「ピアノ・ソナタ第15番 ニ長調《田園》」——名の通りのどかな風景が思い浮かぶ作品
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1800年、30歳になったベートーヴェン。音楽の都ウィーンで着実に大作曲家としての地位を築きます。【作曲家デビュー・傑作の森】では、現代でもお馴染みの名作を連発。作曲家ベートーヴェンの躍進劇に、ご期待ください!
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
名の通りのどかな風景が思い浮かぶ作品「ピアノ・ソナタ第15番 ニ長調《田園》」
平野 《田園》というタイトルは1838年の出版譜からつけられるようになったもので、1802年の初版譜にはついていません。ただこの曲に関しては、音楽の実態からしても《田園》と呼ぶにふさわしい雰囲気はあります。伝統的に田園的なものを描いた曲はへ長調か二長調で書かれていますし、冒頭の主音による保続音(ドローン)がミュゼット、もしくはバグパイプといった農民のための楽器を思わせるということがずっと言われてきました。
小山 調性と楽器を模倣した主音保持がもたらす雰囲気は、確かに田園風景を感じさせてくれます。この曲はソナタ形式による第1楽章をもつ伝統的な「4楽章ソナタ」ですが、その中にはやはりベートーヴェンならではの革新性がありますよね。
——小山実稚恵、平野昭著『ベートーヴェンとピアノ「傑作の森」への道のり』(音楽之友社)101ページより
この《田園》というタイトルは、昨日の《月光》と同じく、ベートーヴェン自身がつけたものではありません。しかし、のどかな風景が思い浮かぶような穏やかな作品です。同じ名前で親しまれている、交響曲第6番《田園》がありますが、こちらはベートーヴェン本人が名付けたものです。ぜひ聴き比べてみてください。
「ピアノ・ソナタ第15番 ニ長調《田園》」Op.28
作曲年代:1801年(ベートーヴェン30〜31歳頃)
出版:1802年8月美術工芸社
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