阪田知樹と務川慧悟の“同級生”デュオが実現！2台ピアノのゾクゾクするプログラム

“ピアノの会話が聞こえるようなステージ”がコンセプトの「Pianos’ Conversation」は、Bunkamuraオーチャードホールの人気シリーズ。昨年は1台4手連弾の「レ・フレール」と2台ピアノの「アンセットシス」が、8本の手（！）による迫力のステージを繰り広げたことも話題となった。

そして11月3日に開催される第5弾は、人気ピアニストの阪田知樹と務川慧悟が2台ピアノで登場！なんと2人は東京藝術大学の同級生で、それぞれが海外に留学するまでの2年半を同じ教室で過ごした間柄だそうだ。ところがこれまで共演したのは、2台ピアノのための協奏曲が1度だけだそうで、ピアノだけのプログラムでは待望の初共演となる。

気になる曲目は、今年生誕150年を迎えたラヴェルを中心としたフランス・プログラムに、ラヴェルがアメリカへ演奏旅行をした際に親交を温めたガーシュウィン作曲のオペラ《ポーギーとベス》による作品をカップリング。「サマータイム」、「イット・エイント・ネセサリー・ソー」など、後にジャズ・スタンダードとなる名メロディをフィーチャーした、パーシー・グレインジャーによるゴージャスな幻想曲だ。

前半のフランス・プログラムは、比較的演奏されることが少ないラヴェルの2台ピアノのための《耳で聴く風景》。実はこの中の「ハバネラ」、初演後にドビュッシーが作曲・出版した《版画》〜「グラナダの夕べ」がそっくりだとして、ラヴェルが盗作を主張した「ハバネラ事件」なる騒動を引き起こしている（現在では冤罪説も）。そこに続くのが、ラヴェルが自作の管弦楽曲を2台ピアノ用に編曲した《スペイン狂詩曲》（前述の「ハバネラ」が転用されている）と、ドビュッシーの管弦楽曲「3つの夜想曲」をやはりラヴェルが2台ピアノに編曲したもの……。

そこにラヴェルより少し後の世代であるフローラン・シュミットとプーランクの作品が加わる。ラヴェル、ドビュッシー、ガーシュウィン……作曲家たちの人間関係も見えてくるような、一筋縄ではいかない見事なプログラミングに、演奏を聴く前からゾクゾクしてくる。2人のトークも楽しみだ。

現在Bunkamuraは、隣接する東急百貨店本店跡地の開発に伴い長期休館中。そのような中でも、オーチャードホールは日曜・祝日を中心に営業を継続しているのは心強い。ラヴェルの時代のパリ、ガーシュウィンの時代のニューヨーク……そんな文化の薫る街を渋谷に見立てて、ぜひ1日限りのレアなプログラムに浸りたい。