読みもの
2018.04.09
音楽のミライ Vol.1

音楽体験を劇的に変える、「スマートスピーカー」の可能性と未来

音楽のテクノロジー化は今に始まった話ではない。録音技術の発達がレコードを生み、電子楽器の登場が新しいジャンルを生んだ。今、音楽業界はどう変わろうとしているのか? 様々な切り口から音楽の未来に迫る。第1回は、音楽史上の大革命ともいうべき「スマートスピーカー」について取り上げる。

ナビゲーター
ジェイ・コウガミ
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ジェイ・コウガミ デジタル音楽ジャーナリスト/「All Digital Music」編集長

「世界のデジタル音楽」をテーマに、海外の音楽やエンターテイメント業界のビジネスニュース、最新トレンドに特化した取材・執筆・リサーチ活動を行う音楽ビジネスメディア「Al...

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いまだに自宅で、パソコンに保存した音源を再生しているだろうか? スマートフォンに取り込んだ曲を流して聴いているだろうか?これらの質問に「はい」と答える人たちの中に音楽好きな方がいれば、自宅にスピーカーを置く風景を考えたことは一度ではないはずだ。 私自身も音楽を頻繁に聴くが、ここ数年で思わず「お!」と声が出るほど、新しいスピーカーに衝撃を受けたことがあった。

いま、子どもから大人まで幅広い層がパソコンやスマートフォンの操作に頼らない新しいアプローチで音楽を楽しめる「スマートスピーカー」が脚光を浴びている。

「スピーカー」と聞くと「設定が面倒」「スマホのスピーカーで十分」と思う人も多いはずだ。だが近年は高機能化と多機能化が進み、音楽再生のクオリティアップやこれまでできなかった新しい使い方が次々と提案されている。スピーカーはオーディオマニアの楽しみ…という見方は過去のものになりつつあるのだ。

そして2017年に登場したスマートスピーカーは、自宅での音楽体験や情報消費体験をさらに快適、気軽に楽しむための新しいスピーカー像を描き出す。

 

スマートスピーカーは、通常のスピーカー2個セットの設定と異なり、単体で音を360度に響かせる。そしてその操作には、パソコンやスマートフォンのアプリの連携のみならず、リモコンすらも必要としない。代わりに音声がスピーカーの操作を行い、欲しい情報を伝えることで楽曲を再生したり、検索できる。スピーカーはWi-Fiで常時インターネットに接続されており、搭載された人工知能(AI)が、情報や音楽などを自動で探してくれるので、アプリやリモコンの操作で右往左往する必要がなくなるのだ。

すでにテレビCMで見た人も多いはずだ。「OK Google」や「Alexa」と話しかけると答えてくれる「Google Home」や「Amazon Echo」といった代表的なスマートスピーカーを自宅で使う様子が度々動画でオンエアされている。

 

あなたに合うスマートスピーカーは? メーカー別紹介

スマートスピーカーは音楽再生だけでなく、検索や天気予報、ラジオの再生、家電の操作など、多くの機能が音声で実現可能だが、ここでは自宅で音楽再生を楽しみたい人向けに代表的な製品を紹介したい。

 

まず、グーグルが提供するスマートスピーカーは、音声AI「Google Assistant」を搭載したスタンダードタイプの「Google Home」と、小型版「Google Home Mini」の2機種がある。また海外のみの展開だが、高音質音楽再生を目的とした「Google Home Max」もすでに提供が始まっている。

Google Home
Google Home
Google Home Mini
Google Home Mini

アマゾンが提供するのは、音声AI「Amazon Alexa」を搭載する3種類のスマートスピーカー。通常版の「Amazon Echo」に加えて、低価格版「Amazon Echo Dot」、上位版でスマート家電との連携機能を強めた「Amazon Echo Plus」がある。

Amazon Echo
Amazon Echo

加えて、通信アプリ「LINE」が提供するスマートスピーカー「Clova WAVE」と、LINEのキャラクターをモチーフにした「Clova Friends」の2機種は、音声AI「Clova」を搭載している。

Clova WAVE
Clova WAVE
Clova Friends
Clova Friends

音質にこだわりたいへヴィリスナーにオススメ

音楽好きな人であれば、「音質」に注目してスマートスピーカーを選びたい。オンキヨーの「G3」は、「Google Assistant」に対応して、低音を強調する四角柱型の木製筐体、豊かな中低音を再現する新設計のウーファー、熱効率に優れクリアな中高音を実現するスイッチングアンプシステムなど、スマートスピーカー専用の技術を採用。クリアな高音からどっしりした低音までしっかりとした音作りで、音楽を自宅で鳴らすためのスマートスピーカーといえる。

G3 VC-GX30
G3 VC-GX30

「Harman Kardon Allure」もまた高音質にこだわったスマートスピーカーだ。オーディオメーカーとして定評あるHarman Kardonの「Alexa」対応スピーカーは、高さ19.3cm、直径16.6cmの卵型のクリアボディのデザインが目を引く。3つの38mm径フルレンジ・ドライバーと90mm径サブウーファーを搭載して、高音と重低音を強調したサウンドを360度あらゆる方向に鳴らす。

Harman Kardon Allure
Harman Kardon Allure

またソニーが提供する「LF-S50G」も高音質な360度サウンドで、驚異的な音楽体験を与えてくれる。。ソニー独自開発の「対向配置2ウェイスピーカーシステム」を採用。立体的に音を部屋に響かせ、場所に縛られずにどこにいても快適な音楽再生を楽しめる設計を実現した。

LF-S50G
LF-S50G

また執筆時には日本では発売されていないが、アップルが海外で発売を開始した「HomePod」や、前述のグーグルの「Google Home Max」など、高音質を求めて独自のオーディオ技術で作られたスマートスピーカーが登場している。機能性や利便性に加えて「音質」にこだわりを持った製品が増えることは、音楽好きな人や家族の間でスマートスピーカーを利用する機会増加につながると感じている。

 

このように、「高音質」を追及する企業が出始めていることは、今後日本でもこの分野に注目が高まるはずだ。単純に音楽やラジオを楽しむには、Google Home MiniやAmazon Echo、Clova Friendsがいいだろうし、好きな曲をじっくりと良い音質で楽しみたい人や、新しい音楽を迫力あるサウンドで聴いてみた人であれば、オンキヨーやHarman Kardon、ソニーといったブランドのスマートスピーカーをオススメしたい。

 

スマートスピーカーはこれまでの音楽体験を一新する

スマートスピーカーが紹介される際には、その特徴を表すキーワードとして、「人工知能」や「音声AI」「IoT」(モノのインターネット、Internet of Things)といったテクノロジー用語が並びやすい。そのため、スマートスピーカーが遠い存在のように聞こえる人もいるかも知れない。

大事なのは新しいテクノロジーという枠で捉えることではなく、むしろスマートフォンと同じ日常的なデバイスとしてスマートスピーカーを捉え、「音楽再生」という利用方法をさらに日常化させる視点だと思う。

既存のスピーカーとスマートスピーカーとの最大の違いは「音声操作」というテクノロジーであることは言うまでもない。スマートフォンがインターネットへのアクセスを容易にしたように、スマートスピーカーは音楽をぐっと身近にする。

 

音声で音楽が気軽に呼び出せたり、再生できたりすることは、スマートフォンやパソコン、ネットで音楽を検索したり、手元にない音楽を探したりする手間がなくなり、これまで音楽の検索を億劫に感じてきた人も、これまで積極的に音楽を聴いてきた人も、新しい音楽を聴く時間が自宅で増えることへとつながる。こうした自宅で音楽に触れる時間が増えることこそ、スマートスピーカー最大の魅力だ。

スマートスピーカーの家庭での導入が先行して普及しているアメリカ人の利用傾向を見ると、いかに音楽視聴が大きな影響を受けているかが分かる。アメリカのラジオ局ネットワーク「NPR」と調査会社「Edison Research」による調査では、2017年に18歳以上のアメリカ人で6人に一人はスマートスピーカーを購入したという結果が示され、調査回答者の71%はスマートスピーカー購入後に音楽を聴く時間が増えたと答えている。このように自宅での音楽体験をスマートスピーカーによって拡張させているのだ。

 

これまでCDやMP3をコレクションして、何度となく再生してきた人は日本では多いはずだが、スマートスピーカーではさらに膨大な数曲に出会うことができる。邦楽、洋楽、ジャンルを問わずあらゆる音楽の再生を可能にしているのは、Amazon MusicやGoogle Play Music、Spotifyなど、数千万曲のカタログを持つ定額制の音楽サービスだ。スマートスピーカーで音楽を楽しみたいなら、こうしたサービスの利用が必要になってくる。国内ではまだ一般的とは云えないが、スマートスピーカーの利用者や用途が増えれば、利用状況も変わるだろう。

Spotify
Spotify(ONTOMOのプレイリスト) 音声AIのGoogle Assistantに対応

また、スマートスピーカーというデバイスは、簡単に音楽を再生できるのみならず、使い続けることで音楽を聴く楽しさという本質が磨かれる。そう感じたのは、再生した曲の傾向を分析して、使う人の音楽の嗜好に近い曲を自動再生してくれたり、レコメンドしてくれたりと、使うたびに発見と驚きがあると感じた時だった。

これは何も一般的な大人に限った体験ではない。子どもが子ども向けの曲を再生することもできるし、スマホを持たない高齢者も、有名曲や定番のナンバーを簡単に呼び出すことができる。音楽を通じて親子の間で会話が生まれたり、家族同士が繋がる時間が増えるだろう。

スマホの登場によって、音楽の視聴体験は大きく変わった。スマートスピーカーの登場は、その体験をさらに進化させようとしている。新しい曲を自動でレコメンドしてくれるオーディオデバイスの登場は、レコーディング技術の登場にも匹敵するインパクトだ。リスナーとデバイスの関係性が強くなることで、これまで知らなかった音楽との出会いや、好きな音楽と常に寄り添うライフスタイル、家族や友人たちと音楽を一緒に聴く時間が生まれてくる。

 

CDやスマホの影響は計り知れないが、同時に失われた音楽体験も多々ある。スマートスピーカーはこうした体験を呼び戻し、今までの音楽体験よりもはるかに個性豊かな音楽生活を生み出し、数々の名曲に感動する瞬間を数多くの音楽好きに届けてくれるはずだ。

ナビゲーター
ジェイ・コウガミ
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ジェイ・コウガミ デジタル音楽ジャーナリスト/「All Digital Music」編集長

「世界のデジタル音楽」をテーマに、海外の音楽やエンターテイメント業界のビジネスニュース、最新トレンドに特化した取材・執筆・リサーチ活動を行う音楽ビジネスメディア「Al...

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