歌曲「山からの呼び声」——《フィデリオ》決定稿の台本作家による詩に作曲
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
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東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
《フィデリオ》決定稿の台本作家による詩に作曲 歌曲「山からの呼び声」
《フィデリオ》決定稿の台本作家として知られるフリードリヒ・トライチュケ(1776~1842)の6節の詩に、1816年の暮れに作曲。
やや生き生きと(ドイツ語)、イ長調、8分の3拍子の歌曲。
4小節の前奏のあとに、第1節から第5節までは15小節の有節形式で反復するが、最後の第6節「たしかに、小川と星々は先へ先へと進み、風と小鳥たちは遠くから君のところにやってくる。なのに、僕だけがここに縛り付けられ、泣いている」だけに少し変化したメロディーが付けられている。第5節までの大意は「もし僕が鳥だったら、そして2つの翼をもっていれば、君のところにとんでゆくのに、でも、そんなことはありえない」そして、「もし僕が星だったら」「もし僕が小川だったら」と同じ気持ちを繰り返している。
解説: 平野昭
トライチュケが執筆したベートーヴェン作品といえば、《フィデリオ》決定稿のほかに「トライチュケのジングシュピール《凱旋門》への終曲合唱《成就せり》」や「トライチュケのジングシュピール《良い知らせ》への終曲合唱〈ゲルマーニア〉」もありましたね。
劇作家として活躍したトライチュケですが、今日は少し趣の異なる「もし僕が星だったら」「もし僕が小川だったら」という詩を味わってみてください。
歌曲「山からの呼び声」 WoO147
作曲年代:1816年(ベートーヴェン46歳)
出版:1817年6月
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