イベント
2022.11.08
2022年12⽉8⽇(⽊)、9日(金)東京オペラシティでハイドン&ベートーヴェンの2夜

P.ヤルヴィ&ドイツ・カンマーフィル “交響曲の飛躍”を現代最上の名演で聴く

“黄金のコンビ”が、東京オペラシティに帰って来る――。アグレッシヴなプレーと新鮮なサウンド創りで、来日を重ねる度に強烈な印象を残してゆくドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団。芸術監督のパーヴォ・ヤルヴィに率いられて、12月に4年ぶりとなる来日を果たす。近年とりわけ力を注いでいるハイドン、常にレパートリーの核に据えているベートーヴェンと、2夜にわたって交響曲の佳品を披露。しかも、今回のアジア・ツアーでの日本国内での公演は、この2つのステージのみとなる。

寺西 肇
寺西 肇 音楽ジャーナリスト

1965年、神戸市生まれ。産経新聞文化部記者を経て、音楽ジャーナリストとして、『音楽の友』『レコード芸術』ほか各誌への寄稿や、数多くのCD解説を手掛ける。音楽全般を故...

この記事をシェアする
Twiter
Facebook
続きを読む

自主・独立の姿勢がステージ上での積極性や音楽づくりに色濃く反映

1980年に若い音楽家有志たちにより、フランクフルトで設立(1992年からの拠点はブレーメン)されて以来、歴代の首席指揮者や芸術監督の任命も含めて、運営方針はすべてメンバーの総意に基づいて決められるドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団(Die Deutsche Kammerphilharmonie Bremen=以下、DKBと表記)。

音楽的にも、経済的にも、常に自主・独立を保つ姿勢は、トップの席に座る奏者のみならず、メンバー全員が“アインザッツ”を出しているかのような、ステージ上での積極性にもよく表れている。その姿勢はまた、音楽づくり自体にも色濃く反映。一丸となってひとつの方向へ向かうトゥッティの爽快さの一方で、各楽器のソロに滲む個々の奏者の創意が、サウンドへ限りない滋味をもたらす。

ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団 :世界屈指の室内オーケストラであり、そのユニークな⾳楽創りで世界中の聴衆を魅了している。2004年に芸術監督となったパーヴォ・ヤルヴィとの数あるコラボレーションの中でも、特に注⽬すべき活動として「ベートーヴェン・プロジェクト」が挙げられる。世界各地でのベートーヴェン全曲演奏会は称賛の嵐を巻き起こし、CDでヤルヴィは2010年のエコー・クラシック年間最優秀指揮者賞を受賞。その後もシューマン、ブラームスに取り組んでおり、その録⾳は数々の賞に輝いている。

超人気指揮者パーヴォ・ヤルヴィが18年にわたりコラボレーション

そんな精鋭集団のシェフを18年にわたって務めているのが、超人気指揮者のパーヴォ・ヤルヴィ。現任のチューリヒ・トーンハレ管弦楽団の首席指揮者だけでなく、これまでもhr交響楽団やパリ管弦楽団、NHK交響楽団などのシェフを兼任する“売れっ子”の立場にありながら、変わらずDKBとのコラボレーションを続けてきた。

特に古典派のレパートリーにおいては、金管やティンパニにピリオド楽器を用いた“ハイブリッド”の編成で臨み、HIP(Historically Informed Practice=歴史的情報に基づいた演奏実践)に拠る透明感あふれるサウンドを基本に、さらに、DKBならではの自主性を決して妨げることなく、むしろ十二分に生かすことによって、快演を次々と生み出してきた。

パーヴォ・ヤルヴィ(芸術監督/指揮):2004年よりドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団の芸術監督。常に上を⽬指そうという強い意志で結ばれた両者は、エネルギッシュでありながらニュアンスに富んだ演奏で世界中の聴衆の⼼をつかんでいる。これまでにヨーロッパはもちろん、⽇本・中国・韓国・⽶国のツアーを⾏なったほか、ザルツブルク⾳楽祭、BBCプロムスなどに出演している。また、2015年よりNHK交響楽団⾸席指揮者を務め、現在は名誉指揮者。2019年シーズンより、チューリヒ・トーンハレ管弦楽団の⾳楽監督・⾸席指揮者に就任。幅広いレパートリー、エネルギッシュな演奏で、多くのファンを魅了している。 https://paavojarvi.com

東京オペラシティにおける鮮烈な名演の数々

東京オペラシティにおいても、2010年のシューマンの交響曲全曲演奏会や、2014年のブラームス・シンフォニック・クロノロジー、2018年のバッハ・モーツァルト・シューベルトと、ここで繰り広げられた鮮烈な名演の数々は、今も音楽ファンの間で語り草に。

しかし、こうした一連のコラボレーションのひとつの頂点となるはずだったベートーヴェンの交響曲全曲演奏会――ベートーヴェン⽣誕250年の2020年に予定され、DKBにとっては東京で初――が、コロナ禍を受けて中⽌に。それだけに、今回の来日公演へ寄せるファンの期待もひとしおだろう。

これまで経験したことのない、“攻め”のハイドン

第1夜[12/8]は、ハイドン後期の金字塔「ロンドン・セット」(ハイドンがザロモンの招きでロンドンを訪問するにあたり1791~95年に作曲した12の交響曲)からの3曲。“交響曲の父”の集大成となる最終作・第104番《ロンドン》を軸に、第96番《奇跡》第102番が披露される。

「完璧なるハイドン」と題した拠点ブレーメンでの演奏会をはじめ、ウィーンのコンツェルトハウスなど、昨秋から集中してハイドンの後期交響曲に取り組む彼ら。かねがねヤルヴィは「我々の演奏するハイドンは、いわゆる“ウィーン⾵”ではない」と公言している上に、この来日公演の直前には、まさにそのウィーンでロンドン・セットからの3曲を披露するという絶妙のタイミングもあって、これまで経験したことのない、“攻め”のハイドン像が現出されそうだ。

ヨーゼフ・ハイドン(1732-1809):器楽曲、とりわけ交響曲と弦楽四重奏の発展に大きく寄与した作曲家とみなされるが、オペラ、教会音楽の再評価も進み、古典派時代の総合的作曲家としての実像が浮き彫りにされてきている
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827):ベートーヴェンは1792年にハイドンのもとで本格的な作曲技術を習得するため、ボンからウィーンへと赴いた

コンビの“代名詞”であり、“進化”を続けるベートーヴェン

そして、第2夜[12/9]では、幅広いレパートリーを誇る彼らにあって、その“原点”とも言うべきベートーヴェンへ回帰。その全集録音で、ヤルヴィは2010 年のエコー・クラシック年間最優秀指揮者賞を受賞している。その後も、ステージで折に触れて取り上げるなど、ベートーヴェンは、まさにこのコンビにとっての“代名詞”に。しかも、彼らのベートーヴェンは、決して同じ演奏を繰り返すことなく、常に“進化”を続けている。

楽聖が交響曲の創作において、最初の劇的な飛躍を遂げた第3番《英雄》を軸に、ハイドン風の瀟洒な第8番、さらに《コリオラン》序曲を取り上げる今回。そんな彼らのベートーヴェン解釈の“いま”を捉える、好機ともなろう。

ベートーヴェンとその師ハイドンを続けて聴くことの価値

そしてつい忘れてしまいがちな事実だが、ハイドンはベートーヴェンの師でもある。さらにこの2人の大作曲家によって、いかに「交響曲」というジャンルが劇的な発展を成し得たか、という事実も……。こうした面からしても、彼らの珠玉の交響曲を2夜続けて、しかも極めて先鋭的な演奏で味わえることに、どれほどの価値と愉悦が見出せることか。

それは、未だコロナ禍の影響が続く今の状況を考えあわせれば、なおさらのこと。ぜひとも2夜のステージの両方を味わって、音楽史における“交響曲の飛躍”を、現代における最上の名演で体感してみたい。

公演情報
パーヴォ・ヤルヴィ(指揮) ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団

⽇時: 2022 年 12 ⽉ 8 ⽇(⽊)19:00/9 ⽇(⾦)19:00
会場:東京オペラシティ コンサートホール︓タケミツ メモリアル
出演:パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)、ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団
曲⽬:

12 ⽉ 8 ⽇(⽊)
ハイドン︓
交響曲第 102 番 変ロ⻑調 Hob.I:102
交響曲第 96 番 ニ⻑調 Hob.I:96《奇跡》
交響曲第 104 番 ニ⻑調 Hob.I:104《ロンドン》

12 ⽉ 9 ⽇(⾦)
ベートーヴェン︓
《コリオラン》序曲 op.62
交響曲第 8 番 ヘ⻑調 op.93
交響曲第 3 番 変ホ⻑調 op.55《英雄》

チケット料⾦:[各⽇]S:¥15,000 A:¥12,000 B:¥10,000 C:¥8,000 D:¥6,000 (全席指定・税込)
2 公演セット券 S:¥28,000 ※セット券は東京オペラシティチケットセンター(電話・店頭・ネット予約)のみ取扱

問合せ:東京オペラシティチケットセンター 03-5353-9999

公演詳細はこちら

 

寺西 肇
寺西 肇 音楽ジャーナリスト

1965年、神戸市生まれ。産経新聞文化部記者を経て、音楽ジャーナリストとして、『音楽の友』『レコード芸術』ほか各誌への寄稿や、数多くのCD解説を手掛ける。音楽全般を故...

ONTOMOの更新情報を1~2週間に1度まとめてお知らせします!

更新情報をSNSでチェック
ページのトップへ