「弦楽五重奏のためのフーガ ニ長調」——フーガ形式を五重奏曲で研究!
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
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東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
フーガ形式を五重奏曲で研究!「弦楽五重奏のためのフーガ ニ長調」
この時期に弦楽五重奏のための小品やスケッチが集中的に試みられていた。ひとつは未完に終わった「弦楽五重奏のための前奏曲とフーガ、ニ短調」Hess40であり、もうひとつは2分半程度の小品「弦楽五重奏のためのフーガ、ニ長調」作品137(没後出版)だ。さらにバッハの《平均律クラヴィーア曲集》第1巻の「ロ短調」フーガを弦楽四重奏に編曲している。誰に依頼されたものでも具体的な演奏計画があったわけでもない。1790年代にフーガ書法を研究するために多くのバロック作品を編曲していたときと同じような研究姿勢が見られ、明らかに「フーガ」への新たな関心が窺える。この研究が身を結ぶのは1年後のことになるが、その視野の先にちょうど作曲に着手していたピアノ・ソナタ「変ロ長調」(《ハンマークラヴィーア》)を見据えていたのかもしれない。
——平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)25ページより
ベートーヴェンは、複数の声部で追いかけるように同じ主題を演奏するフーガ形式を学ぶため、この弦楽五重奏作品を書いたようです。既成の作品を編曲することもあったことからも、研究熱心な一面が見えますね。
演奏時間が短くて聴きやすく、弦楽器の音色を存分に楽しむことができる作品です。
「弦楽五重奏のためのフーガ ニ長調」Op.137
作曲年代:1817年11月
出版:1827年秋
編成:2vn. 2va. vc.
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