ベルリン・フィルの映像配信をハイレゾ音質で聴く2つの方法
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の映像配信サービス「デジタル・コンサート・ホール」では、過去のアーカイブ映像だけでなく、ライブ配信やドキュメンタリーなどの充実したコンテンツを楽しむことができます。ハイレゾ対応となり、より一層パワーアップしたデジタル・コンサート・ホールを、音質にこだわるガジェット大好き音楽学者の広瀬大介さんがレポート!
青山学院大学教授。日本リヒャルト・シュトラウス協会常務理事・事務局長。iPhone、iPad、MacBookについては、新機種が出るたびに買い換えないと手の震えが止ま...
最新技術を積極的に導入してきた世界最高峰のオーケストラがついに……!
クラシック音楽における録音の世界を、いまも昔も、先頭に立って牽引し続けているのが、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団です。
かつては20世紀を代表する指揮者、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(1886~1954)、ヘルベルト・フォン・カラヤン(1908~1989)がこの楽団に君臨したわけですが、とくにカラヤンはレコード会社とタッグを組み、CDなど録音メディアの開発にも意欲的に関わることで、新しい時代の録音技術を牽引し続けました。
2000年代から新たに音楽産業に参入した音源・映像のオンデマンド配信、さらには定額制サービス(Spotify、Apple Music、Amazon Music HDなど)の普及によって、「モノ」としてのメディアは、配信に取って代わられる時代がやってきました。
ONTOMOでおなじみのSpotifyでも配信中のベルリン・フィル
そんな時代にあっても、ベルリン・フィルが展開する「デジタル・コンサート・ホール」(以下DCH)は、カラヤンの時代とはかたちこそ違えど、最新技術を積極的に導入して世界の最先端を走り続けているという意味で、世界最高峰のオーケストラとしての気概と矜恃を世に示していることに変わりはありません。外出もままならぬ昨今であればなおのこと、自宅でオーケストラの迫力ある音楽を愉しめることの価値は、かつてよりもはるかに高まっていると言えるかもしれません。
そんなDCHが、いよいよハイレゾ音声に対応した! というのが、今回の記事の趣旨です。ハイレゾについては、かつてこちらでもご紹介しておりますので、ご参考まで。難しい説明は省略しますが、要はCDよりも情報の多いファイルを再生することで、より臨場感豊かな音楽が聴けるようになります。
CD音質は44.1kHz/16bitですが、DCHが提供しているハイレゾ音質は96kHz/24bit。数が大きいぶん、多くの情報が詰まっている、とお考え下さい。映像については以前から4Kに対応済で、演奏に没頭する奏者の様子を思う存分楽しめたわけですが、やはり音楽コンテンツはよりゴージャスな音で聴きたいですよね。ハイレゾ音源ならば、ホールの残響がより豊かに感じ取れ、木管楽器の息遣いが繊細に響き、金管楽器のパワーが眼前に迫り、弦楽器の艶やかな音までが眼前に拡がる、そんな体験ができるのです。
DCHは月額視聴契約、ないしは期間限定のチケット(12ヶ月、30日、7日)を購入する必要があります。どんなものか試してみたい、という方は、まずは7日間、9.90ユーロのチケットをお買い求めになられてはいかがでしょうか。
今なら、ハイレゾ音声を7日間無料でお試しできます。下記のリンクより、携帯(モバイル機器)用アプリないしApple TV用のアプリをダウンロードすると、7日間お試しコードが自動的に適用されます。
また、DCH内には、無料コンテンツも用意されています。利用者登録(無料)をすると、楽団員へのインタビューや教育プログラムの映像、首席指揮者キリル・ペトレンコが選んだ演奏会映像集 (無料プレイリスト)などを閲覧することができます。
ハイレゾ音源を愉しむための環境とは?
と、ここまでいろいろと期待を煽ってしまったあとでハシゴを外すようなことは言いたくないのですが、現時点でこのハイレゾ音源を愉しむためには、以下のような設備が必要となります。ここでは、CDを越えるハイレゾの音源を、本領を引き出すかたちで楽しめる方法を、2パターン紹介します。
その1:スマートフォンとポータブルアンプでお手軽に!
AndroidないしはiOSを搭載したスマートフォンかタブレット + DCHアプリ + ハイレゾ音源を取り出すためのポータブルアンプ + 有線ヘッドフォンかイヤフォン
手軽に聴いてみるには、皆さんお手持ちのスマートフォンを使うのがいいのですが、ハイレゾ音源をそのままの音質で愉しめる無線イヤフォンは、現時点ではほとんど存在しません(最近発売されたばかりのソニー WF-1000XM4などは対応しています)。
というわけで、そのハイレゾ音源データをそのままスマートフォンから取り出せるDAC(デジタル・アナログ・コンバータ)付きポータブルアンプを間にはさみ、可能な限りよいイヤフォンで聴く、というのが、現時点では最強の愉しみ方でしょう。筆者が使っているのは以下のような構成です。
iPhone 12 Pro Max + ifi hip-dac + Shure SE846
最近は無線のブルートゥース・イヤフォン、ヘッドフォンが、その音質において有線に肉薄しています。たしかに直接スマートフォンから音を拾うならばその差はわずか、というところまできていますが、やはり間にポータブル・アンプを挟むと、音の迫力が圧倒的に異なることを実感します。ひとことでいえば、音が「強く」なるのです。中身の詰まった濃い音になり、迫力に圧倒されそうになります。
自宅に大きな機械やスピーカーを導入するのはハードルが高いですが、この小さい箱を挟めば、自宅で愉しめるクオリティの音を、外に持ち出すことができます。今回は高級イヤフォンを使っていますが、より安価な有線イヤフォンで比べても、その差は歴然とわかるはず。
その2:Apple TVやAVアンプで挑戦!
Apple TV + DCHアプリ + AVアンプとスピーカー + テレビ
もちろん、自宅のAVシステムで鑑賞することも可能です。最近の大画面テレビでは、インターネット経由の動画サイトを直接観られるようにもなっています。テレビ自体にDCHアプリがはじめからインストールされていることもありますが、ここではハイレゾで聴く、ということにこだわるため、この原稿を執筆している現時点でハイレゾ再生に対応しているApple TVを利用したいと思います(今後アプリのアップデートでハイレゾに対応する機種も増えていくと思いますが)。
Apple TV 4Kは32GB21,800円(税込)、64GB23,800円(税込)。
Apple TVは、映像関連のアプリをインストールして、AVアンプを経由して自宅のテレビにつなぎ、映画や音楽ソフトを愉しめる端末です(AVアンプを経由しなくても使えますが、その場合はテレビのスピーカーからの音声出力になります)。もちろんApple製品との親和性は高く、付属のリモコンだけでなく、iPhoneなどでも操作可能。MacやiPadで観た映像の記録が同期されるので、その続きをApple TVから観ることも(その逆も)可能です。
というわけで、DCHアプリには、きちんとハイレゾで観るための設定項目が選べるようになっており、AVアンプ経由でバッチリ鳴らすことができました。サラウンドにも対応しているので、これはかなりホールでの聴体験に近い感覚が味わえます。音楽が立体的になり、とくに弱音でのリアルな質感が格段に向上しました。すでに自宅で映画を愉しむ環境を整えていらっしゃる方は、断然お薦めです。
コロナ禍で一期一会の音楽を味わう
コロナ禍で常日頃の演奏活動に制限がかかっているのは、ベルリン・フィルといえども例外ではありません。それでも、このような最新の技術によって多くのひとに演奏を届けることができることは喜ばしく、いまという時代の貴重なドキュメントとして、後世にも大きな価値をもつものとなるでしょう。
なかでも、2021年3月に、首席指揮者キリル・ペトレンコと演奏されたラフマニノフの「交響曲第2番」は、一期一会の音楽を真剣に味わい尽くそうという指揮者、楽団員、そして聴き手の気迫がぶつかり合う、稀有な演奏会となりました。
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