読みもの
2025.06.11

「気分が上がる、わたしの推し曲」アンケート結果発表!元気になれるクラシック音楽の名曲は?

クラシック音楽には、静かに心を癒す力もあれば、そっと背中を押してくれるような力もあります。Webマガジン「ONTOMO」読者を対象に、2025年5月に実施したアンケート「気分が上がる、わたしの推し曲」には、そんな音楽との出会いの記憶や、音楽に支えられた日々のエピソードが数多く寄せられました。
アンケート結果を発表し、その中から、とくに印象的だった声をご紹介します。

ONTOMO編集部
ONTOMO編集部

東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

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優しさと力強さを秘めたピアノの音色

今回のアンケートの回答を通じて浮かび上がってきたのは、「ピアノ曲」の人気の高さでした。なかでも多くの支持を集めたのが、ショパンシューマンの作品です。

・「作品に物語性がある」
・「優しい旋律が心をあたたかくさせてくれる」
・「穏やかな気持ちになって、自然と前向きな気持ちになれる」
・「こんなにも美しい音楽に出会えて幸せいっぱいの気持ちになる」
・「絶望のなかにも一筋の光が見え、最後には前向きに頑張って行こうと思わせてくれる」

という声とともに挙がった曲は、

ショパン:ポロネーズ第6番《英雄》(英雄ポロネーズ)
・シューマン/リスト: 献呈
・シューマン:ピアノ協奏曲イ短調 Op.54
シューベルト:ピアノ・ソナタ21番
リスト:ラ・カンパネッラ
・グリュンフェルト:ウィーンの夜会 ヨハン・シュトラウスのワルツ主題による演奏会用パラフレーズ Op.56
など

静かに寄り添うような曲も、晴れやかに背中を押してくれるような曲も、聴く人に“元気をくれる”という点では通じ合っていると言えるでしょう。

「元気になる曲」を知ったきっかけとは?

“元気になれる推し曲”とは、どこで、どのように出会ったのでしょうか。

アンケートの結果、もっとも多かったのは「コンサート・リサイタルで聴いて」(約42%)という回答でした。

生演奏の場で心を動かされた経験が、曲への特別な思いを生み出しているようです。

次に多かったのは、「動画メディア(YouTubeやTikTokなど)で聴いて」(約28%)。画面越しとはいえ、演奏者の表情や呼吸まで感じられる動画は、聴く人の記憶に強く残るのでしょう。

一方で、「CDで聴いて」(約7%)、「ストリーミングサービスで聴いて」(約5%)、「テレビ・映画・CMで聴いて」(約4%)、「SNSで聴いて」(約4%)といったメディアを通じたきっかけは、比較的少数派でした。

これらの傾向からは、“音源”として聴くよりも、誰かが演奏している姿と一緒に出会う音楽が、心に残りやすいということがうかがえます。

“推し曲”は、演奏家との出会いから始まった

演奏者の存在も、“推し曲”を選ぶうえで大きな影響を持っています。とくに名前が多く挙がったのがピアニスト・牛田智大さん。牛田さんの演奏に触れたことで曲の魅力に気づいたという声が目立ちます。

・「リサイタルで初めて聴いたときに心奪われて、それから何度もこの作品を聴きに行きました」
・「牛田さんの演奏はffが鋭利ではなく温かみがあり、ppが弱いのではなく芯がある音色を出されるのでパワーをもらえます」
・「配信で聴いた牛田さんの演奏で、不安だった心が温かくなりました」
・「生活の中で自信をなくした時、全身全霊でピアノに向かう姿、やり遂げた表情、曲の大団円感に元気と勇気が湧きました」
・「この曲の生演奏を聞かせていただいた時、涙が溢れましたがその先の光を感じて希望が湧いてきたのを覚えています」

こうした声からは、クラシック音楽が「一人の演奏者を通じて、より深く届くもの」だということが改めて伝わってきます。

日常の中にある“クラシック音楽の力”

アンケートでは、「“元気になる推し曲”をどんな場面で聴きたくなるか」についても質問しました。もっとも多かったのは、「気分転換したいとき」(約35%)

リフレッシュしたいとき、ひと息つきたいときに、そっと音楽を流す。そんな習慣が、日常の中に根づいているようです。

次に多かったのは、「落ち込んだとき」(約30%)という回答。

沈んだ気持ちを引き上げてくれるのは、言葉ではなく“音”の力だという実感が伝わってきます。

そのほかにも
「家事をしているとき」(約9%)
「仕事や勉強中」「朝起きたとき」「癒されたいとき」(いずれも約4%)
といった、日々の生活と結びついた使われ方が見られました。

また、「その他」(約9%)には、「寝る前に」「何かはじめるとき」「気持ちを切り替えたいとき」など、多彩なタイミングが寄せられました。

なかにはこんなエピソードも。

・「医療関係の仕事をしています。担当していた患者さんがコロナ禍の中で亡くなったとき、この曲に救われました」
・「コロナ禍の配信で、世界が止まったような感覚があったけれど、この曲で“世界とつながっている”と感じられました」
・「通勤ラッシュでも、運転中でもイライラせず精神が安定します。今日も頑張ろうと思えます」
「ちょっと落ち込む日の終わりに聴いたら、一気に浄化されて翌日には持ち越さないでいられる」
「仕事がマンネリ化してきた時に、この曲を聴いて、音楽の素晴らしさを伝えるために頑張ろう!と思えました」

気分が沈んだときに前を向かせてくれたり、ちょっと疲れたときに深呼吸させてくれたり、推し曲は、日々の気持ちのバランスを整えてくれる“心の定位置”なのかもしれません。

推し作曲家&推し演奏家TOP3は?

今回のアンケートの回答の中で、とくに多くの票を集めた作曲家が、ショパン、シューマン、シューベルトです。

一方、演奏者に関しては、圧倒的な人気を集めたのがピアニスト・牛田智大さんです。回答の中には「この演奏で曲の魅力に目覚めた」、「リサイタルで涙が出るほど感動した」という声も多く、演奏そのものが、聴き手にとって曲の“印象”を決定づけていることがよくわかります。

また、ピアニスト・石井琢磨さん弦楽アンサンブル・石田組も上位にランクイン。演奏スタイルや活動の場はそれぞれ異なりますが、「この人の音で聴きたい」と思わせてくれる存在が、“推し曲”をより特別なものにしているのかもしれません。

誰かの推し曲が、あなたの“元気”になるかもしれない

今回寄せられた言葉のひとつひとつに、クラシック音楽が人生のなかでどれだけ豊かな役割を果たしているか伝わってきました。「音楽がそっと心に寄り添ってくれる瞬間」を、読者のみなさんがそれぞれに大切にされていることが印象的でした。

今、あなたにとっての“気分が上がる曲”は何でしょうか。 もしすぐに思い浮かばなくても、誰かの“推し曲”をきっかけに、新しい出会いがあるかもしれません。

アンケートの回答者について

今回のアンケートには、10代から70代以上まで、幅広い年齢層のONTOMO読者が参加してくださいました。

なかでも回答が多かったのは、40代(約26%)、50代(約28%)、60代(約36%)で、この3つの年齢層で全体の9割にのぼります。

また、性別では女性が約9割を占めています。

アンケートにご協力いただいたみなさま、ありがとうございました。

ONTOMO編集部
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