家族のために書かれた名曲〜バッハから兄へ、ドビュッシーから娘へ……家族愛を聴く
2020.12.10
メシアン「トゥランガリーラ交響曲」~発音要注意! サンスクリットの直訳は“馬の遊...
青山学院大学教授。日本リヒャルト・シュトラウス協会常務理事・事務局長。iPhone、iPad、MacBookについては、新機種が出るたびに買い換えないと手の震えが止ま...
「蔭のある女」なら知ってるけどな〜、などと言いそうな世代は、絶対に筆者よりも歳上と想像されます(苦笑)。リヒャルト・シュトラウスの歌劇《影のない女》(1919年、ウィーンにて初演)。
オーストリアの文学者ホフマンスタールが作ったこのおとぎ話の世界において、「影がない」というのは、「子どもを産む能力がない」の寓話的表現として用いられています。天界の皇帝との間に子どもを望む皇后が、「影を得よう」として悪戦苦闘し、ついには人間の夫婦から「影を奪おう」とするのですが……。
皇后のビルドゥングスロマン(成長物語)、あるいは2組の夫婦の諍いと和解を描いた物語として解釈するのがもっとも適切な読み解き方とは思います。ただ、この作品が第一次世界大戦という喪失の時代を経て生まれたという点を考えると、新しい時代における「再生」の希望の物語と解釈することもできると思われます。残念ながら、実際の時代は「破滅」へと進んでしまうのですが。