ソナタ:語源は「楽器を演奏する」。ソナタの歴史と定義は、これでバッチリ!
1993年生まれ、東京都出身。2022年、第1回ひろしま国際指揮者コンクール(旧:次世代指揮者コンクール)優勝。パリ地方音楽院ピアノ科、ミュンヘン国立音楽演劇大学古楽...
今回は、よく耳にする曲名のかなり上位に入る、ソナタについてご紹介します!
ソナタの語源は、イタリア語で楽器を演奏するという意味の動詞suonare(sonare)の過去分詞suonato(sonato)の女性形です。そのまま訳すと、楽器によって演奏された(曲)という意味になるかと思います。
ソナタという言葉が登場したのは、およそ13世紀ごろと言われています。
それからしばらく、ソナタ(当時の綴りはsonnade/suonata)は、もともとの言葉の意味通り、楽器で演奏する音楽全般を指していました。というのも、この頃は、楽器のみで演奏することが今よりも少なかったため、歌が入った曲を指すカンタータの対義語として用いられました。しかし、この時期はまだ、ソナタという言葉は題名として定着していませんでした。
題名としてのソナタは、ジャコモ・ゴルツァニス(1520〜1579?)が1561年に作曲した《リュート曲集第1集》において初めて用いたと言われています。しかし、この作品においても、ソナタという言葉は漠然と、「楽器によって演奏される曲」として用いられました。
さらに時代が進み、時代はバロック(17世紀〜18世紀半ば)。この時期になり、ソナタという言葉が定着すると、2種類のソナタが生まれます。
教会ソナタと室内ソナタです……なかなか聞かないですよね。この2つについて、少し細かくみてみましょう!
教会ソナタ
バロック時代において、教会は音楽を演奏する重要な場でした。キリスト教が生活に密接に関わっていたヨーロッパでは、毎週のようにミサ曲やカンタータが演奏されていました。どちらも歌を伴った曲です。
儀式で演奏されるこの2つは、厳かな雰囲気の曲が多いですが、教会ソナタは、教会でも演奏できる厳かな雰囲気をもった曲として書かれました。教会ソナタは、もちろん教会でも演奏されましたが、教会以外でも演奏されました。単一楽章の場合もありますが、通常は複数の楽章をもちます。
例えば、教会で演奏されるミサ曲は、「キリエ」と呼ばれる曲から始まりますね。このキリエは、神に哀れみを乞う内容なので、若干悲壮感のあるゆったりとした曲です。
次に続く「グローリア」や「クレド」などは、神を讃える曲なので、キリエよりも速いテンポで、明るい雰囲気があります。
教会ソナタもこの様式に少し似せて、最初の楽章は緩いテンポで、次の楽章は急速なテンポで書かれました。4つの楽章の教会ソナタですと、緩-急-緩-急のようになります。トリオソナタと呼ばれる3人で演奏されるソナタも、この教会ソナタの楽章構成で作曲されることが多いです。
コレッリ:ソナタ ニ短調 作品1-11(教会ソナタ)、モーツァルト:教会ソナタ ハ長調 KV336、ハイドン:交響曲第49番「受難」 ヘ短調(教会ソナタ様式の楽章構成で書かれています)
室内ソナタ
教会ソナタは、厳かな雰囲気のあるソナタでしたが、それに対して室内ソナタは、教会で弾くにはあまり向かない世俗的な曲として書かれました。室内ソナタには舞曲がそのまま入っている作品が多いことも特徴です。ざっくりですが、このように分類されます。
コレッリ:ソナタ ニ短調 作品5-7
古典派、そしてソナタの発展
バロック時代の2種類のソナタをご紹介しましたが、古典派の時代(18世紀初期〜19世紀初期)になると、ソナタは大きく変わります!
この頃になると、楽器のみで演奏する曲として、交響曲、協奏曲など、多くの種類がありましたので、差別化する意味で、ソナタは、1人、もしくは1つの楽器に伴奏が付いたものを指すようになりました。
ご紹介したバロックの2つのソナタ同様、複数の楽章をもつ古典期以降のソナタでは、ある程度のテンプレートが作られました。
多くは4つの楽章から成り、速いテンポの第1楽章、ゆったりとした第2楽章、メヌエットかスケルツォが用いられた第3楽章に、もう一度速いテンポの第4楽章。
特に、ソナタの第1楽章で頻繁に用いられた形式(最初のテーマが発展し、最後にもう一度最初のテーマに戻ってくる形式)も、そのままソナタ形式と呼ばれるようになりました。
ベートーヴェンのピアノソナタ第23番《熱情》の第1楽章を例に見てみましょう!
ソナタ形式は提示部、展開部、再現部の3つに分かれます。提示部では、符点のリズムのテーマが登場します。
提示部が終わると、展開部に移ります。展開部では、先程のテーマが何度も繰り返されながら展開されます。
これでもかというほど展開された中間部が終わると、再現部に入り、最初のテーマが戻ってきます。
まったく同じように戻ってくる場合と、少しだけアレンジが加えられて戻ってくる場合とありますが、再現部に戻ると「あ、最初の部分に戻ってきた!」という安堵感があります。
こうして古典派の時期に確立されたソナタの概念は、そのまま時代が進んでもほとんど変わることがありませんでした。
よく耳にするわりには、意外と知られていないソナタの歴史。実はここまで奥深かったのです!
ソナタを聴いてみよう
1. バッハ:チェンバロとヴァイオリンのためのソナタ ト長調 BWV1019〜第1楽章
2. モーツァルト:2台のピアノのためのソナタ ニ長調 KV448〜第1楽章
3. ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番 ハ短調《悲愴》作品13〜第2楽章
4. ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番 ヘ短調《熱情》作品57〜第1楽章
5. メンデルスゾーン:チェロ・ソナタ第2番 ニ長調 作品58〜第4楽章
6. プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第7番 変ロ長調《戦争》作品83〜第3楽章
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