バレエと原作で微妙に違う、E.T.A.ホフマンの「くるみ割り人形」ストーリー
大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...
先週に続き、今回もE.T.A.ホフマンの作品のお話です。
クリスマスシーズンの定番バレエ、チャイコフスキーの《くるみ割り人形》。
多くの演出、振り付けがあり、ストーリーも少しずつ違いますが、おおむねはこのようなもの。
クリスマス・イブ、少女クララの家はパーティの最中。クララは、人形遣いのドロッセルマイヤーからくるみ割り人形をプレゼントされるが、弟フリッツがこれを壊してしまう。
その夜、みんなが眠りについたあと、突然、ねずみの王様と兵士たちが攻めこんでくる。勇敢な兵士になったくるみ割り人形とクララは、ともに応戦。
戦いが終わると、くるみ割り人形は人間の王子になって、クララを不思議の国に招く。そこでは、踊り子や花の精が二人を歓迎する。
楽しい宴が終わると、クララは目覚め、眠っていたことに気づくのだった——。
新国立劇場バレエ団《くるみ割り人形》のダイジェスト映像(2018年公開)
このバレエの原作となっているのが、E.T.A.ホフマンの『くるみ割り人形とねずみの王さま』。1816年に発表された童話作品です。
改めて原作を読んでみると、バレエ版では詳しく語られない部分、ストーリーが少し違う部分などがあります(バレエ版の台本は、アレクサンドル・デュマ父子の翻案版がもとになっているため)。
まず、青年が醜いくるみ割り人形にされてしまうことになったくだり。端的に言うと、その根本的な原因は、ある国の王様と親戚の間の、肉の脂身をめぐる“食べ物の恨み”だという……。
夢から覚めたあとのことも、くるみ割り人形から人間に戻った青年が、少女の目の前に現れるところまで、ちゃんと描かれています(そして、いろいろな結末を暗示する形で閉じられている)。
話のはじまりとなる、くるみ割り人形が壊され、それを少女が介抱する場面の描写は、とてもあたたかく、愛らしくて、読んでいるとほっこりした気持ちに。繊細な感性の持ち主だったチャイコフスキーがこの物語を気に入ったことに、改めて納得します。
チャイコフスキー:バレエ音楽《くるみ割り人形》
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