ティンパニ:起源は紀元前2000年! 軍楽隊からオーケストラで活躍するまでの経緯は?
1993年生まれ、東京都出身。2022年、第1回ひろしま国際指揮者コンクール(旧:次世代指揮者コンクール)優勝。パリ地方音楽院ピアノ科、ミュンヘン国立音楽演劇大学古楽...
オーケストラの楽器でもっとも重要な打楽器と言っても過言ではない、ティンパニ。簡単に言ってみれば、大きなお椀型をした太鼓です。日本の大太鼓のように皮が張られており、バチ(マレット)を使ってそれを叩きます。この記事では、そんなティンパニについてご紹介します!
まず、ティンパニの起源を辿ってみましょう。現在では、ヨーロッパの音楽で大活躍の楽器ですが、もともとは紀元前2000年には演奏されていたリリスという、メソポタミア文明の楽器なのです。このリリスという楽器は、お椀のような形をしたものに、牛の皮を張ったものでした。
さらに中世になると、アラビアではナッカーラという楽器に発展します。トルコなど、アラビアの軍隊で演奏する際に使用する打楽器として作られました。
このように、アラビアでの歴史が長いティンパニですが、15世紀になり、やっとヨーロッパで用いられるようになりました。しかし、ヨーロッパでも、ティンパニは軍楽の中で演奏されました。
その際、ラテン語で打楽器を指すtympanumという言葉が使われ、それがイタリア語化した際にティンパニ(timpani)と呼ばれるようになりました。
ドイツ語ではパオケ(Pauke)と呼ばれ、中世で話されていた古いドイツ語(中高ドイツ語)のPūkeからきているのですが、なんとこの言葉は太鼓を叩いたときの擬音語からきているそうです(諸説あり)。
ヨーロッパに流入し、アンサンブルやオーケストラの中で使われるようになったティンパニ。しかし、アラビアでもともと用いられていたように、軍楽隊や、音楽作品の中でも、軍楽のような部分でよく用いられいました。
さて、軍楽で活躍していた、歴史の古いもう一つの楽器といえば……トランペットですね。こうした背景もありオーケストラでは、トランペットとティンパニが同じタイミングで演奏することが多いのです。
しかし、どうやら初演でティンパニを担当した人は、強弱記号のfp(=フォルテピアノ。「最初に強く弾いたら、すぐに弱くしてね」という指示)を見落としており、永遠とf(フォルテ)で叩き続けていたそう。きっと当時の演奏者は、ここぞ見せ場だと思い、「よっしゃあ出番だ! やったれ!」という気分で840回叩いたのでしょうか……ほかの楽器の音や合唱をかき消すほどの音量だったそうで、初演は大失敗しました。
このような逸話もあるくらい、良くも悪くも、ティンパニはオーケストラの演奏の行く手を握っている楽器なのです!
ティンパニを聴いてみよう
1. トルコ軍楽:メフテル「ジェッディン・デデン(祖先も祖父も)」
2. J.S.バッハ:カンタータ第214番《ティンパニよ、轟け! トランペットよ、響け!》〜第1曲 合唱
3. J.S.バッハ:管弦楽組曲第3番 ニ長調BWV1068〜ガヴォット
4. ドゥルシェツキ:オーボエと8つのティンパニのための協奏曲〜第3楽章
5. ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱付き》 ニ短調 作品125〜第2楽章
6. ブラームス:《ドイツ・レクイエム》作品45〜第3楽章「主よ、知らしめたまえ」
7. バルトーク:2台のピアノと打楽器のためのソナタ〜第3楽章
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly