「チェロ・ソナタ第4番 ハ長調」——気心の知れた伯爵夫人への献呈
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
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東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
気心の知れた伯爵夫人への献呈「チェロ・ソナタ第4番 ハ長調」
チェロ・ソナタは古典派時代には主要なジャンルではありませんでしたが、ベートーヴェンはチェロの名手と多く出会っているためか、チェロ・ソナタを5作品残しています。
最後の2曲となる作品102は1815年の7月から8月にかけて作曲されたもので、ピアノの名手アンナ・マリア・
エルデディー伯爵夫人に献呈されている。しかし、この夏の伯爵夫人の邸宅には、 音楽の家庭教師として優れたチェリストのヨーゼフ・ リンケが間借り逗留していたのである。リンケは1808年以来ラズモフスキー邸のレジデント・ カルテットとなっていたシュパンツィヒ四重奏団のチェリストであり、1814年12月、 暮れも押し迫ったころラズモフスキー邸が大火で焼け落ち、四重奏団活動がしばらく休止され、 やがて解散されることになるが、 メンバーはそれぞれ自活の道を歩み始めていたのである。2曲からなる作品102のチェロ・ ソナタ第4番「ハ長調」と第5番「ニ長調」は、気心知れたエルデディー伯爵夫人とリンケのために書かれたのである。
——平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)250ページより
この曲が献呈されたエルデディー伯爵夫人や、チェリストのリンケを思い浮かべながらこの曲を聴いてみるのもいいかもしれません。
「チェロ・ソナタ第4番 ハ長調」
作曲年代:1815年(ベートーヴェン44歳)
出版:1817年
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