コントルダンス:イギリス宮廷で流行して広まった「田舎の踊り」
楽譜でよく見かけたり耳にしたりするけど、どんな意味だっけ? そんな楽語を語源や歴史からわかりやすく解説します! 第77回は「コントルダンス」。
1993年生まれ、東京都出身。2022年、第1回ひろしま国際指揮者コンクール(旧:次世代指揮者コンクール)優勝。パリ地方音楽院ピアノ科、ミュンヘン国立音楽演劇大学古楽...
18世紀のフランスで流行ったダンス。聞き馴染みのない方もいらっしゃるかもしれませんが、その起源はカントリーダンスにあるのです。カントリーダンス……コントルダンス……名前も似ていますね!
コントルダンスは、カントリーダンスから発展した踊りで、「カントリーダンス(country dance)」という英語の名前が、フランス語風に訛ったのが「コントルダンス(contre danse)」なのです!
カントリー(country)は田舎、ダンス(dance)は踊り、すなわち田舎の踊りという意味です。それでは、そんな「田舎の踊り」の変遷を追っていきましょう!
イギリスの田舎の踊り、カントリーダンス
まずカントリーダンスは、イギリスの田舎で踊られていた速い踊りで、基本は2拍子系です。
男女が手を取り合って踊りますが、大まかな動きは跳ねる、くるくる回ること。拍が少ないと、簡潔な速い動きが多くなる特徴があり、カントリーダンスは、その最たる例なのです(ジーグとは起源がほぼ同じなため、音楽も踊りも似ています!)。
カントリーダンスが登場するもっとも古い記録は、1548年まで遡ります(ここではcountrye dauncisと表記)。シェイクスピア(1564~1616)の戯曲にも、カントリーダンスがいくつか登場していることからも、カントリーダンスがイギリスではポピュラーだったことがわかります。
その田舎の踊りが、17世紀になり、イギリスの宮廷の踊りとして取り入れられます。特に、1650年にジョン・プレイフォードが『The English Dancing Master』という、イギリスのカントリーダンスに関する本を出版したことで、踊りとして一定の地位を得ました。
ジョン・プレイフォードの本に紹介されているコントルダンス
Cuckolds All a Row、Jameko、Bloomsberry Market
フランスの宮廷の踊り、コントルダンス
こうして、カントリーダンスはイギリスの宮廷で踊られるようになりましたが、イギリスで流行ったものが、対岸のフランスで流行らないわけがありません。1685年ごろ、フランスの国王で、踊りに命を燃やしていたルイ14世に、カントリーダンスが紹介されます。このときに、英語のカントリーダンスがフランス語に訛った名前、
フランスの国王が踊るようになった舞曲を、作曲家たちが書かないわけにはいきません。実は、たくさんの作曲家がコントルダンスを書いており、シンプルな曲想ながらも、楽しげな光景が目に浮かんでくるような作品が多く存在するのです!
大衆の踊り、コントラダンス
宮廷の衰退と共にコントルダンスは廃れ、同時にまだ存在していたカントリーダンスも音楽の流行の変化や、田舎の都市化から廃れます。
しかし、踊りやすいこと、そしてわかりやすい音楽であることから、19世紀末から、コントルダンスとカントリーダンスが混ざったコントラダンス(Contra dance)が、アメリカを中心に子どもの教育に取り入れられます。
きっとみなさんの中にも、小学校や中学校でこの曲に合わせて踊った方はいらっしゃるのではないでしょうか……? そうでない方でも、きっとこのメロディはどこかで耳にしたことはあるでしょう!
Turkey in the Straw (日本では「オクラホマ・ミキサー」で有名)
このように、コントルダンス(カントリーダンス)は、意外と私たちの身近なところにもあったのです!
コントルダンスを聴いてみよう
1. リュリ:ラ・コントルダンス
2. ラモー:歌劇《異国の人々》〜コントルダンス
3. モーツァルト:5つのコントルダンス KV609〜第1番
4. ベートーヴェン:12のコントルダンス WoO.14〜第7番
5. ヨハン・シュトラウス1世:コントルダンス 作品44
6. ダニエル=ルシュール:弦楽とピアノとティンパニのための舞踏交響曲〜第8曲 コントルダンス
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