
ロレンツォ・ヴィオッティが語る東京交響楽団との8年「もっともっと音楽を深く掘り下げて」
2年目は「危険な年」?
2026年10月7日、ミューザ川崎シンフォニーホールで行なわれた東京交響楽団の2027/28シーズンラインナップ発表記者会見に、音楽監督ロレンツォ・ヴィオッティが登壇した。
2026/27シーズンから音楽監督に就任し、その任期が2034年3月までの延長が発表されたばかりのヴィオッティ。「まだこの第1シーズンの最中にはありますが、もうすでに楽団員はもちろんのこと、スタッフ、そして合唱団、すべての方々を私は心から誇りに思っています」と切り出した。
その実感を強くしたのが、9月に演奏したフランツ・シュミット《七つの封印の書》だった。「本当に素晴らしい演奏をしてくれました。特に合唱団は、あたかも簡単な作品であるかのように演奏してくれました。でも、実際にはもっとも難しいと言っていい作品です」。
そんな現在地から、2027/28シーズンにさらに大きな挑戦となるのが演奏会形式で上演するワーグナーの《ローエングリン》だ。「ステージのないワーグナー作品というのは、一見難しいように思われますが、《ローエングリン》は、皆さんがちょっと目をつぶって、音楽に耳を傾けていただければ、その情景の動きをありありと思い浮かべることができるオペラの一つではないかと思っています」。
シュミット作品のみならず、ヴェルディやブラームスのレクイエムを経て挑むワーグナーは、「これまで積み重ねてきた経験がすべて大きく実って、それがつながっていく作品」だと語った。

1990年スイス・ローザンヌ出身。カダケス国際指揮者コンクール、ライプツィヒMDR指揮者コンクールなどで優勝し、2015年ザルツブルク音楽祭にてネスレ・ヤング・コンダクター賞を受賞。グルベンキアン管弦楽団首席指揮者(2018~2021)、ネーデルラント・フィルハーモニー管弦楽団およびオランダ国立歌劇場首席指揮者(2021~2025)を歴任。これまでにウィーン・フィル、ベルリン・フィル、ロイヤル・コンセルトヘボウ管、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管、ベルリン・シュターツカペレ、ミュンヘン・フィル、ロサンゼルス・フィル、クリーヴランド管などを指揮。オペラにおいてもウィーン国立歌劇場、パリ・オペラ座、ミラノ・スカラ座などに客演し、高い評価を得ている。
2014年、東京交響楽団との共演で日本デビュー。初共演から10年を迎えた2024年8月、東京交響楽団次期音楽監督に任命され、2026/27シーズンより第4代音楽監督に就任。2028年8月からはチューリッヒ歌劇場音楽総監督に就任する。
©︎N.Ikegami
また、音楽監督2年目にあたる来シーズンについては、「2年目こそ、ある意味での脆さが出やすい、危険性をはらんだ年になります。しかし、少しずつ相手のことがわかり始めると、当然ながら“小さなぶつかり”も出てくる。実はこれはこれで大切なことだと私は思っています」と述べた。
「私の任期も3年から8年へと延びました。長くいると、もっともっと音楽を掘り下げ、より高い質と、より多く、広く、深くということが可能になってくると思っています。これからの8年をかけて、できることすべてをする気持ちでいます。より強く、よりよい関係を築いていきたい」と力を込めた。
マーラー、ストラヴィンスキー、シューマンともっと音楽を深く掘る
その関係を築いていくために、具体的にはどのようなプログラムが組まれるのか。ヴィオッティが会見で特に注目したのは、マーラー、ストラヴィンスキー、そしてシューマンだった。
今シーズンにすでに演奏したマーラーの交響曲第1番は、「新しい世界の幕開けを思わせる」作品。「本当にその、非常に音楽に対する献身と想像力、そして思い切り、すべてが求められる作品です」。そして来シーズンには交響曲第7番をとりあげる。マーラーが作曲において「和声や作曲技法において挑戦した作品と言える。技術的にも決して簡単ではない」と、オーケストラにとっても大きな挑戦になることを明かした。
そしてストラヴィンスキーについては「私の心にもっとも近い作曲家の一人で、その音色の探求を、東京交響楽団とともにできることを楽しみにしております」と期待を込めた。
最後に、シーズン終盤に置かれるのがシューマンだ。「数週間前に『今、もっとも心にある作曲家は?』と質問されて、シューマンと答えました」。ヴィオッティにとってシューマンは、重くなりすぎてもいけない。一方で、古典的に軽くなりすぎてもいけないそう。「このバランスをオーケストラとともに模索していくことが一つの課題になると思っています」。

ヴァイオリニストの佐藤俊介がクリエイティブ・パートナーに
2027年4月から3年間、ヴァイオリニストの佐藤俊介が東京交響楽団クリエイティブ・パートナーに就任することも発表されている。ヴィオッティはまだ直接会ったことはないが、オランダのオーケストラで楽団員から話を聞き、SpotifyやYouTubeなどで彼の演奏を聴いているという。
「非常に好印象を抱いています。オーケストラとしても、室内楽的に、お互いに親密によく聴き合う姿勢は、とても大事なんです。そのような意味でも彼を迎えるのは大きな意味を持つと思っています」
廣岡楽団長からは、佐藤との活動を通して、指揮者を置かずに一緒に演奏するような取り組みや、バロック音楽のアプローチ、さらにはこれまでオーケストラが取り組んでこなかったジャンルとのコラボレーションへの期待も語られた。
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