「ピアノ協奏曲第1番ハ長調」――作曲家としての意識が強く芽生えた意欲作
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1800年、30歳になったベートーヴェン。音楽の都ウィーンで着実に大作曲家としての地位を築きます。【作曲家デビュー・傑作の森】では、現代でもお馴染みの名作を連発。作曲家ベートーヴェンの躍進劇に、ご期待ください!
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
作曲家としての意識が強く芽生えた意欲作「ピアノ協奏曲第1番ハ長調」
ピアノ協奏曲第2番 op.19でお伝えしたように、作曲順でいうと、今日の第1番 op.15があとの作品です。第2番は改訂を重ねたために出版が遅れてしまいました。
30代に入ったベートーヴェンは、順調に作曲・出版を重ねていきます。
小山 ピアニスト、ベートーヴェンが、作曲家として変貌し、作曲家としての地位を確立してゆく感じが伝わってきます。
平野 そうですね。ピアノ協奏曲の2作品(Op19、Op15)が出版された頃には「交響曲第1番」Op21や「弦楽四重奏曲第1〜6番」Op18を書いていますし、彼自身、作曲家としての意識が強く芽生えてきていたはずです。
——小山実稚恵、平野昭著『ベートーヴェンとピアノ「傑作の森」への道のり』(音楽之友社)86、87ページより
作品がもつ堂々とした雰囲気や、革新性などは当時から認められていたようです。
ベートーヴェンらしさが表れたこの作品は、「作曲家=ベートーヴェン」としての歩みを大きく進めた1曲と言えるだろう。実際に、他の作曲家にも影響を及ぼすようになっていた。ベートーヴェンのOp15が出版された9年後、1810年に出版されたフリードリヒ・クーラウ(1786-1832)の「ピアノ協奏曲」Op7(ハ長調)が、あまりにもベートーヴェンのOp15と酷似している。
平野 リズムを少し変えたりしているくらいで、調の配置も同じですし、これは「パクリ」と言われれてもおかしくないほど似ていますね(笑)。ネットで探してみてください。
——小山実稚恵、平野昭著『ベートーヴェンとピアノ「傑作の森」への道のり』(音楽之友社)86ページより
木管とピアノのための五重奏で、モーツァルトの「パクリ」をしていたベートーヴェン。遂にパクられる側になりました! クーラウの作品とも聴き比べてみましょう。
「ピアノ協奏曲第1番ハ長調」Op.15
作曲年代:1793~1800年12月(ベートーヴェン23歳〜30歳)
出版:1801年モロ社(ウィーン)
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