ウィーン・フィルのニューイヤーコンサート 2024年の聴きどころと名演の歴史
音楽ファンにとって新年のお楽しみの一つが、ウィーン・フィル「ニューイヤーコンサート」のテレビ中継でしょう。2024年の指揮者は、2度目の登場となるクリスティアン・ティーレマン。今回は、どのような趣向が凝らされたプログラムとなるのでしょうか。その聴きどころに加え、ニューイヤーコンサートの始まりまでタイムスリップ! TV番組の解説でもお馴染みの小宮正安さんに、これまでのニューイヤーコンサートからエポックメイキングな名演を教えてもらいました。
ニューイヤーコンサートを最初に指揮したのは…
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(以下「ウィーン・フィル」と略)の名物コンサートの1つである「ニューイヤーコンサート」。普段の演奏会では、いわゆる「真面目な」西洋音楽のレパートリーに取り組んでいる彼らが、お祭り気分に溢れた年末年始だけは羽目を外し、楽しいダンス音楽を中心にした演奏会を開催する。
だがこの世界的に有名な演奏会、元はといえばオーストリアがナチス・ドイツに併合された1年後の1939年の大晦日に始まった。オーケストラからもユダヤ人のメンバーが解雇される中、指揮台には親ナチスのクラウスがのぼった。ただしそうした暗い時代だったからこそ、ウィーンの人々に、彼らの心のよりどころともいえるウィーンならではのダンス音楽を届けようという心意気も静かに燃えていた。
クラウスは、第二次世界大戦終結後の2年間を除き(ナチスに協力したかどで活動停止に追い込まれた)、亡くなる1954年までこの演奏会の指揮を務めた。その最後のニューイヤーコンサートの復刻版は、シュトラウス兄弟が生きていた19世紀の風が感じられるよう。特にワルツ《春の声》にきかれる洒脱なポルタメントや、官能的なリズムの崩し方は絶品だ。
J.シュトラウス2世:ワルツ《春の声》(1952-54年、クレメンス・クラウス指揮)
その後、1955年から79年まで25年間にわたりニューイヤーコンサートを率いたのが、同オーケストラの名物コンサートマスターのボスコフスキー。テレビ中継も始まり、この演奏会がワールドワイドになるきっかけを作ったが、残された映像集からは、古い映像になればなるほど、ローカルな楽しみに溢れたゆる~い演奏会の様子が分かる。中でも、当時同演奏会で毎年のようにギャグを披露していた打楽器奏者のブロシェクが登場し、会場に笑いの渦を巻き起こす《休暇旅行で》(1964年)は大注目。
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