「交響曲第5番 ハ短調《運命》」第3、4楽章——2種類の楽器が、交響曲史上初めて登場!
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1800年、30歳になったベートーヴェン。音楽の都ウィーンで着実に大作曲家としての地位を築きます。【作曲家デビュー・傑作の森】では、現代でもお馴染みの名作を連発。作曲家ベートーヴェンの躍進劇に、ご期待ください!
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
2種類の楽器が、交響曲史上初めて登場!「交響曲第5番 ハ短調《運命》」第3、4楽章
オッペルスドルフ伯爵に宛てて瘭疽(ひょうそ/細菌性の炎症)を嘆いた前述の手紙(BB325)には「貴方のための交響曲はもう出来上がっていることをお知らせします。次の郵便馬車でお送りしますが、写譜代金として50フローリン要したことをお含みおきください。……(中略)……この作品が不要な場合には次の馬車が出る前にお知らせください。お受け取りくださる場合は300フローリンを受領させていただきたいと思います」とある。ここに言及されている交響曲が「ハ短調」交響曲作品67である。前述の文に続けて「この交響曲の最後の楽章では3本のポザウネとフラウティーノが必要です」と書かれている。ポザウネとはトロンボーン、フラウティーノはピッコロ・フルートのことであり、この作品で交響曲史上初めてトロンボーンが楽器編成に加わったのだ。後世に《運命》と呼ばれるようになるこの曲を完成させるころには、もうひとつの新作交響曲《田園》作品68に着手していた。夏の間は都市の喧騒を避けてハイリゲンシュタットに籠り《田園》に打ち込んでいる。
——平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)101ページより
音楽愛好家であるオッペルスドルフ伯爵は、ベートーヴェンが「交響曲第4番」作品60を献呈した人物です。この《運命》交響曲も、伯爵に宛てたものだと手紙で言及していたのですね。
本日お聴きいただくのは第3、4楽章です。今や交響曲ジャンルには欠かせない存在となっている、トロンボーンとピッコロですが、初めて使用されたのがこの作品の終楽章でした。どんな風に登場するのか必聴です。
「交響曲第5番 ハ短調《運命》」Op.67
作曲年代:1807年(ベートーヴェン36歳)
初演:1808年12月22日
出版:1809年4月ブライトコップフ&ヘルテル社(ライプツィヒ)
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