ポリフォニー:語源はギリシャ語で「たくさんの音」。でも、ただの和音ではない!
楽譜でよく見かけたり耳にしたりするけど、どんな意味だっけ? そんな楽語を語源や歴史からわかりやすく解説します! 第82回は「ポリフォニー」。
1993年生まれ、東京都出身。2022年、第1回ひろしま国際指揮者コンクール(旧:次世代指揮者コンクール)優勝。パリ地方音楽院ピアノ科、ミュンヘン国立音楽演劇大学古楽...
先ほど、なぜピアノや吹奏楽(もしくはオーケストラ)という例を出したかと言いますと、どちらも複数の声部を同時に出せるという特徴があるため、それらのために書かれた作品は、複数のメロディが同時に存在することがあります。ほかの楽器ですと、例えば、トランペットなどの管楽器は、1人で吹いていると複数のメロディは一緒に吹けませんよね?
さて、この例と、ポリフォニーという言葉の関連を見ていきましょう。まず、ポリフォニーという言葉は、「ポリ」と「フォニー」に分けることができます。
なかでも、「フォニー」の部分は、シンフォニーの「フォニー」と同じ語源で、ギリシア語で「音」を表すフォーネー(φωνή/phōnē)に由来します。そして「ポリ」もギリシア語由来の言葉で、「たくさんの」という意味を持つポルス(πολύς / polús)が元となっています。すなわちこの2つを組み合わせると、たくさんの音という意味になります。
これが転じて、複数のメロディを同時に演奏する形態の、多声音楽(複数の声部に分かれている音楽)を指します。なので、ピアノもポリフォニーを演奏できますし、オーケストラ、吹奏楽、室内楽など、一度にたくさんの音やメロディが演奏できる楽器や編成では、この多声音楽を演奏することができるのです。
ここで重要なのは、ポリフォニーというのはただの和音ではなく、それぞれの声部がメロディでなければなりません(ハーモニーを付け足すような形は、ポリフォニーではなく、ホモフォニーと呼ばれています!)。
では、例を挙げてみましょう! せっかくなので、馴染みのあるバッハの作品を挙げていきます。例えば、フーガは、ポリフォニーに入ります。
そして、カノンも、ポリフォニーに分類されます。
ポリフォニーの対義語として、モノフォニーという言葉も存在し、一つの声部しか持たない、単旋律の音楽のことを指します。
音楽の歴史をうんと遡ると、もともとはメロディだけの音楽が主流でした。しかし、音楽が多様化していき、一つのメロディをほかの人が違うタイミングで歌い始めたり、別の動きのメロディを重ねたりすることで、ポリフォニーが誕生しました。と言っても、ポリフォニーの歴史は、起源がわからないほど古いのですが……ここではすべて書ききれないのでまた別の機会にご紹介することとしましょう!
ですが、旋律楽器のなかでも、ポリフォニック(ポリフォニーの形容詞)な音楽を演奏することができます!
それぞれがメロディを演奏し、横の流れを持つ音楽であるポリフォニーですが、ハーモニー(音楽を縦で割ったときに、鳴っている音を考えること)が発達したことで、18世紀半ばに入ってから、ポリフォニーの音楽はあまり作曲されなくなっていきました。
ですが、ポリフォニーの音楽を作曲する際には特殊な技術が必要なことから、18世紀以降は、本腰を入れて書かれる作品に多く用いられるようになりました。
ポリフォニーを聴いてみよう
1. ペロティヌス:《アレルヤ、マリアのほまれある御誕生》
2. J.S. バッハ:《フーガの技法》BWV1080〜第1番
3. J.S. バッハ:《ゴルドベルク変奏曲》BWV988〜第3変奏(1度の音程のカノン)
4. J.S. バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第2番 BWV1003〜フーガ
5. ハイドン:交響曲第70番〜第4楽章 (二重対位法を用いた3つの主題をもつフーガ)
6. ラフマニノフ:《徹夜祷》作品37〜第7曲「いと高きには光栄」
7. ペルト:《カントゥス 〜ベンジャミン・ブリテンの思い出に〜》
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