bar valseでかける、会話がすすむ室内楽
2018年2月に連載「飯田有抄と、音楽でつながる仕事人たち。」の取材で訪れた東京・目黒のクラシック音楽バー「valse」。絶妙に好みに合わせてくれるカクテルや料理とともに味わうクラシックは、耳も心も朗らかにしてくれました。
ちょっとした音楽談義も楽しいオーナー齊藤容平さんのプレイリストをどうぞ。
東京都出身。國學院大學 文学部卒。 酒類メーカーや様々な飲食店を経験後、 ライブハウスBlues Alley Japanに入社。 さまざまなジャンルの音楽に...
リラックスタイムにかけたい、会話がすすむ音楽とは?
音楽を聴くシチュエーションはさまざまです。朝気持ちよく起きるための音楽、出勤中やる気を出すための音楽、落ち込んだ気持ちを慰めるための音楽……。
そして、クラシック音楽バーvalseにお越しになるお客様も、百人百様です。クラシック愛好家や演奏家、ほとんどクラシックに馴染みのない方も訪れます。
共通するのは帰宅前に気持ちを切り替えたい、リラックスしたい、ちょっと会話を楽しみたい。そんなところではないでしょうか?
当店はバーという性質上、クラシックの中でも「会話がしやすい」「会話がすすむ」音楽を流すよう心がけています。「会話がすすむ」ためには、華やかさや心が和む音楽を選ぶのがポイント。
今回は「bar valseでかける、会話がすすむ室内楽」をご紹介いたします。
ご自宅でのお食事中やお休み前のリラックスタイムに、ご家族やご友人、大切な方とお楽しみいただく参考になれば幸いです。
1. ペルゴレージの主題と断章と小品による組曲(I.ストラヴィンスキー作曲)
18世紀イタリアで活躍したペルゴレージの旋律をもとに、近代的なリズムや和声を施したバレエ音楽《プルチネルラ》を、作曲家自身でヴァイオリンとピアノ版に編曲した作品。当店では比較的早い時間(19時くらい)によく流します。
18世紀イタリアの華やかで典雅なメロディが1日の終わりを豊かにスタートさせてくれます。美食の国イタリアの旋律は、ご飯も美味しくする? お食事のおともにいかがでしょうか。
類似した作品に、ヴィヴァルディなどをレスピーギが編曲したものなどあり、こちらもおすすめです。
2. ヴェルディの歌劇《椿姫》の主題による協奏的幻想曲(D.ロヴレーリョ作曲)
クラリネットとピアノで、《椿姫》の有名な旋律の数々を歌い上げます。
誰もが聴いたことがあるであろう美しい旋律が万華鏡のように次々出てくるので、「あっ、このメロディ知ってる!」なんてところから、さまざまな会話に広がっていくこと請け合いです。
クラリネットの柔らかい音色は耳に心地よく、BGMとして最適。
こちら以外にも、オペラの編曲、パラフレーズはリストの器楽曲をはじめ、さまざまな楽器で作曲されていますが、美しい旋律とテクニカルな作品が多く、気分を高揚させてくれます。
3. ピアノ三重奏曲第7番 大公(L.V.ベートーヴェン作曲)
4. セレナード第10番 変ロ長調 グラン・パルティータ(W.A.モーツァルト作曲)
12の管楽器とコントラバスと比較的大編成の室内楽で、かのアインシュタインも大絶賛した作品ですが、いつ、どのような目的で作曲されたのかは定かではありません。
ただ、モーツァルトが自身とコンスタンツェの結婚のお祝いのために書いたという説もあり、これも異論がありますが、そう思いたくなるほど祝祭的で美しい作品です。
ホルンやバセットホルンというクラリネット属の古い木管楽器が独特の響きを作り上げ、ただただ美しいメロディと木管楽器の柔らかい響きに包まれれば、リラックス効果も絶大です。
5. 弦楽四重奏曲第10番変ホ長調(A.ドヴォルザーク作曲)
《スラヴ舞曲集》が出版されるや人気を博し、「スラヴ風の弦楽四重奏を」という依頼で書かれたのがこの10番です。
ただ、スラヴ舞曲ほど賑やかな楽章はなく、全体的にしっとりとチェコの自然が目に浮かぶような美しい作品です。この曲を聴けば、きっと山や森、田園風景を見に行きたくなるはずです。
さぁ、週末の予定を決めましょう!
6. アンダンテ(G.フォーレ作曲)
夜も深まってきたらチェロがおすすめです。チェロはヴァイオリンなどに比べると音域が低いので、小さな声でも話しやすいです。
そして、温かな音色はやはり夜向きと言えるのではないでしょうか?
フランスを代表する作曲家フォーレは、2曲のチェロ・ソナタのほかに、チェロの小品を多数書いています。
《シシリエンヌ》などはその代表ですが、今回はチェロとピアノのための《ロマンス》の第一稿の《アンダンテ》。こちらはチェロとオルガンという変わった編成ですが、清らかでやわらかいオルガンをバックに歌うチェロは夢見心地な気分。食後の珈琲やお茶、ちょっと一杯といったときにぜひお楽しみください。
7. リュート・ソナタ ニ長調(S.L.ヴァイス 作曲)
リュートは中世からバロック期に人気を博したギターのような撥弦楽器です。ギターより音が小さく、独特のくぐもったような音色で、バロックの終焉と共に衰退していきました。
ヴァイスはドイツの後期バロックの作曲家で、消えゆこうとするリュートのための作品を数多く書き、作品の質や技術的にも頂点を極めたリュート最後の巨匠と言われています。
リュートの哀愁ただよう音色は、夜更けに静かに心を落ち着けてくれるはずです。すっと心の深いところに入っていきそうな、そんな音楽です。
お休み前のひと時にどうぞ。
8. 3カルテッツ(M.ナイマン作曲)
こちらは番外編的に。
あまりクラシックに馴染みのない方に聴いていただくと、ほぼ皆様びっくりされます(笑)。
イギリスを代表する現代作曲家、マイケル・ナイマンによる、弦楽四重奏+サクソフォン四重奏+金管四重奏3つの四重奏という編成。「ピアノ レッスン」をはじめ映画音楽なども多数手がけるナイマンの音楽は、現代人に馴染みやすいメロディで、ジャズやロックなどクラシック以外の音楽が好きな方にも聴きやすいと思います。
当店でも、ちょっとしたいたずら心でかけたりすると、かなり盛り上がります。
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