ゲーテによる3つの歌(ゲザング)——ゲーテが「浄書して送ってほしい」と言った作品
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1800年、30歳になったベートーヴェン。音楽の都ウィーンで着実に大作曲家としての地位を築きます。【作曲家デビュー・傑作の森】では、現代でもお馴染みの名作を連発。作曲家ベートーヴェンの躍進劇に、ご期待ください!
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
ゲーテが「浄書して送ってほしい」と言った作品 ゲーテによる3つの歌(ゲザング)
この時期ベートーヴェンは、ゲーテに近いベッティーナことエリーザベト・ブレンターノ(1785〜1859)という女性に出会っています。ベッティーナの母や妹は、ゲーテと親密な関係にありました。
ゲーテ崇拝者のベッティーナが劇音楽《エグモント》や《ゲーテの詩による「3つのゲザング」》作品83を作曲していたベートーヴェンに接近したことは容易に想像できる。脚色されていたとしてもベートーヴェンと出会い、語らったときの感動について「精神生活の本質である神秘な秘儀をベートーヴェンは自分の芸術の中で実践しています」と語っているが、これは、ベッティーナの偽らざる本心と言えよう。
これに対する返書でゲーテは「いかなる犠牲を払っても彼とお近づきになりたいと願っている」と記し、「私の詩による2つの歌曲を綺麗に浄書して送っていただけると嬉しく思います」と締めくくっている。
ここでゲーテがまだ未出版の「3つの歌曲」と言っていることが、この手紙の信憑性を保証している。3曲のうち《憂の喜び》と《憧れ》は1810年5月までに完成されていたが、《彩られたリボン》は7月から8月に作曲されるもので、6月の手紙の時点ではまだ作曲されていなかったからである。ゲーテはこうした情報をベートーヴェンと直接会ったベッティーナから知らされたと考えてよいだろう。
——平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)117、119ページより
ベッティーナという女性を通して、ベートーヴェンとゲーテの接点が生まれたのですね。この後、1812年にベートーヴェンとゲーテはテープリッツで対面することになります(このころのテープリッツでのエピソードは「ベートーヴェンと1812年失踪事件」で紹介されています)。
ゲーテによる3つの歌(ゲザング)Op.83
作曲年代:1810年春から夏(ベートーヴェン 40歳)
出版:1811年11月
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