ジーグ:語源ははしゃぐ? ヴァイオリン? よく組曲の最後を飾るイギリス発祥の舞曲
1993年生まれ、東京都出身。2022年、第1回ひろしま国際指揮者コンクール(旧:次世代指揮者コンクール)優勝。パリ地方音楽院ピアノ科、ミュンヘン国立音楽演劇大学古楽...
18世紀までに多くの作曲家が取り上げたジーグ。組曲やパルティータなど、複数の踊りによって構成される曲集の中でも、最後を飾る踊りです。
組曲は、スタンダードな舞曲として、アルマンド(ドイツ起源かフランス起源か不明)、クーラント(フランスとイタリア起源)、サラバンド(スペイン起源)など、さまざまな国やバックグラウンドをもつ踊りで構成されています。
これらの舞曲の中で、最後に演奏されるジーグは、スコットランドやアイルランドをはじめとする、イギリス起源だと言われています。
そんなジーグの語源ですが、これまたいくつかの説があります。一つは、中期フランス語で、はしゃぐを意味するgiguerからきた説。
もう一つは、中世に中南部で話されていた古高ドイツ語で、ヴァイオリン(主にフィドル・ヴァイオリン)を意味するgīgaからきた説。こちらの言葉は、現在のドイツ語でもヴァイオリンを意味するGeigeに派生し、いまだに使われています。
ちなみに、この「ジーグ(gigue)」という呼び名は、フランス語および英語での名称です。
ジーグに関する古い記録は、15世紀まで遡ります。イギリスではjig、もしくはgiggと書かれ、おちゃらけた喜劇などで頻繁に演奏されました。かつ即興的で飛び跳ねるような音楽をもつジーグは、イギリスで人気となり、イタリアやフランスの宮廷の踊りとして普及しました。
バード:ジッグ(フィッツウィリアム・バージナル・ブックより)
イタリアやフランスへ入ってきたジーグですが、それぞれ別々に発展していきました。
イタリアのジーグ(イタリア語でジガ/giga)は、どのように入ってきたのかは未だ不明ですが、イギリスのジーグと似ており、とどめなく音を紡ぎ続けます。
ヴィヴァルディ:ヴァイオリンソナタ RV36-3〜第3楽章 ジガ
そして、フランスのジーグですが、17世紀にイギリスの王宮でリュート奏者をしていたジャック・ゴーティエがフランスへ帰国した際に広めたとされています。イタリアのものとは違い、フレーズのまとまりがはっきりしており、符点のリズムが特徴的です。
ラモー:英雄的牧歌劇《ザイス》〜第2幕より「ジーグ」
バッハ:ゴルドベルク変奏曲 BWV988〜第7変奏
19世紀以降、ジーグが踊られることはなくなりましたが、生き生きとした曲想が人気を保ち続けたため、その後も曲集の最後などに用いられました。それぞれ特徴の違うジーグですが、これでみなさんもそれぞれどの様式で書かれているかが、きっとわかるはずです!
ジーグを聴いてみよう
1. バッハ:無伴奏チェロ組曲第5番 ハ短調 BWV1011〜第6曲 ジーグ(フランス式)
2. バッハ:管弦楽組曲第3番 BWV1068〜第6曲「ジーグ」(イタリア式)
3. モーツァルト:ジーグ KV574(イタリア式)
4. シューマン:ピアノ小品 作品32〜第2番 ジーグ(フランス式)
5. ドビュッシー:管弦楽のための《映像》〜「ジーグ」(イギリス、スコットランド起源のジーグがベース)
6. シェーンベルク:組曲 作品29〜第4曲「ジーグ」
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