ソステヌート:語源をたどると「音を下から支える」の意。テヌートとの違いは?
楽譜でよく見かけたり耳にしたりするけど、どんな意味だっけ? そんな楽語を語源や歴史からわかりやすく解説します! 第80回は「ソステヌート」。
1993年生まれ、東京都出身。2022年、第1回ひろしま国際指揮者コンクール(旧:次世代指揮者コンクール)優勝。パリ地方音楽院ピアノ科、ミュンヘン国立音楽演劇大学古楽...
音をしっかり保ってほしいときに使われる言葉、ソステヌート。テヌートと似た言葉ですが、一体何が違うのでしょうか……?
まず、ソステヌートという言葉の意味を見てみましょう。
イタリア語で、支えるという意味の動詞sostenireの過去分詞です。英語のsustain(下から支える)の元となった言葉です。さらにラテン語まで遡るとsustinēre、そして古いラテン語のsustineoという言葉に行き着きます。
これを分解すると、sub(下で、下から)とteneō(支える)の2つに分けることができます。テヌートは、このteneōのみを語源とする言葉で、ソステヌートは、それにsubが頭にくっついた言葉なのです。ここで、テヌートとソステヌートの言葉の違いが少しわかりましたね!
ですが、音楽を演奏する際に、「保つ」のと「下から支える」のとでは、何が変わってくるのでしょうか。
テヌートは、音をしっかりと書かれた音価通りに伸ばすことを意味し、次のような記号で示されます。
これに対して、ソステヌートには、記号がありません。すなわち、ひとつひとつの音に記号が書かれることがなく、音楽やフレーズ全体への指示として、ソステヌートが使われます。全体的に音をしっかり伸ばしてという意味で用いられます。
フレーズや曲全体の音を、しっかりと伸ばし続けて演奏するとなると、速いテンポでは演奏できませんよね? なのでソステヌートという言葉は、テンポ表記にも使われます。これは、テヌートとソステヌートの大きな違いです!
ところで、ピアノについている3つのペダルのうち、真ん中のペダルのことを何と呼ぶかご存じですか?
右はダンパーペダル、すべての音を響かせたままにします。左はソフトペダル、踏むと柔らかい音が出てきます。
そして真ん中のペダルは、ソステヌート・ペダルという名前がついており、このペダルを踏んだときに押された鍵盤の音は、そのまま伸ばしっぱなしになります。
1844年のパリ産業万博で、ジャン=ルイ・ボワスロが、ソステヌートペダルが備わったピアノを発表し、のちにスタインウェイ社が特許を取りました。
ソステヌートを聴いてみよう
1. ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番《月光》作品27-2〜第1楽章 アダージョ・ソステヌート
2. ワーグナー:交響曲〜第1楽章 ソステヌート・エ・マエストーゾ
3. ブラームス:交響曲第1番 作品68〜第2楽章 アンダンテ・ソステヌート
4. ブラームス:ハンガリー舞曲第6番
5. ムソルグスキー:《展覧会の絵》〜「第1プロムナード」
6. プッチーニ:《ラ・ボエーム》〜第3幕より「ということは、本当に終わったっていうのか?」
7. ブーレーズ:アンシーズ
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