イベント
2021.07.16
7月31日~8月28日 京都・東京・オンライン開催

若き才能の熱き協演!ローム ミュージック ファンデーション「スカラシップ コンサート」

2021年夏、初めての東京での開催も決まった、ローム ミュージック ファンデーション「スカラシップ コンサート」。今年のテーマは「愛のテーマ~恋と友情と~」。活躍目覚ましいピアノの阪田知樹と佐藤元洋の協演など、これからの日本のクラシック界を担う若き音楽家たちの学びの結実のその瞬間を見逃さず、ともに応援しよう。

取材・文
長井進之介
取材・文
長井進之介 ピアニスト/音楽ライター

国立音楽大学演奏学科鍵盤楽器専修(ピアノ)卒業、同大学大学院修士課程器楽専攻(伴奏)修了を経て、同大学院博士後期課程音楽学領域単位取得。在学中、カールスルーエ音楽大学...

写真は2019年度「スカラシップ コンサート」より

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奨学生たちがつくる音楽の未来を信じて

音楽文化の発展・普及のために、未来の音楽界を担う若い音楽家たちの育成や、多くのコンサートの開催・支援に務めている、公益財団法人ローム ミュージック ファンデーション。同財団が育成事業等で関わった音楽家たちは「ローム ミュージック フレンズ」と呼ばれ、国内外で一層活躍の場を広げている。

ローム ミュージック フレンズでもある同財団の奨学生たちの成果発表の場の一つが、 7月から8月にかけて開催される「スカラシップ コンサート」。現在国内外の音楽学校で学ぶ、若き奨学生たちが熱演を繰り広げるもので、国際的な音楽家へと力強い歩みを感じさせる演奏は、多方面から高い評価を受けてきた。今年はこれまでの京都公演に加え、初の東京公演の開催も決定し、より華やかな内容となりそうだ。

「スカラシップ コンサート」について、公益財団法人ローム ミュージック ファンデーションの奨学援助事業担当・坂井和菜さんに尋ねた。

坂井「2013年度からスタートした『スカラシップ コンサート』は、2019年度には全公演が完売になるなど、京都・関西のお客様に愛される公演になりました。京都を中心とした関西のお客様の間に、少なからず“若い音楽家を応援する”雰囲気をつくることができたと思っております。

今年は、さらに多くのお客様に奨学生の素晴らしい演奏をお届けしたいという思いから、東京公演も開催いたします。今後もこのコンサートをきっかけに若い音楽家の皆さんの活躍の幅を広げ、音楽に親しむ方が増えることを願っております」

ローム ミュージック ファンデーションは、設立当初から若い音楽家の育成やコンサートの開催を行っているが、音楽文化・発展において、若い音楽家の支援に注力しているのはなぜなのだろう。

坂井「設立者の佐藤研一郎は、若いころピアニストを目指しておりましたが夢を諦め、1954年にローム株式会社の前身である東洋電具製作所を起業しました。佐藤は、ローム株式会社が企業として成長したのち、“世の中の文化の進歩向上に役立ちたい、特に自身と同じく音楽家を志す若い人たちを応援したい”との思いから、1991年に私財を投じてローム ミュージック ファンデーションを設立したのです。そのような経緯から、当財団では設立当初から継続して行っている奨学援助事業をはじめとした若い音楽家への支援に力を入れております」

奨学生たちにとって、さらなる研鑽のきっかけとなる「奨学生 報告会・認定式」(2019年8月)
奨学生たちの交流の場とも新たなインスピレーションの場ともなる「奨学生 懇親会」(2019年8月)

奨学生たちの化学反応を体感する「スカラシップ コンサート」

これまでにも世界的に活躍している演奏家たちが出演してきた「スカラシップ コンサート」では、今年も才能あふれる若き演奏家たちの学びの成果が力強く響くだろう。

出演者の中から、今回お話を伺ったのは、フランツ・リスト国際ピアノコンクール第1位、そして今年5月にエリザベート王妃国際音楽コンクールピアノ部門で第4位入賞を果たしたばかりの阪田知樹と、アルトゥール・シュナーベルピアノコンクール第3位、仙台国際音楽コンクールピアノ部門で第4位など、着実に実績を重ねる佐藤元洋。

二人はソロではなく、2台ピアノデュオで出演する。これは二人の強い希望だという。

阪田知樹
ローム ミュージック ファンデーション2019、2020年度奨学生。2016年フランツ・リスト国際ピアノコンクール(ハンガリー)第1位、あわせて6つの特別賞受賞。第14回ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール最年少入賞。クリーヴランド国際ピアノコンクールにてモーツァルト演奏における特別賞受賞。今年のエリザベート王妃国際音楽コンクールピアノ部門で第4位。ハノーファー音楽演劇メディア大学大学院ソリスト課程ピアノ科に在籍。
©Hideki Namai
佐藤元洋
ローム ミュージック ファンデーション2019、2020年度奨学生。ベルリン芸術大学大学院在学。第7回仙台国際音楽コンクール第4位、第12回東京音楽コンクール第2位。国内外各地での演奏会に数多く出演。ソリストとして東京交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、仙台フィルハーモニー管弦楽団などと共演を重ねている。伊藤恵、ビョルン・レーマンの各氏に師事。
©Kevin Cosuina

阪田「『スカラシップ コンサート』は、世代の近い音楽家の方々と一緒に一つの演奏会を作り上げることが大きな魅力です。そこで、佐藤さんとのアンサンブル出演を希望しました。佐藤さんと一緒にどのような音楽を作り上げることができるのか、また出演者の皆様それぞれの選曲や演奏が今からとても楽しみです。

今回演奏するのは、若きラフマニノフが敬愛するチャイコフスキーに感謝と友情の気持ちも込めてささげた、2台のピアノの組曲第1番《幻想的絵画》op.5です。佐藤さんとは東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校時代にも一度2台ピアノを演奏したことがあり、その時の曲目もラフマニノフ《ロシア狂詩曲》でしたね」

佐藤「阪田さんとは2019年の同時期に奨学生として採択いただいてから“『スカラシップ コンサート』で共演しよう”と話しており、弾いてみたい曲のあれこれを語らいました。その中から、ロシアの偉大な作曲家である二人、ラフマニノフとチャイコフスキーの人間的な関係性に今年のコンサートのテーマ『愛のテーマ~恋と友情と~』を見出し、この曲を演奏することを決めました。

これまでの日常からかけ離れた難しい状況が続く世の中ですが、こうして友人として、仲間として演奏を共にできることの縁とありがたさを、示唆的に考えさせられます」

毎年大好評の「スカラシップ コンサート」だが、2年前に観客として訪れたことのある二人にその際の感想を尋ねた。

阪田「様々な楽器や編成の作品が玉手箱のように散りばめられたコンサートでした。なかには初めて聴いた作品もあり、とても素晴らしい演奏で楽しませていただきました」

佐藤「これまで自分自身があまり実演に触れてこなかった楽器のソロ作品を通して、その多彩な音色や表現方法をじっくり味わうことができ、とても大きな刺激をいただきました」

現在は厳しい状況が続き、学びにも発表の場にも制限がかかっているが、ローム ミュージック フレンズとして学ぶ二人は常に前向きだ。

阪田「ローム ミュージック ファンデーションのご支援のおかげで、音楽を学ぶ上で大変充実した日々を過ごすことができています。今回の『スカラシップ コンサート』で他の出演者の方々とどのような音楽を作り上げられるのか、とても楽しみです」

佐藤「厳しい状況だからこそ、演奏できること、学べることの喜びと幸せを強く実感し、感謝の気持ちが大きくなっています。学びの成果を『スカラシップ コンサート』でお見せしたいです」

最後に、毎年多くの奨学生に接してきた坂井さんに、奨学生たちの活躍や「スカラシップ コンサート」の魅力についてお話いただいた。

坂井「奨学生の皆さんは毎年、演奏はもちろん、人間的にも大きく成長されています。また、毎回のコンサートの後のお客様アンケートでは、奨学生への熱いエールをいただいており、“こんな素晴らしい才能が日本にいらっしゃるなんて知らなかった”というお声もいただきます。こういうお声をいただくたび、これから活躍が期待される音楽家である奨学生を多くの方々に知っていただくことができていると実感できます。

今年は東京での開催も加わり、いままでローム ミュージック ファンデーションの奨学生についてご存じなかったお客様にも、現役、そして過去の奨学生を知っていただけるはずですので、私どもと共に、これからの日本のクラシック界を担う若い音楽家を応援していっていただけたらと願っております」

公演情報
ローム ミュージック ファンデーション スカラシップ コンサート Vol.23~32 愛のテーマ~恋と友情と~

【京都公演】

会場:京都府立府民ホール アルティ

Vol.23

日時:7月31日(土)14:00開演

出演:秋山紗穂、大関万結、田中祐子、櫃本瑠音、安田理沙

 

Vol.24

日時:7月31日(土)19:00開演

出演:太田糸音、小井土文哉、竹山愛、松島理紗

 

Vol.25

日時:8月1日(日)14:00開演

出演:五十嵐薫子、土岐祐奈、八木瑛子、吉見友貴

 

Vol.27

日時:8月21日(土)14:00開演

出演:篠原悠那、藤原秀章、古海行子、向井航

 

Vol.28

日時:8月21日(土)19:00開演

出演:木口雄人、清水勇磨、中村太地、三村梨紗

 

Vol.29

日時:8月22日(日)14:00開演

出演:伊東裕、千葉遥一郎、向井響、リード希亜奈

 

Vol.30

日時:8月22日(日)19:00開演

出演:有冨萌々子、中嶋俊晴、山下愛陽、吉本梨乃

 

問い合わせ:エラート音楽事務所075-751-0617

 

 

【東京公演】

会場:浜離宮朝日ホール

Vol.26

日時:8月6日(金)18:30開演

出演:小野田有紗、阪田知樹、佐藤采香、佐藤元洋、外村理紗

 

Vol.31

日時:8月28日(土)14:00開演

出演:城戸かれん、齋藤優貴、高橋維、森田啓佑

 

Vol.32

日時:8月28日(土)19:00開演

出演:香月麗、菅沼起一、東田範子、野上真梨子、樋口一朗、山本明尚

 

問い合わせ:株式会社1002(イチマルマルニ)03-3264-0244(平日11:00~18:00)

 

*全公演ライブ配信あり

詳しくはこちら

https://micro.rohm.com/jp/rmf/lp/scholarship_2021/

取材・文
長井進之介
取材・文
長井進之介 ピアニスト/音楽ライター

国立音楽大学演奏学科鍵盤楽器専修(ピアノ)卒業、同大学大学院修士課程器楽専攻(伴奏)修了を経て、同大学院博士後期課程音楽学領域単位取得。在学中、カールスルーエ音楽大学...

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