インタビュー
2022.10.01
舞台人が語る「WE LOVE MUSICAL!!」第1回

小池徹平が『キンキーブーツ』にかける想い~ミュージカルは「日常を忘れられる世界」

注目の舞台人が、ミュージカルの魅力を語る連載がスタート!
初回は、映像やドラマ、ミュージカルの舞台で活躍中の俳優・小池徹平さんが登場。10月から始まるミュージカル『キンキーブーツ』への熱い想いや、人生を変えたミュージカル、思い出の歌についてうかがいました。

取材・文
NAOMI YUMIYAMA
取材・文
NAOMI YUMIYAMA ライター、コラムニスト

大学卒業後、フランス留学を経て、『ELLE Japon(エル・ジャポン)』編集部に入社。 映画をメインに、カルチャー記事担当デスクとして勤務した後、2020年フリーに...

写真:各務あゆみ

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小池さんの新作舞台『キンキーブーツ』は、2016年に日本初演され、大ヒットしたブロードウェイミュージカル。イギリスの田舎町で営業不振に陥った靴工場の跡取り息子のチャーリーが、ロンドンで出会ったローラからヒントを得て、ドラァグ・クイーン専門のブーツ工場を再生させる物語。2度目の再演となる今回は、チャーリーを小池徹平が続投し、前2作で三浦春馬が演じていたローラを城田優が演じる。シンディ・ローバーのパワフルなナンバーと共に、10月1日から東急シアターオーブで上演される。

3度目のチャーリー役で作品をひっぱっていく

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——前回の再演から3年がたち、3度目の上演となる『キンキーブーツ』日本版。主人公のチャーリーを続投するにあたり、何か課題はありますか?

小池 やはりメンバーが変わることが大きいですね。この作品で一番大切な存在であるローラを(それまで演じた三浦春馬さんに代わり、)城田優が演じることが、非常に大きいと思います。ただ、実はそれほど心配はしていなくて。脚本も演出家も含めて、初演再演で作ってきた家族のように温かいチーム力があるので、昔の良さと新しさを兼ね備えたものができるんじゃないかと思うんです。

それにせっかくやるなら、春馬が「いいな、俺もやりたかったな」と思わせるものをやりたいし、「最高のチームだったよね」、と言われなきゃいけない。そのためにも3回目の出演になる僕がひっぱっていかなきゃいけないと思っています。

小池徹平(こいけ・てっぺい)
1986年、大阪府生まれ。2001年に「JUNON スーパーボーイ・コンテストでグランプリを受賞。その後、ウエンツ瑛士と共に音楽ユニット「WaT」を結成し、2016年まで活動。2013年、宮本亞門演出の舞台『メリリー・ウィー・ロール・アロング~それでも僕らは前へ進む~』でミュージカルに初出演。その後、『1789―バスティーユの恋人たち-』『キンキーブーツ』などの作品で、菊田一夫演劇賞を受賞している。

——出演を決めるうえで、プロデューサーの方と話し合ったのが大きかったと聞きました。

小池 そうですね。正直、最初は僕もこの作品を愛していた春馬を抜きにして、前回のように素敵な作品をみなさんに届けられるのか、正直悩みました。

でも、プロデューサーから、なぜ3度目の上演を予定通り行なおうと思ったのか聞いて、少しずつ前を向けるようになりました。なにより『キンキーブーツ』という作品を引き継いでいくことは、春馬がすごく望んでいたことだし、僕もそうだと思えたんです。

——チャーリーという役について教えてください。

小池 チャーリーは非常に保守的なところもありますけど、工場の人たちを身内みたいに思う人情を持っている人。そんな彼がローラと出会い、刺激を受けてどんどん成長していく。そんな若者のパワーも彼の魅力です。作品で目立つのは間違いなくローラですけど、チャーリーは作品をひっぱっていく屋台骨ですね。

——高校のときの同級生で、親交の深い城田優さんについては?

小池 同級生とはいえ、一緒に舞台に立つのは初めてなんです。だから一緒に物を作り上げる作業がすごく新鮮ですね。彼はガラスのハートの持ち主なので、不安だしプレッシャーを感じていると思いますよ。それを強がって見せないんですけどね(笑)。

今回、優が演じるローラと僕との身長差がすごいんです。いい意味で怪物みたいに圧倒的でキラキラしているローラを目の前にしたとき、チャーリーがどうなるのか、僕自身も楽しみですね。

——シンディ・ローパーが担当したパワフルな楽曲もこの舞台の魅力ですが、とくに聴かせどころのナンバーは?

小池 この作品は、カッコいい歌から素敵なバラードまでどれも大好きなんですが、印象に残っているのは、自分の歌だと「Soul of a Man」。ローラの歌なら「Hold Me in Your Heart」ですね。「Soul~」はミュージカルに宿る歌の力が凝縮されている曲で、それまでほかの人と散々バトルしたあとに、一人で自分の感情を全部吐き出すんです。自分の中では魂の叫びみたいになっていて、歌い終えると、思いきり泣いたあとのような感じになるんですよ。この曲の次に、ローラの「Hold Me~」が立て続きにくる流れが、この舞台のみどころの一つだと思います。

今回、歌唱指導の方に、城田とは声の相性もいいねと言ってもらえているので、お客様にはハーモニーの良さも楽しんでもらいたいですね。

「Soul of a Man」、「Soul of a Man」

お客様に物語を伝えられるように歌う

——次に、小池さんの人生を変えたミュージカルを教えてください。

小池 人生を変えたとなると、やっぱり初めて出演したブロードウェイ・ミュージカル『メリリー・ウィー・ロール・ア・ロング~それでも僕らは前に進む』です。2013年に宮本亞門さん演出で上演されたもので、何も知らずにミュージカル畑に飛び込みました。たまたま全員が20代のキャストだったのですが、今まで積み重ねてきたものが全然通用しなかった。次への課題をたくさん見つけることができて、ワクワクしました。

小池さん出演のミュージカル『メリリー・ウィー・ロール・アロング』 舞台映像

——小池さんはそれまでウエンツ瑛士さんと「WaT」の活動で歌も歌われていましたが、ミュージカルの舞台は歌唱法も違いますしね。

小池 ミュージカルの場合、歌も一筋なわではいかないんです。役の感情をただぶつけるのではなく、まず自分の中に落とし込んで、技術を使いながら表現しなくてはならない。今も難しいですけど、だんだんその難しさが楽しさに変わっていきました。この作品のおかげで、どっぷりミュージカルにのめりこめたんです。

——そして、今は海外ミュージカルなどでも活躍中です。ミュージカルで歌うときに気を付けていることは?

小池 うまく歌うことはもちろん大前提として、セリフや歌詞はきちんと聞こえないと、ただの自己満足になってしまうと思うんです。だから、なるべくわかりやすく、物語をお客様に伝えるように歌っています

——思い入れのあるミュージカルソングは?

小池 感慨深かった曲といえば、松尾スズキさんの『キレイ—神様と待ち合わせした女—』という舞台で歌った「宇宙は見える所までしかない」ですね。

2014年に、僕はこの舞台でハリコナという少年役で出演したんですが、そのとき、この役の青年役を演じていたのが尾身としのりさんで、彼が歌った曲なんです。バラードから入って、途中で別の表情を見せる曲で聴いていてめちゃくちゃかっこいいなと思ったんです。その後、2度目に出演させていただいたときに、僕が尾身さんの役を演じることになって。舞台で歌えたときは、本当に感慨深かったし、嬉しかったですね。

——小池さんにとってミュージカルの舞台の魅力とは?

小池 非日常を味わえるところじゃないですかね。普通の舞台もそうですけど、生で役者さんの声を聴けて芝居も見られるし、劇場という素敵な空間で、普段は味わえないところに連れて行ってくれる。日常を忘れられる世界というのが魅力だと思いますね。

公演情報
ミュージカル『キンキーブーツ』

【東京公演】
日時: 2022101日(土)~113日(木・祝)
会場: 東急シアターオーブ

【大阪公演】
日時: 20221110日(木)~1120日(日)
会場: オリックス劇場

脚本: ハーヴェイ・ファイアスタイン

音楽・作詞: シンディ・ローパー

演出・振付: ジェリー・ミッチェル

日本版演出協力/上演台本: 岸谷五朗

訳詞: 森雪之丞

出演: 小池徹平、城田 優、ソニン、玉置成実、勝矢、ひのあらた、ほか

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取材・文
NAOMI YUMIYAMA
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NAOMI YUMIYAMA ライター、コラムニスト

大学卒業後、フランス留学を経て、『ELLE Japon(エル・ジャポン)』編集部に入社。 映画をメインに、カルチャー記事担当デスクとして勤務した後、2020年フリーに...

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