「イギリス民謡《ルール・ブリタニア》による5つの変奏曲」——イギリスの女神が歌う愛国歌を自由に変奏
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1800年、30歳になったベートーヴェン。音楽の都ウィーンで着実に大作曲家としての地位を築きます。【作曲家デビュー・傑作の森】では、現代でもお馴染みの名作を連発。作曲家ベートーヴェンの躍進劇に、ご期待ください!
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
イギリスの女神が歌う愛国歌を自由に変奏「イギリス民謡《ルール・ブリタニア》による5つの変奏曲」
ベートーヴェンの弟子のフェルディナンド・リース(1784~1838)は1803年8月6日付けで故郷ボンの音楽出版商ジムロックに宛てて「(先生は)今、イギリスの歌による変奏曲を2曲作曲したところです」と伝えている。ひとつが《ゴッド・セイヴ・ザ・キング》による変奏曲で、もうひとつが現在でもイギリスの愛唱歌として知られる《ルール・ブリタニア》による変奏曲だ。
原曲は、イギリスの作曲家トーマス・アーン(1710~78)が1740年に作曲した仮面劇『アルフレッド大王』。その中で、イギリスを擬人化した女神ブリタニアが世界を制する、と歌い上げる力強く、生彩に満ちた歌。
ニ長調、4分の2拍子、30小節の主題。第1変奏は主題の旋律より和声的な響きを保った自由な展開。シンコペティックな第2変奏、エチュード風な第3変奏、低音部でトリル音形風のバス声部持続がある第4変奏というように、きわめて自由な変奏。最終変奏は83小節まで拡大されている。
解説 平野昭
昨日ご紹介した「《ゴッド・セイヴ・ザ・キング》による変奏曲」とセットで、イギリスの出版社との交流から生まれた作品です。
《ゴッド・セイヴ・ザ・キング(クイーン)》は、イギリス国歌ですが、この《ルール・ブリタニア》も、現在までイギリスで広く愛されている曲です。
ロンドンで毎年夏、8週間に渡って開催されるフェスティバル「BBCプロムス」。その最終日である「ラスト・ナイト・オブ・プロムス」では、エルガーの「威風堂々 第1番」と並び、必ずこの曲がアンコールされ、観客も斉唱するのが通例となっています。
イギリス民謡《ルール・ブリタニア》による5つの変奏曲 WoO79
作曲年代:1803年夏(ベートーヴェン33歳)
出版:1804年6月
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