北欧とケルト、暮らしと音楽 Vol.3

アイリッシュ・トラッドの魅力が詰まったバンド「アルタン」の音楽と、アイルランドの肉じゃがで幸せに包まれる。

イベント
2018.11.12

肉じゃがのルーツはアイリッシュ・シチュー?
誰でも簡単に作れるシンプルな煮込み料理を、アイリッシュ・トラッドのバンド「アルタン」を聴きながら味わったなら。忙しい日常に束の間のほっこりタイム。これから寒くなる季節、アイルランド風に暮らしを彩ってみませんか?
12月8日に迫る「ケルティック・クリスマス2018」(すみだトリフォニー大ホール)にも登場するアルタンに注目!

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メインビジュアル:石田昌隆
ナビゲーター
野崎洋子 音楽プロデューサー
野崎洋子
ナビゲーター
野崎洋子 音楽プロデューサー
1966年千葉県生まれ。日本大学文理学部出身。 メーカー勤務を経て96年よりケルト圏や北欧の伝統音楽を紹介する個人事務所THE MUSIC PLANTを設立。 コンサ...

肉じゃがのルーツはアイリッシュ・シチュー? 誰でも簡単に作れます

アイルランドにおいて家庭の数ほどレシピが存在しているといわれるアイリッシュ・シチューは、ラム肉に玉ねぎ、にんじん、セロリ、じゃがいもを入れてパセリとローリエ、タイムでひたすら煮込むシンプルな料理だが、誰にでも作れて失敗がなく簡単なので、筆者もよく家で作っている。汁物というよりは煮込み料理に近く、具が山盛りでスープはお皿の底に少しというのが本場のスタイルだ。そして、なんと最近知ったことなのだが、このアイリッシュ・シチューが実は和食の代表格、肉じゃがのルーツなのだという。

諸説あるが、肉じゃがのルーツは、明治時代に英国海軍の船の中で提供されていたシチューに感激した東郷平八郎が、帰国後、自分の料理長に真似して作らせたのが始まりらしい。これが広く一般家庭に定着したのは70年代に入ってからだそうだから、実は日本における肉じゃがの歴史は驚くほど短い。そして、アイルランド料理研究家の松井ゆみ子氏によれば、日本の肉じゃがもルウを入れて煮込むなどの手間がないため、この英国船に乗っていたシェフは実はアイリッシュだったのではないか、という説が浮上しているというのだ。

確かにアイルランドでは英国と違ってシチューはルウでは煮込まず、塩と胡椒だけの「クリアスープ・スタイル」が中心。とはいえ、繰り返しになるがアイリッシュ・シチューは、アイルランドでは家庭の数ほどレシピが存在しているため、今やアイルランドでも市販のルウを入れて作る家庭も多いという。

アイリッシュシチュー、筆者作(筆者撮影)
ソーダブレッドというパンにバターをたっぷり載せていただくのがアイルランド・スタイル。パンも筆者が焼いたもの(筆者撮影)

「アイルランドのような田舎へ行こう」(『汽車に乗って』という合唱曲の歌詞の一節)ではないけれど、アイルランドには行ったことがなくても、かの国に筆者がなんとなく感じる多幸感は、確かに肉じゃがのあのほっこりした温かさによく似ている。
そんなふうに、私たちは行ったことのない国に一方的な憧れを抱き、思いを馳せる。そんなことで1ミリだってこの世の中は動かないけれど、それが私たちを日々の喧噪や憂さから救ってくれている。この大変な世の中を少しだけ良い場所にしているのは、そういう人間の自由な想像力なのだ。

アイルランドの料理を作ってみたくなったら。

『家庭で作れるアイルランド料理』
松井ゆみ子・著
大型本: 96ページ
出版社: 河出書房新社(2013/1/17)

アイルランドの大地へトリップさせてくれる、アイリッシュ・トラッドのバンド「アルタン」

そんな私たちのアイルランドへの一方的な思い込みにも似た気持ちをがっつり受け止めてくれる音楽グループがあるとしたら、それはアルタンに他ならない。

アルタンは80年代後半から活動をスタートしたグループで、もともとはマレード・ニ・ウィニー(フィドル、ヴォーカル)とフランキー・ケネディ(フルート)の夫婦によって結成されたデュオだった。(※フィドルは民族楽器で演奏されるヴァイオリンのことを指す。構造的にはまったく同じ楽器)
アイルランドの北の奥地ドニゴール地方の豊かな音楽を世界に伝えるべく、2人はバンド活動を開始した。思わず踊りだしたくなるような楽しいダンス・チューン、心に沁み入るようなヴォーカル曲。アルタンの音楽には、この国の優しさとか寛大さ、まっすぐな正義感、古代ケルト民族への思いなど、私たちがアイルランドに期待するすべてが詰まっている。

残念ながらフランキーは癌のため若くして亡くなったが、マレードはその後もバンドを牽引し、10枚以上のアルバムをリリース。アルタンは名実ともにアイリッシュ・トラッドの最高峰となった。

その彼らが新作『ザ・ギャップ・オブ・ドリームス』とともに、12月にすっかり恒例となったケルト音楽の祭典「ケルティック・クリスマス」のために来日する。また2日に練馬で行なわれる単独公演では、「出張ケルト市」と題してアイルランドの紅茶やお菓子、書籍や雑貨などの販売が行なわれ、前述の松井ゆみ子さんもこのときは帰国して、料理本を販売する予定なので、肉じゃがとアイリッシュ・シチューについて詳しく話を聞きたい人も、ぜひご来場ください。

アイルランドの北の奥地、ドニゴール地方。アルタンの故郷でもある(写真提供:アイルランド政府観光庁)
写真提供:アイルランド政府観光庁
写真提供:アイルランド政府観光庁
アルタン来日公演2018

12/1(土)静岡 グランシップ 交流ホール
12/2(日)練馬文化センター
12/4(火)CAY(青山)
12/5(水)あいおいニッセイ同和損保 ザ・フェニックスホール(大阪)
12/7(金)山形県郷土館「文翔館」
12/8(土)すみだトリフォニーホール「ケルティック・クリスマス」
12/9(日)穂の国とよはし芸術劇場PLAT

http://www.plankton.co.jp/altan/index.html

Altan アルタン

ケルティック・クリスマス2018

日時: 2018年12月8日(土)
会場: すみだトリフォニーホール 大ホール

出演:
アルタン
カトリオーナ・マッケイ&クリス・スタウト
ザ・イースト・ポインターズ
ステファニー・カドマン

お問い合わせ:
プランクトン tel. 03-3498-2881
http://www.plankton.co.jp/altan/index.html

ケルティック・クリスマス2018

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