成功のバロメーターは来場者数ではなく「質」〜GWは琵琶湖も楽しみに音楽祭へ!
大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...
恒例だったラ・フォル・ジュルネ東京もなく、クラシック音楽ファンにとっては少しさみしいパンデミック中のゴールデンウィーク。しかし、少し足を伸ばすと、すごくいい場所で楽しそうな音楽祭が!
日本最大の淡水湖、琵琶湖のほとりにあるびわ湖ホールで開催される、「近江の春 びわ湖クラシック音楽祭」です。余談ですが、琵琶湖は400万年の歴史があり、世界にも約20しかない古代湖のひとつなんですって。すごい湖なのだろうとは思っていたけど、そう言われると、より貴重な感じがする。
さて、この音楽祭は、2018年にスタートしたもので、プロデュースは沼尻竜典芸術監督。
沼尻さんといえば、オペラ指揮者として知られますが、自らモーツァルトのピアノ協奏曲で弾き振りをするようなお方だけに、声楽家やピアニストへの視線はとくにスルドめ。
そんな芸術監督が、この人出てほしいなぁという気持ちで自ら声をかけ、プログラムの相談までしたアーティストを中心に、充実した公演が並んでいます。芸術監督自ら? と思いますが、音楽大学の本気学園祭実行委員マインドで(実際に桐朋学園大学の学生時代にやっていらしたそう)、楽しげにやっていらっしゃる。
今年の音楽祭のテーマは、カタラーニ作曲 歌劇《ワリー》のアリアの曲名から“さようなら、故郷の家よ”。この、ありきたりでないテーマのチョイスも、オペラのびわ湖ならでは。
アルフレード・カタラーニ(1854-93)作曲《ワリー》のアリア「さようなら、故郷の家よ」
そうして組まれたのが、こちらの前夜祭と2日間の音楽祭のプログラムです。
声楽やオーケストラ公演も充実していますが、ピアノ好き的に注目したいのは、まず、ショパン国際ピリオド楽器コンクールに入賞して注目を集めたフォルテピアノ奏者の川口成彦さん。4月30日のソロリサイタルと、チェロの上村文乃さんと共演する前日祭の「ショパンが聴いたショパン」に出演します。
そしてもう一人、若手ピアニストで注目したいのは、やっぱり牛田智大さん。高関健さん指揮、京都市交響楽団と、ショパンのピアノ協奏曲第2番を演奏します。
牛田さん、昨年10月のショパンコンクールへの挑戦でも注目を集めましたが、それから半年、先の3月のデビュー10周年リサイタルでは、新しい一歩を踏み出したのだなと感じる音楽を聴かせてくれましたので、この公演もすごく楽しみです。
そのほかにも、日本のベテランピアニストたち……小山実稚恵さんがオープニング・コンサートでラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を演奏したり(4月30日)、あとは小ホール公演で既に完売ですが、清水和音さんがヴァイオリニストの戸田弥生さんとのデュオで登場したり(4月30日)、児玉麻理さんのオール・ベートーヴェン・プログラムがあったり(5月1日)。
そして、大ホール公演はS席2500円、小ホールは1500円と、とにかくチケット代が安い!
ところで、音楽祭開催のポリシーとして沼尻芸術監督が出しているメッセージが、こちらです。
「お祭りだから」とレベル的に妥協することなく、会場練習の時間をきちんと取り、来場者数ではなく「質」を成功のバロメーターとする。
なにか、本物のいいものを届けたいという強い想いを感じますね。
いいコンサートを聴いて、琵琶湖のほとりで遊んで、グルメも楽しみ、ついでに京都にも寄ってくる(大津から京都は電車でわずか10分)なんてどうでしょう。いい休暇。
春先の新緑がまぶしい湖なんて、想像しただけでうきうきして、スキップで湖畔を一周したくなってしまいますね。……などと調子のいいことを言いましたが、調べてみると、琵琶湖は一周約200キロ! 「夜通し歩き続けても2日以上かかる」(ビワイチWebサイトより)とのことでした。スキップで一周なんてしたら、膝がぶっ壊れますのでやめましょう。
びわ湖ホールの地図
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly