八重奏曲 変ホ長調《パルティア》——大人気だったボン時代の最高傑作!
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
大人気だったボン時代の最高傑作! 八重奏曲 変ホ長調《パルティア》
ボン時代の終わり、1792年11月より前に完成していたと考えられる。
ベートーヴェンの作曲した室内楽で最大の編成であるこの八重奏曲は、1770年代から80年代を通してウィーンで大変に好まれた管楽合奏のアンサンブルで、特にベートーヴェンがこの作品で設定したオーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴット各2管の編成はハルモニー編成とも呼ばれた。モーツァルト音楽の保護者であるウィーンの神聖ローマ皇帝ヨーゼフ2世が特に好み、宮廷楽団の中にハルモニー合奏団を常設させるほどであった。
1784年にボンの領主となるケルン選帝侯マックス・フランツは、ヨーゼフ2世の弟であり、自分と同い年のモーツァルトの音楽を愛好し、ボンにもウィーン風のハルモニームジークをもたらしていた。ハルモニームジークは屋外でも演奏され、フェルトパルティーやフェルトムジーク(野外で演奏されるパルティータ)、さらにはパルティータ(多楽章編成による小品集)と呼ばれることもあった。ベートーヴェンのこの作品も1793年に手直しを加えた形で作成された自筆スコア譜には表題として《パルティア》と明記されている。
ボン時代の最高傑作のひとつであり、モーツァルト作品を含めたハルモニームジーク作品の傑作にも数えられている。
解説:平野昭
これまでにボン時代に作曲された室内楽作品は何曲も紹介してきましたが、この作品は最高傑作のひとつと評される完成度。ベートーヴェンの今後の活躍が予感される作品ですね。
八重奏曲 変ホ長調《パルティア》Op.103
作曲年代:1792年11月以前(ベートーヴェン22歳)
出版:1830年秋
楽曲構成:
【第1楽章】アレグロ、変ホ長調、2分の2拍子。
まずオーボエにトリル音形のように素早い律動をもつ短い動機音形が4回繰り返されて、5小節目からなだらかな音階を利用した主題呈示となる。
【第2楽章】アンダンテ、変ロ長調、8分の6拍子。
ファゴット、クラリネットの作る和音伴奏の上で、オーボエが主題の前半を呈示する。これにホルン2管が3度平行の二重奏で応じ、主題後半を呈示する。
【第3楽章】アレグロ・ミヌエット(メヌエット)と表記された変ホ長調、4分の3拍子。
舞曲的性格よりスケルツォと呼んでも良いような奇抜さがある。スタッカート奏中心のミヌエット主部に対して、中間部トリオではクラリネットとホルンが流麗なレガート音形で対話し、やがてファゴットもこれに加わる。
【第4楽章】フィナーレ、2分の2拍子。
快活でエネルギッシュな八重奏の全パートの響きが、ハルモニームジークの醍醐味を余すところなく表現している。
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