「ピアノ協奏曲 ニ長調」——親友夫婦へ贈る結婚祝い、原曲はヴァイオリン協奏曲
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1800年、30歳になったベートーヴェン。音楽の都ウィーンで着実に大作曲家としての地位を築きます。【作曲家デビュー・傑作の森】では、現代でもお馴染みの名作を連発。作曲家ベートーヴェンの躍進劇に、ご期待ください!
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
親友夫婦へ贈る結婚祝い、原曲はヴァイオリン協奏曲「ピアノ協奏曲 ニ長調」
ブロイニング家はボンの名門貴族で、1777年1月の宮廷火災で亡くなったエマヌエル・ヨーゼフ・フォン・ブロイニング(1740〜77)は宮廷顧問官長官を務めた人物であった。その妻へレーネ(1750〜1838)との間には4人の子供がいた。
次男シュテファン(1774〜1827)は生涯にわたる無二の親友となる。(中略)ベートーヴェンは1801年6月に医師である友人のヴェーゲラーに宛てて長い手紙を書き、難聴の苦悩と胃腸の不調について告白し、また、ウィーンで受けている治療法などにも言及しているが、その一方で「シュテッフェン(ママ)は今こっちにいて、僕らはほとんど毎日会っている」(BB65)と楽しげに語ってもいる。シュテファンは1808年にユーリエ(1791〜1809)という優れたピアニストと結婚する。ベートーヴェンはこのころに完成したばかりのヴァイオリン協奏曲作品61をシュテファンに、そして同作品のピアノ協奏曲編曲版をシュテファン夫人ユーリエに献呈してふたりの結婚を祝福している。しかし、ユーリエは新婚1年も経たずして他界。シュテファンは12年にコンスタンツェ・ルショヴィッツ(1784〜1865)と再婚し、翌年8月には一子ゲルハルト(1813〜92)をもうけている。
——平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)22、23ページより
ベートーヴェンは親友の結婚祝いとしてヴァイオリン協奏曲を、ピアニストである奥さんにはピアノ協奏曲版を贈りました。作品は明るいニ長調で書かれていますし、親友夫婦は喜んでくれたことでしょう。
皆さんは原曲の「ヴァイオリン協奏曲 ニ長調」作品61と「ピアノ協奏曲 ニ長調」作品61aはどちらがお気に入りでしょうか。ぜひ聴き比べて、2種類のソロ楽器の音色を楽しんでみてください。
「ピアノ協奏曲 ニ長調」Op.61a
作曲年代:1807年(ベートーヴェン36歳)
出版:1808年クレメンティ社(ロンドン)
ヴァイオリン協奏曲Op.61の作曲者自身による編曲
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