「祝典劇《シュテファン王、あるいはハンガリー最初の善政者》」——皇帝の誕生祝いを兼ねた柿落とし公演のための前劇
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1800年、30歳になったベートーヴェン。音楽の都ウィーンで着実に大作曲家としての地位を築きます。【作曲家デビュー・傑作の森】では、現代でもお馴染みの名作を連発。作曲家ベートーヴェンの躍進劇に、ご期待ください!
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
皇帝の誕生祝いを兼ねた柿落とし公演の幕開け「祝典劇《シュテファン王、あるいはハンガリー最初の善政者》」
テープリッツには9月末まで滞在していたようだ。ウィーンに戻ったのち10月9日付でブライトコップフ・ウント・ヘルテル社に送った手紙(BB523)では、旅に出る直前に依頼された劇音楽についても触ており、「馬車でテープリッツに辿り着き、そこでオーフェンからひとつの小荷物を受け取った。ペストに新しい劇場が開設されるということだ……医者からは仕事を禁止されているにもかかわらず、私のことを心から善人と思っている紐ひげを生やした人たち(おそらくオーフェンの人々)のために人肌脱ぐことにしました。柿落が10月1日とかいうことですので、9月13日にはそちらに私の小包(楽譜ひと揃い)を送りました」と述べている。
この手紙の通りであれば、序曲と合唱や行進曲など9曲からなる劇音楽《シュテファン王》作品117と、序曲と二重唱や合唱など8曲からなる劇音楽《アテネの廃墟》作品113の2つの劇音楽は8月10日ころに着手し、9月13日までに完成させたことになる。大変な早書きだ。ところがペストの新国立劇場杮落としは大幅に遅れることになり、年を越えた1812年2月にフランツ皇帝の誕生祝い(12日)を兼ねて、3日前の日曜日、2月9日に行われた。
——平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)123-124ページより
昨日に引き続き、祝典劇のために書かれた作品をご紹介します。《シュテファン王、あるいはハンガリー最初の善政者》作品117は、コッツェブーが書いた3部作のうち、はじめに上演されるフォアシュピール(前劇)にあたります。この劇の序曲で、柿落とし公演の幕が開いたのでしょう。
その柿落とし公演は予定より大幅に遅れてしまったとのことですが、上演の発起人であるフランツ皇帝の誕生祝いを兼ねて開催されることになりました。
「祝典劇《シュテファン王、あるいはハンガリー最初の善政者》」Op.117
作曲年代:1811年8月20日〜9月10日(ベートーヴェン40歳)
初演:1812年2月9日
出版:1826年(序曲のみ)、1864年(全曲)
A. コッツェブー原作の祝典劇
ペストに新設の劇場柿落・開幕劇
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