柿澤勇人が語る『東京ラブストーリー』とミュージカルの魅力「抑えきれない感情が歌になる」
注目の舞台人が、ミュージカルの魅力を語る連載「WE LOVE MUSIC」。第2回は、舞台や映像で活躍中の俳優、柿澤勇人さんが登場。新作ミュージカル『東京ラブストーリー』のカンチ役への想いや、人生を変えたミュージカル、話題の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の裏話まで、幅広くうかがいました。
大学卒業後、フランス留学を経て、『ELLE JAPAN(エル・ジャパン)』編集部に入社。 映画をメインに、カルチャー記事担当デスクとして勤務した後、2020年フリーに...
柿澤勇人さんの新作舞台『東京ラブストーリー』は、1988年に柴門ふみさんが発表した同名漫画の初ミュージカル作品。東京を舞台に4人の男女のラブストーリーが描かれ、1991年に放映されたテレビドラマは一大ブームを巻き起こした。今回の舞台は、グラミー賞受賞作曲家・ジェイソン・ハラウンドが楽曲を書き下ろし、柿澤さんは主人公の「カンチ」こと永尾完治役を演じる。11月27日から、東京建物Brillia Hallで上演される。
原作の見どころも満載のミュージカル『東京ラブストーリー』
——世界初演となるミュージカル『東京ラブストーリー』。柿澤さんのこの作品との出会いは?
柿澤 大人になってから、ドラマ版をDVDで見ました。登場人物の中では、僕が演じるカンチをふりまわす(赤名)リカが印象に残りましたね。鈴木保奈美さんが演じたリカの大胆で独特な存在感が新鮮でした。話の設定としては、二人がくっついたあと、カンチが初恋の人と仲良くなり、「次週はどうなっちゃうんだろう?」とワクワクしたのを覚えています。DVDもあっという間に見終わってしまいましたね。
——柿澤さんが思う、ミュージカル版ならではの見どころとは?
柿澤 今回の舞台は、ドラマのミュージカル化ではなく、原作マンガをミュージカル化した作品なんです。だから、小田和正さんのあのヒット曲も使われません(笑)。
でも、名シーンや名セリフはだいたいあるし、見どころはかなり網羅しているので、マンガが好きな方もドラマが好きな方も、どちらにも楽しんでもらえるんじゃないかな。あと今回はミュージカルなので、それらとはまったく違う表現方法も加わって、新しい『東京ラブストーリー』になると思います。
ミュージカル『東京ラブストーリー』PV
「カンチ」との共通点はシャイなところ!?
——赤名リカに振り回される「カンチ」ですが、ご自身と似ている点はありますか?
柿澤 カンチは仕事や恋に一生懸命で、誠実で不器用な男ですけど、恋愛に対しては……これは僕もそうなんですけど、積極的なタイプではないし、わりと冒険もしないんですよ。シャイというか……その点は似てるかもしれません。あとカンチは基本的に「受け芝居」なんです。赤名リカに翻弄されてひっぱられ、つっこんでいくんだけどかわされる。“受けの芝居”オンリーというのは初めてなので、それはすごく新鮮です。いつもは問題を起こす側なので(笑)。
——恋愛に控えめといえば、現在放映中の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の源実朝役もそんなタイプですね。
柿澤 たしかに、最近はそういう役が増えている気がします。『鎌倉殿』でいうと、いつもの僕なら源頼家のように「動」の役を求められることが多い。でも、今回の実朝は「静」ですね。ただ、後半は合戦の場面もあったりして、実朝も自分から動き、成長していきましたね。
——話は戻って、『東京ラブストーリー』はジェイソン・ハラウンドが楽曲を手掛けるのも話題です。
柿澤 ジェイソンは、フランク・ワイルドホーン(代表作『スカーレット・ピンパーネル』など)と一緒にやってきた人。彼自身もトニー賞にノミネートされていて、すごい才能をもった人です。ワイルドホーンがロックとクラシックの融合のような曲だとすれば、ジェイソンはジャズとクラシックの融合というか、すごく柔らかなイメージがあります。彼が作る曲は日本人が聴いてもキャッチーで、この作品に合ってると思います。
——今回の作品で、特に聴かせどころの曲は?
柿澤 1幕の中盤で歌う、カンチが恋にめざめた瞬間の曲は、この役のスタートになりそうだなと感じています。あと、2幕の最後で彼の仕事が上向きになる瞬間があるんですが、そこで歌う曲も。この2曲が要になりそうです。
——いろいろとお話を伺っていると、マンガともドラマとも違う魅力をもった作品になりそうで楽しみです。
柿澤 今回の舞台は、冒頭1分でダンスが始まってミュージカルベースになるので、オープニングから楽しめます。また自分としては、海外のものを輸入して和訳するだけではなくて、日本で作って世界に発信できたらいいなと前から思っていて。この作品もゆくゆくはそうなったらと思います。
ミュージカルの歌ではそのときの心情を「語りたい」
——次に、柿澤さんの人生を変えたミュージカルを教えてもらえますか?
柿澤 『ライオンキング』ですね。高校生の課外授業の時間に、劇団四季の舞台を観たんです。最初は興味もなかったし寝ようかなと思ったら、すごくおもしろかった。ここに入って舞台の世界に行きたいと思った、きっかけとなった作品です。
劇団四季『ライオンキング』 PV
——もともとミュージカルには関心があったのですか?
柿澤 いえ、舞台を観るまではサッカーしかしていなくて。歌も習っていなかったですし、ピアノは少し弾きましたが挫折したので、『ライオンキング』を見たときにはミュージカルができる要素は何もなかったんです。でもなぜか「やれる!」っていう直感がありました。
振り返るとあの舞台は、生身の人間が普段出さないような声を出し、動物に扮して父親への想いや自分への後悔を歌で表現するエネルギーに感動したんだと思います。でも、当時はそんなふうに分析することもなくて。とにかく舞台を体で感じて、「やばい、これやりたい」と思いましたね。
——では、思い入れのあるミュージカルソングは?
柿澤 『ライオンキング』の「Endless Night」です。あの曲は自分の役者人生で、後にも先にも一番練習した歌。(劇団四季の)シンバ役のオーディションの課題曲でしたし、多分、1万回くらい歌ったと思うんです。だから、なるべくわかりやすく、物語をお客様に伝えるように歌っています。
『ライオンキング』より「Endless Night」
——歌うときに大切にしていることは?
柿澤 舞台上で歌うときは、そのときの心情を“語れたら”一番いいなと思っています。最近、この業界では技術を見せることが大事という傾向がある気がしています。でも僕は音を外してもいいから、とにかくしゃべって心情を伝えたいです。
——現在は、映像やストレートプレイなど、さまざまジャンルの作品で活躍中の柿澤さんにとって、ミュージカルの魅力とは?
柿澤 歌の前後の“お芝居”かな。ミュージカルって、芝居をしながら何かの感情がわき起こって、抑えきれないから歌になります。シェイクスピアだったら、「愛している」だけでは伝えきれないから、台本3ページくらいを使って愛のセリフを語るように。つまり、ミュージカルの歌って、シェイクスピアの3ページ分くらいのエネルギーと説得力をもつ可能性があるんです。
だから、絶対に歌と芝居はセットになっているし、それがうまくハマればすごくいいシーンになるけれど、実際はなかなか難しい。でもそういうシーンがたくさんつながって一つの作品になったら、とてつもなくいいミュージカルになると思いますね。
【東京公演】
日時: 2022年11月27日(日)~12月18日(日)
会場: 東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)
【大阪公演】
日時: 2022年12月23日(木)~12月25日(日)
会場: 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
【愛知公演】
日時: 2023年1月14日(土)
会場: 刈谷市総合文化センターアイリス 大ホール
【広島公演】
日時: 2023年1月21日(土)〜1月22日(日)
会場: JMSアステールプラザ大ホール
出演:
【空キャスト】柿澤勇人、笹本玲奈、廣瀬友祐、夢咲ねね
【海キャスト】濱田龍臣、唯月ふうか、増子敦貴(GENIC)、熊谷彩春
綺咲愛里、高島礼子、ほか
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