音楽視点でおすすめしたいダンサー2022〈後編〉
音・音楽としばしば密接な関係を結ぶ芸術、ダンス。
さまざまな舞踊作品を観てきた高橋彩子さんが、2022年後半に音楽面から注目するおすすめダンサー、動画を交えてご案内!
早稲田大学大学院文学研究科(演劇学 舞踊)修士課程修了。現代劇、伝統芸能、バレエ、ダンス、ミュージカル、オペラなどを中心に執筆。『The Japan Times』『E...
島地保武&酒井はな
Noism、フォーサイス・カンパニーで踊った島地保武。高身長を生かしたシャープでダイナミックな動き、どこか飄々とした佇まい、さらには低音ヴォイスも魅力で、舞台で歌ったことも! 振付も精力的に手掛け、7月の井上バレエ団公演「The Attachments」ではラヴェル、ハイドンからニルヴァーナまで用いて幅の広さを見せた。
その島地とAltneu(アルトノイ)というユニットを作って活動しているのが、新国立劇場開場以来、長きにわたって主役を踊り、劇団四季『コンタクト』、『アンデルセン』にもゲスト出演するなど、舞台の第一線にい続けている酒井はな。その力強く的確な踊りと比類ない存在感で、近年はさまざまなコンテンポラリー・ダンスを踊っている。
この二人、10月頭には上田と松本で、芥川龍之介の小説が原作の新作『杜子春』を上演。音楽は熊地勇太の描き下ろしで、テルミンの演奏やダンサーの歌唱もあるとのことで大いに気になる。
山田うん
その意欲的な創作において、音楽家との協働も多い山田うん。今年1月のCo.山田うん公演「ストラヴィンスキープログラム」では高橋悠治、青柳いづみことコラボし、山田自身もソロとして『春の祭典』を踊った。
そんな山田の次回作は『In C』。テリー・ライリーのオリジナルスコアをもとにヲノサトルが演奏する「In C」と、ヲノがどのコードを何回演奏するのかなどを決めて演奏する「In C」の2つが演奏されるという。強い強度を持つ山田のダンスと音楽の妙に期待。
鈴木ユキオ&安次嶺菜緒
舞踏から踊りの世界に入り、自身の創作活動を精力的に展開する鈴木ユキオ。身体をどこまでも探求し、ある瞬間にはドラスティックに爆発するダンスは唯一無二。作品毎にさまざまなチャレンジをしており、最近作『刻の花』では鈴木自身の周りにある自然の音を取り入れ、動きや映像に合わせてライブでリミックスして上演した。
新作『Sign – 気配 -』では「何かが起こる予兆 0から1になるまで」がキャッチコピーに。聴覚的には、身体も一つの音と捉え、身体の主旋律に音が重なることで音楽が完成するような作品になるという。
また、鈴木のパートナーであり、そのダンスの中心的なメンバーである安次嶺奈緒は、鈴木ともまた違うシャープさと凄みを感じさせる優れた踊り手だ。
黒田育世
テーマをとことん追求し、敢然と(と言いたくなる強さで)作品化する、BATIK主宰・黒田育世。強さの中にある種の詩情があるのも特長だ。パートナーでもある音楽家・松本ジロとのコラボレーションでも充実の成果を上げている。
そんなBATIKも今年で20周年。今春には黒田自身が初演した2作をほかの踊り手が踊る「再演譚」を上演し、その1作としてストラヴィンスキー『春の祭典』を世に問い直した。
この秋には近藤良平とのデュオ、『私の恋人』を再演。近藤の生演奏のほか、サラ・ボーン、夏木マリ、ジャニス・ジョプリンなどと共に踊る。
金森穣&井関佐和子
モーリス・ベジャールとイリ・キリアンという、20世紀を代表する振付家二人の薫陶を受け、ヨーロッパで培った感覚と日本的な感覚を独自のメソッドに昇華して、Noism Company Niigataを率いる振付家・金森穣。「サイトウ・キネン・フェスティバル松本2011」ではオペラ《青ひげ公の城》とバレエ『中国の不思議な役人』を演出・振付し、サラダ音楽祭には2020年から3年連続で登場するなど、音楽ファンにもおなじみの存在だろう。今年7月には原田敬子の新曲に振り付けた『鬼』でNoismと鼓童が初タッグを組んだ。一頃はダンサーとしての活動から離れていたが、近年再び舞台に立ち、躍動感ある踊りを見せている。
そのNoismの代表的ダンサーが井関佐和子。しなやかで雄弁なその踊りは観る者を惹きつけて離さない。金森が芸術総監督、井関が国際活動部門芸術監督に就任して臨む新シーズンでは、シューベルトの歌曲に振り付ける新作『Der Wanderer ―さすらい人』を予定している。
新潟公演 2023年1月20日(金)~2月4日(土)全11回公演
会場: りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館〈スタジオB〉
東京公演 2023年2月24日(金)~2月26日(日)全3回公演
会場: 世田谷パブリックシアター
詳しくはこちらから
湯浅永麻
ネザーランド・ダンス・シアターⅠで活動後、シディ・ラルビ・シェルカウイ率いるEASTMANに籍を起きつつ、国内外でさまざまな活動を展開する湯浅永麻。その踊りは強さと柔らかさを備え、鋭い感性と聡明さを映し出す。
10月に出演する森山未來×中野信子×エラ・ホチルド『FORMULA』では、原摩利彦が音楽を手掛ける中、独特のコンセプチャルな世界の中で存在感を発揮しそうだ。
中川絢音
日本舞踊、バレエ、ストリート・ダンスなど、さまざまなジャンルの踊りを経験し、独自のダンス・スタイルを持つ、「水中めがね∞」主宰の中川絢音。伝統を意識した身体感覚や世界観は日本のダンス界で異彩を放つ。
日本舞踊家の藤間涼太朗、花柳寿紗保美と中川が邦楽で踊った『しき』は日舞の身体によるコンテンポラリーダンスと呼ぶべき意欲作だった。また、何度も再演を重ね、先ごろイタリアでも上演した『my choice, my body,』は、TAEILの楽曲と共に劇的に展開する作品。
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