155年前の今日、ワーグナーの楽劇《トリスタンとイゾルデ》初演!
1865年6月10日、リヒャルト・ワーグナーの楽劇《トリスタンとイゾルデ》がミュンヘンで初演されました。ミュンヘン国立宮廷劇場で、指揮はハンス・フォン・ビューローが担当しました。
ワーグナーの代表作のひとつであり、古典和声の崩壊一歩手前とも言われる冒頭など、音楽史的にも非常に重要な作品です。
ドイツ語による台本は、中世ヨーロッパに広く伝わる「トリスタン伝説」をベースにワーグナー本人が手がけました。マルケ王に嫁ぐためやってきたイゾルデと、マルケ王の甥トリスタンとの、この世では結ばれぬ悲恋、愛をえがいています。
この楽劇の外面的展開はすこぶるかんたんである。登場人物もごく少数であり、舞台装置もできるだけ単純で済まされる。1幕内の人物の動きもはなはだ少ない。これは外面的事件の劇ではなく、ひたすら主人公2人の恋愛の内面の世界をえがく劇だからである。その詩の大部分は愛の言葉であり、音楽の大部分もまた愛欲の感情そのものの表現にほかならない。
『作曲家別名曲解説ライブラリー ワーグナー』(音楽之友社)61ページより
また、ワーグナーはこの《トリスタンとイゾルデ》以降の作品は、「オペラ」ではなく「楽劇」と呼ばれます。
《ローエングリン》をワーグナーはみずから「ロマン的オペラ」と名づけたが、その後彼は「もはや私はオペラを書かない」と宣言し、かくして生まれたのが《トリスタン》なのである。《トリスタン》を彼は「3幕からなる劇 Handlung in 3 Akten」と呼んだが、これはギリシア語のドラマの直訳で、詩によって音楽が統一されることを意味する。
『作曲家別名曲解説ライブラリー ワーグナー』(音楽之友社)62ページより
ワーグナー自身にとっても、区切りとなった記念碑的な作品。初演記念の日に聴いてみてはいかがでしょうか。
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