳でオーケストラと初共演、11歳でサントリーホールデビュー。 世界的マエストロのマンフレート・ホーネック、セバスティアン・ヴァイグレ、ジョヴァンニ・アントニーニ、小林研一郎、井上道義、高関健、大友直人、藤岡幸夫、山田和樹など、国内外を代表する指揮者および楽団と多数共演。第52回江副記念リクルート財団奨学生。現在、桐朋学園大学ソリスト・ディプロマ・コースで堤剛、ベルリン芸術大学でイェンス=ペーター・マインツに師事。これまでに山崎伸子、室内楽を磯村和英に師事。25年より庄司紗矢香率いる室内楽グループ「新ダヴィッド同盟」の新メンバーとして加入。齋藤秀雄メモリアル基金賞、出光音楽賞、ジャン=ニコラ・フィルメニッヒ賞、ホテルオークラ音楽賞、服部真二音楽賞受賞。使用楽器は上野製薬株式会社より1668年製カッシーニ、弓は住野泰士コレクションよりペルソワを貸与されている。
オフィシャルサイト https://www.yokitamura.com/ja

カザルスへのお祝いメッセージ

生誕150周年、心よりお祝い申し上げます。カザルスの音楽には、崇高な魂が宿っています。音楽の本質を、時代の先駆者としてチェロという楽器でいかようにも表現し、国境を越え、世界中の人々に伝えました。カザルスの、音楽を通して平和と人間の尊厳を訴え続けた勇気と誠実さは、いまを生きる私たちの指針です。カザルスから学びを得て、その偉大なる精神を受け継ぎ、平和への願いを響きに込めて歩み続けていきたいです。

私のお気に入りのカザルスの演奏はこの曲! 

J.S.バッハの無伴奏チェロ組曲です。これは私の原点です。幼い頃、音楽好きの祖父と一緒によく聴いていました。一昨年、パブロ・カザルス国際賞の本選前日、カザルスが生まれ、今も眠るスペイン、アル・バンドレイにあるパウ・カザルス博物館を訪れました。目の前に広がる海の波の音にじっと耳を傾けていた私は、カザルスが奏でるあの深いJ.S.バッハの響きは、この波の音から生まれたのではないかと感じました。彼のオリジナルティ溢れるテンポ感も、この波のようだと思うととても自然で心地よく、心が解き放たれていく思いでした。

Bach: Cello Suites

今後のコンサート予定
北村 陽

ハーゲン・クァルテット with 北村 陽
2026年7月5日(日) 19:00
会場:ミューザ川崎 シンフォニーホール 
2027年1月にはプラハ交響楽団と共演予定

平和への願い

カザルスは、音楽家として、平和を願う一人の人間として、音楽を平和・正義・自由の理想に捧げました。1917年、ソ連での演奏、1933年、ヒトラー政権のドイツでの演奏の依頼も断りました。

亡命した後も、カザルスは祖国で起きていたスペイン内戦による数千人にのぼる難民を支援しました。その後、第二次世界大戦下では被害者支援のためにチェロを奏でました。1946年、フランコ政権を容認していた連合国での演奏を拒み、長く深い沈黙を貫きます。冷戦と核兵器の脅威という時代に、生涯を通じて平和と民主主義のために闘い続けたのでした。

カザルスは3回にわたって国連本部に招かれ、スピーチと「鳥の歌」の演奏は、世界平和を願う歴史的な出来事として語り継がれています。

カザルス関連書籍

バッハ《無伴奏チェロ組曲》 カザルス解釈版
トーベル 著/天崎浩二 訳

 

バッハ《無伴奏チェロ組曲》についてパブロ・カザルスの演奏解釈をまとめた。編者トーベルはカザルスのマスタークラスやフェスティバルのアシスタントを長年つとめたチェリストであり、カザルスがこの組曲を、時には1小節ずつ注釈を付け、解説付きで実演するのに接し、事細かに記録した。
前半は組曲全曲の楽譜で、カザルスの解釈によるボウイング、指使い、弓の位置、強弱、フレージングなどについて、詳細に記している。後半は、カザルスの解釈についての解説であり、序論でバロック時代の演奏法や音楽美学、効率のよい奏法やバッハについてカザルスの考えを紹介し、組曲各曲について綿密な楽曲分析に基づいた演奏法を解説する。
生前のカザルスは、演奏解釈はつねに変遷していくという考えから、ついに《無伴奏チェロ組曲》の編纂をしなかった。多様なカザルスの考え方を楽譜と文章を駆使して記述した本書は、すべてのチェリストと《無伴奏チェロ組曲》を愛するすべての人の必携の1冊。

 

 

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