
米田覚士さん(指揮)ブザンソン国際指揮者コンクール優勝者が仲間と歩む新たな世界

月刊誌『音楽の友』で、若手演奏家を紹介している連載「フレッシュ・アーティスト・ファイル」。当記事は雑誌のインタビューとはひと味ちがう切り口で、20の質問を通して演奏家たちの素顔を紹介していきます。第16回は、昨年のブザンソン国際指揮者コンクール優勝者の米田覚士さんにご登場いただきました。

1941年12月創刊。音楽之友社の看板雑誌「音楽の友」を毎月刊行しています。“音楽の深層を知り、音楽家の本音を聞く”がモットー。今月号のコンテンツはこちらバックナンバ...
1996年生まれ。5歳からピアノをはじめ、その後少年合唱団に在籍、中学生ではジュニアオーケストラで打楽器を担当。音楽コースのある高校に進学後、東京藝術大学指揮科に入学し、高関健に師事。クラシック音楽を軸にポップスやロックなどジャンルの枠を超えた音楽活動を行う。

大好きな玉置浩二さんと共演するのが夢
Q1 好きな食べ物は?
ラーメンです! カップラーメンもふくめて、日本にいるときは365日で400杯くらい食べていると思います(笑)。
Q2 嫌いな食べ物は?
トマト、かぼちゃ、スイカ、メロン、にんじん。野菜が、あまり得意ではないです(苦笑)。スイカとメロンは皮目に近づくほど、苦くなるので苦手ですね。地獄に向かって歩き始めているような感覚がします……。
Q3 自身をどんな性格だと思う?
ポンコツですね(笑)。なんにもしないし、なんにもできないし。基本的に普通です。
Q4 出身地(岡山県岡山市)はどんなところ?
とにかく空気がきれいで、周辺の大きな府・県(大阪、兵庫、広島、香川)の美味しいものがすべて集まっている街です。それぞれの土地の魅力を合わせたようなB級グルメが盛んですね―― お好み焼きにカキを入れた「カキオコ」や、ホルモンうどんなど、ぜひ食べてみてほしいです。
また、桃太郎の伝説でも知られていますが、おかやま桃太郎まつりの「うらじゃ」の歌は、県民なら誰でも歌えるほど親しまれています。
Q5 子供のころからクラシック音楽が好きだった?
クラシック音楽はもちろん好きでしたが、いろいろなジャンルの音楽を聴いていましたね。中学生のときはK-POPにハマって、東方神起が好きでした。あと、歌手の玉置浩二さんが大好きで、いつか共演するのが夢です。
Q6 子供のころの将来の夢は?
大道芸人。小学校3年生のとき少年合唱団の演奏旅行でウィーンやチェコへ行った際、路上でパフォーマンスをする人たちを見て愉しそうだなと思いました。あとはカキの養殖家かトラックの運転手!カキがすごく好きというより、海の上に筏(いかだ)を浮かべて、自分の土地を持つことに憧れがあります。

コンクール優勝の秘訣は温泉にある!?
Q7 好きな作曲家は?
特定の一人を選ぶのは難しいですね。それぞれ「この作曲家のこの作品が好き」「この作曲家のこの瞬間が好き」というのはあるのですが。僕は古典や現代音楽、ポップス、ジャズなど、ジャンルもあまり気にしていなくて、自分を好いてくれる人が好きというか、演奏するからにはその作曲家のよい部分を見つけたいという感覚で、好きとか嫌いとはないのです。ちなみに嫌いな作曲家もいないんですよ。
Q8 いつか演奏してみたい曲は?
マーラー「交響曲第8番《千人の交響曲》」。じつはジュニアオーケストラに入るきっかけの作品です。
小学5年生のとき、少年合唱団として出演したステージでトロンボーンが鳴り響く姿に衝撃を受けました。これをきっかけに僕もオーケストラでトロンボーンを吹きたいと両親に相談したのですが、練習環境や費用の壁があり……。親から「バチ2本なら買ってあげる」といわれたので、読み終えた雑誌を叩きながら練習してジュニアオーケストラに打楽器で入ることにしました。
ちなみに大学の指揮科に進む際は、「とりあえずいったん指揮を習うのに棒1本と楽譜2冊だけでよいので出資してください」と説得しました。その際に人生の“交渉術”を学んだのかもしれません(笑)。
Q9 憧れの演奏、演奏家は?
ゲオルク・ショルティ(指揮)とシカゴ交響楽団によるチャイコフスキーやマーラーの演奏。私では一生かかっても出せないような唯一無二の音色に驚きました。
小澤征爾さんや山田和樹さんのような海外で活躍する指揮者の背中を追いかけつつ、ポップスや映画音楽なども柔軟に取り入れる指揮者になりたいです。若手指揮者の世界も、ピアニスト界のようにもっとフレキシブルであってもいいのかな、と思っています。
Q10 ブザンソン国際指揮者コンクールでとくに思い入れのあった曲は?
選ぶとするなら、本選で演奏したプロコフィエフ「組曲《ロメオとジュリエット》」。
これまでチャイコフスキーの《ロメオとジュリエット》を振る機会が多く、自分のなかでこの題材についてのアイディアを溜めていました。何年かにわたって噛み砕いてきたものと、自分のなかの引き出しがうまくマッチした手ごたえを感じました。

Q11 練習にルーティンはある?
ルーティンはとくにありませんが、ブザンソン国際指揮者コンクールの課題曲を譜読みするときはコワーキングスペース付きの温泉を転々としていました。勉強する場所の景色がいつも同じだとルーティン化して本番で暗譜が不安になってしまいそうだったので、日によって場所を変えることで「あの温泉でこの曲を勉強した」と、記憶を定着させていました。
Q12 音楽や、指揮の勉強を「辛い」と感じたこと、時期はある?
中学生のころは人並みに思春期で毎日辞めようと思っていましたよ。ピアノの練習もあまり好きではなかったし。
いまでもしんどいと思うときはありますが、もう自分には音楽しかないのでやるしかない、と思っています。
仲間といっしょに音楽を創る幸せ
Q13 人生観を変えた言葉は?
浪人時代にお世話になっていたおじいさんの言葉です。
すべては「相手のためにしてあげている」と思うから、見返りがないと苦しくなる。そうではなく、「自分が相手のためになにかをしてあげたい、それをすることが喜びである」と考えていれば、なにも辛くない。
そのかたは、認知症の奥様を介護されていた大変な時期に、この言葉を考えておられたそうです。これをきいて自分のなかのなにかが腑に落ち、ハッとさせられました。
Q14 長期のお休みがあったら、なにをしたい?
船舶の免許とトラックの免許を取りたいです。あとは島に行って、海を眺めてぼーっとしたいです。そこでコミュニティを広げたら、新しいなにかが生まれる気もしますね。
Q15 お気に入りの本は?
三善晃さんの著書『遠方より無へ』(白水社)です。この本で尾高忠明さんと井上道義さんとのエピソードが載っていて、尾高さんのことは「小さいころから知っているお坊ちゃん」、井上さんのことは「僕を車に乗せているのに片手でパンを食べながら、片手で運転している!」とあって、大学生のときから個性が際立っているこのエピソードが強烈で好きです。
Q16 最近感動した舞台は?
ウィーン国立歌劇場で観たオペラです。立ち見席なら手頃な価格で楽しめるので、ウィーンに滞在しているときは頻繁に足を運んでいます。
また、一昨年にかかわらせていただいた浅田真央さんのアイスショーも忘れられません。張り詰めた氷の空気感や、目の前を滑り抜けるスピード感は、テレビで観るのとは肌感覚が違う。そして浅田さんの圧倒的なオーラはとにかくすごい! お人柄のよさがそのまま演技や表情にあふれでていると思いました。
Q17 好きな映画は?
『グランド・イリュージョン』(監督:ルイ・レテリエ)と『プレステージ』(監督:クリストファー・ノーラン)です。
マジックが好きで、マジシャンにまつわる映画はワクワクしますね。
Q18 会ってみたい作曲家は?
ブルックナー。まだブルックナーの交響曲の世界に踏み込めておらず、会って、話して、好きになったら、長大な作品群に親しみを持てそうだなと思って。
Q19 音楽を演奏していて、幸せを感じるのはどんなとき?
仲間とともに、演奏会など物事を進めていくときが幸せです。ピアノを一人で弾いていたときは寂しかったので…… 僕は人と一緒に音楽を創ることが好きなのだと思います。
オーケストラを指揮するうえでは、百戦錬磨の奏者を引っ張るというよりは、みなさんの引き出しのなかからいちばんよい演奏を引き出すための仕事ができればと考えています。
Q20 20年後、どうなっていたい?
このままがよいです。生き急がず、自分のペースで歩んだ先になにかが見えていればいいなと思います。

日時:4月25日(土) 14時・ザ・シンフォニーホール
出演:米田覚士(指揮)、坂本 彩、坂本リサ(以上、p)
曲目:ドヴォルジャーク「序曲《謝肉祭》」op.92、ブライス・デスナー「2台のピアノのための協奏曲」、ブラームス「交響曲第1番」
問合せ:センチュリー・チケットサービス 06-6848-3311
詳細はこちら
日時:4月26日(日) 14時・西新井文化ホール
出演:米田覚士(指揮)、石野真穂(p)
曲目:柴田南雄《追分節考》、J.S.バッハ《主よ、人の望みの喜びを》、瀧 廉太郎《荒城の月》、山田耕筰《曼珠沙華》、久石譲《となりのトトロ》、他
問合せ:ギャラクシティ 03-5242-8161
詳細はこちら
『音楽の友』2025年12月号(11月18日発売)の連載「フレッシュ・アーティスト・ファイル」では、米田覚士さんのインタヴュー記事を掲載。ぜひ併せてご覧ください!
「音楽の友」2025年12月号記事詳細はこちら





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