《声高な嘆き》——きじ鳩の鳴き声で想い出すつらい別れ
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
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東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
きじ鳩の鳴き声で想い出すつらい別れ《声高な嘆き》
J.G.ヘルダーの詩によるこの作品は、1814年あるいは15年の作曲。アンダンテ・ソステヌート、ハ短調、全30小節。
「きじ鳩よ、お前はそんなに声高な嘆きで、この哀れな者の唯一の慰めである眠り、すべてを忘れることのできる甘い眠りを奪ってしまうのか。きじ鳩よ、私もお前と同じように嘆き悲しんでいるのだけど、それを隠しているのだ、この傷ついた心の奥に、閉ざされた胸の中に。ああ、冷たく分け隔てられた愛よ! お前には声高な嘆きをなぐさめとして与え、私には声なき心痛を与えたのだ」
2小節目の第1拍「声高に(laut ラウト)」の言葉が、この曲の最高音(ファ)。この音に、きじ鳩の鳴き声を思わせる装飾音がある。
解説:平野昭
同じヘルダーの詩による《ナイチンゲールの歌》には、その名の通りナイチンゲール(夜鳴きうぐいす)が登場しましたが、こちらはきじ鳩。ヨーロッパに生息するのは、日本のキジバトではなく類縁種のコキジバト。実際の鳴き声も聴いてみましょう。
《声高な嘆き》WoO135
作曲年代:1814/15年(ベートーヴェン44/45歳)
出版:1837年4月
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