『蜜蜂と遠雷』の映画と原作の音楽を超一級のピアノで楽しむプレイリスト
10月4日に公開された映画『蜜蜂と遠雷』と、その原作に登場した使用曲をまとめて楽しめるプレイリストをお届けします。
原作の音楽描写はさることながら、映画でも音楽面にとことんこだわり抜き、完成度は原作者の恩田陸さんも太鼓判。音楽を聴きこんで、『蜜蜂と遠雷』の世界を存分に楽しみましょう。
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
まずは原作から——コンピレーションアルバム「蜜蜂と遠雷 音楽集」
『蜜蜂と遠雷』の小説からのファンの方も、映画公開にあたって原作が気になって読み始めた方も、まずは小説をもとに作られたコンピレーションアルバム「蜜蜂と遠雷 音楽集」を聴いてみましょう。
コンクールの場面で演奏される数々のクラシックの名曲の中から、物語の核となる19曲が厳選されています。物語の展開に合わせて登場順に並べられているので、小説を読みながら聴くという楽しみ方も。
第1次予選~第3次予選演奏曲を収めたDISC 1とファイナル演奏曲を収めたDISC 2の2枚組になっています。演奏も登場人物の設定や演奏の描写に合わせて選ばれた、こだわりの詰まったアルバムです。
作者、恩田陸さんのインタビューもあわせてどうぞ。
映画『蜜蜂と遠雷』のピアニストたち
映画では、主演4人の演奏をそれぞれ4人のピアニストが担当しています。映画公開にあたり、4人のインスパイアード・アルバムが配信・発売されました。各キャラクターを想像しながら聴き比べるのも楽しいですね。
松坂桃李さん、松岡茉優さん、森崎ウィンさん、鈴鹿央士さんのインタビューでは、それぞれのピアノにまつわるエピソードも読むことができます。
福間洸太朗plays高島明石
松坂桃李さんが演じる高島明石役の演奏を担当したのは福間洸太朗さん。クリーヴランド国際コンクールで日本人初の優勝者となり、現在ベルリン在住のピアニストです。作品中で明石が繰り返す「生活者の音楽」を、藤倉大作曲の《春と修羅》で見事に表現しています。
河村尚子 plays 栄伝亜夜
難関として知られるミュンヘン国際コンクール第2位、クララ・ハスキル国際コンクールにて優勝など輝かしいコンクールキャリアをもつ河村尚子さんが、松岡茉優さん演じる栄伝亜夜のピアノ演奏を担当。映画のクライマックスで演奏される「プロコの3番」は、映像と同じくらい雄弁に亜夜の心情を語りかけてくるような名演です。
金子三勇士 plays マサル・カルロス・レヴィ・アナトール
森崎ウィンさんが演じるマサル・カルロス・レヴィ・アナトールのピアノ演奏を担当したのは金子三勇士さん。ハンガリーのバルトーク国際ピアノコンクール優勝ほか、華やかな経歴の持ち主です。映画では、マサルがファイナルで演奏するプロコフィエフの協奏曲第2番の力強い演奏が印象的です。
藤田真央plays風間塵
幼いころから天才ピアニストとして注目され、2019年チャイコフスキー国際コンクール第2位受賞。今年もっとも注目されるピアニストのひとりである藤田真央さんが、鈴鹿央士さん演じる風間塵の演奏を担当しています。観るものを圧倒する《春と修羅》の情熱的なカデンツァや、ファイナルで演奏するバルトークのピアノ協奏曲第3番は、映画のハイライトと言っても過言ではありません。
兵庫県西宮市生まれ。1986年渡独後、ハノーファー国立音楽芸術大学在学中にヴィオッティ(ヴェルチェリ)、カサグランデ、ゲーザ・アンダなどヨーロッパの数々のコンクールで優勝・入賞を重ねる。2006年には権威ある難関ミュンヘン国際コンクール第2位受賞。翌年、多くの名ピアニストを輩出しているクララ・ハスキル国際コンクールにて優勝を飾り、大器を感じさせる新鋭として世界の注目を浴びる。
1989年、日本人の父とハンガリー人の母のもとに生まれる。6歳で単身ハンガリーに渡りバルトーク音楽小学校に入学。2001年、11歳でハンガリー国立リスト音楽院大学(特別才能育成コース)に飛び級で入学、2006年に全課程取得とともに帰国。東京音楽大学付属高等学校に編入、同大学を首席で卒業、同大学院修了。2008年、バルトーク国際ピアノコンクール優勝の他、数々の国際コンクールで優勝。第22回出光音楽賞他を受賞。これまでにゾルタン・コチシュ指揮/ハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団、小林研一郎指揮/読売日本交響楽団、ジョナサン・ノット指揮/東京交響楽団等と共演。国外でも広く演奏活動を行っている。
1998年東京都生まれ。3歳からピアノを始める。
2019年6月、第16回チャイコフスキー国際コンクール、ピアノ部門にて第2位を受賞。審査では聴衆から熱狂的なスタンディング・オベーションで迎えられ、ネット配信を通じて世界中の注目の的となった。
2017年、弱冠18歳で第27回クララ・ハスキル国際ピアノ・コンクール優勝。併せて「青年批評家賞」「聴衆賞」「現代曲賞」の特別賞を受賞。2016年には、故中村紘子氏が最後に審査員を務めた浜松国際ピアノアカデミーコンクールで第1位に輝くなど、国内外での受賞を重ねている。
2018/2019シーズンは、「横浜市招待国際ピアノ演奏会」、Bunkamura 30周年記念企画「クラシック・ロシア by Pianos」、「トッパンホール ニューイヤーコンサート」などのガラ公演に出演した他、完売になったヤマハホールのリサイタルは「聴く喜びを生む 新星の美しい音色」と評された。今後は、飯守泰次郎指揮/東京シティ・フィルとベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」、小林研一郎指揮/日本フィルハーモニー交響楽団とチャイコフスキー:ピアノ協奏曲、モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番を共演。
©2019 映画「蜜蜂と遠雷」製作委員会
配給: 東宝
キャスト: 松岡茉優、松坂桃李、森崎ウィン、鈴鹿央士(新人)
原作: 恩田陸「蜜蜂と遠雷」(幻冬舎文庫)
監督・脚本・編集: 石川慶
「春と修羅」作曲: 藤倉大
ピアノ演奏: 河村尚子、福間洸太朗、金子三勇士、藤田真央
オーケストラ演奏: 東京フィルハーモニー管弦楽団(指揮: 円光寺雅彦)
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