
「第九」のテンポはどうあるべき? ベートーヴェンの記述や発言から徹底検証!

ベートーヴェンの「交響曲第9番」、通称「第九」。年末に特に聴く機会の多いこの傑作ですが、速かったりゆっくりだったり、演奏によってテンポに開きがあるのも事実……そこで、大井駿さんが自筆譜やベートーヴェンの発言をまとめた会話帳、初演の様子などから検証! 第4楽章の低弦によるレチタティーヴォや最後のプレスティッシモといった気になる箇所をピックアップして、解説します。

1993年生まれ、東京都出身。2022年、第1回ひろしま国際指揮者コンクール優勝。2025年、第21回ハチャトゥリアン国際コンクール指揮部門第2位、古典派交響曲ベスト...
ベートーヴェンの「交響曲第9番」(以下、「第九」)は、文芸界でも頂点に君臨する作品の一つでしょう。フリードリヒ・シラーの詩も、ベートーヴェンの音楽も、聴き手や読み手に語りかけるような内容、かつ恒久的な内容で、これは彼らの思想だけでなく、当時の社会情勢をも反映させています。
世界中で演奏されている「第九」ですが、演奏に関してはさまざまな解釈があります。その中でも特に問題点として挙げられるのが、テンポです。今回は、ベートーヴェンの「第九」におけるテンポにフォーカスを当てたいと思います。
ベートーヴェン以前の音楽におけるテンポ
そこに現れたのが、メトロノームでした。ベートーヴェンは言葉だけでなく、具体的な数字も一緒に書き添えるようになります。これは当時としては画期的なステップでしたが、「第九」に関しては、かえって新しい混乱のタネにもなってしまったのです……。
まず申し上げておきたいのが、ベートーヴェンの指定するメトロノーム記号が速すぎるため、彼のメトロノームが壊れていた、もしくは読み間違えていたのではないか、という説があります。しかし、これはあくまでも一説です。彼のメトロノーム記号は、基本的につじつまが合っているため、メトロノームが壊れていたとはあまり言えないのが実情なのです。突拍子もなく速いもの、または遅いものもありますが、今回の記事では、初演や出版の際の記録、証言を元にその真相を探っていきます。
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