インタビュー
2026.07.29
満を持してソロ・アルバム『Mother』リリース

TSUKEMENリーダーTAIRIKがソロ・デビュー!新たな自分を掘り下げる旅へ

アコースティック・インストゥルメンタル・ユニット「TSUKEMEN」のリーダーを務めるヴァイオリン・ヴィオラ奏者のTAIRIKさん。確かな技術と表現力を活かした演奏と、質の高いオリジナル曲によって、「クラシック」という枠にとらわれない音楽の魅力を多くの人々に伝えています。7月29日に満を持してリリースされたソロ・メジャーデビュー・アルバム『Mother』についてを中心に、TAIRIKさんがいま、音楽家としての自分とどう向き合っているのか、その心の内に迫りました。

取材・文
長井進之介
取材・文
長井進之介 ピアニスト/音楽ライター

国立音楽大学演奏学科鍵盤楽器専修(ピアノ)卒業、同大学大学院修士課程器楽専攻(伴奏)修了を経て、同大学院博士後期課程音楽学領域単位取得。在学中、カールスルーエ音楽大学...

撮影=各務あゆみ

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もっと自分自身と対話をし、音楽を深めていきたい

——これまで「TSUKEMEN」や「MIZUTANI×TAIRIK」など、アンサンブルでのご活動が中心でしたが、今回ソロをと思われたのはなぜだったのでしょうか。

TAIRIK 2024年にオーケストラ・アンサンブル金沢とチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を共演させていただいたことですね。ソロは一人ですべてを作り出さなくてはなりませんし、そのためにもっと自分自身と対話をし、音楽を深めていく必要があります。

ユニットでのアンサンブルはほんとうに毎回刺激的で、メンバーの音楽との相乗効果で新しいものが生まれる喜びがあります。ただ、これから先を見据え、もっと自分のなかにあるものを練り上げていく必要があると感じたのです。これからは年に一度はソロ公演をしたいですね。

TAIRIK(たいりく)ヴァイオリニスト / ヴィオリスト / 作曲家

長野県出身。桐朋学園大学音楽部、同大学院修了。2008年12月にヴァイオリン&ピアノによる3人組インスト・ユニット「TSUKEMEN」を結成。2010年3月にキングレコード よりメジャーデビュー。アルバム『HAPPYキッチン』など、リリースしたCDはクラシック・チャート1位を次々と獲得。 デビューから、日本国内にとどまらず、アメリカ、アジア、ヨーロッパなどで800本を超える舞台に立ち、60万人以上の観客を魅了。ヴァイオリンとヴィオラを持ち替え両方奏で、近年では古澤巌氏と弦楽四重奏団「品川カルテット」を結成。ヴァイオリンとヴィオラのデュオでは、東京都交響楽団のコンサート マスター・水谷晃氏と「MIZUTANI×TAIRIK」を結成しており、各地で演奏会を行っている。 メディアでは、「徹子の部屋」「題名のない音楽会」「きょうの料理 栗原はるみのキッチン日和」など数多くのTV番組に出演
公式サイト: https://tsukemen-music.com/
公式Instagram: https://www.instagram.com/tsukemen_tairik/

聴く人に“寄り添い、鼓舞する”アルバムにしたかった

——表題曲であり、アルバムタイトルにもなっている「Mother」について教えていただけますか。

TAIRIK  アルバムの方向性を決める上で、まずタイトルが決まりました。震災から15年、戦後80年を迎えた世界情勢を見つめる中で、まず“寄り添う”音楽を届けたいと思い、そのなかで母親の愛という、見返りを求めない愛の大きさに気が付きました。そこには子供が幸せに育ってほしい、生き続けてほしいという強い想いがあります。この普遍的な感情が、アルバムのテーマにふさわしいのではないかと思ったのです。

——《Mother》を核に曲目を決められたということですが、「TSUKEMEN」の楽曲も多く含まれています。

TAIRIK 初めてのソロ・アルバムだからこそ、オリジナルを中心に、またこれまでの歩みも入れたものにしたかったのです。曲順は何度か入れ替えましたが、《風の記憶》が入り口となり、最後の《Mother》に到達する、という流れはかなり早い段階で決まりました。

《JONGARA》《KIYARI》といった和のテイストのものも入っていますが、《JONGARA》は青森で弾いた津軽三味線の経験、《KIYARI》は長野の御柱祭(おんばしらさい)で歌われる「木遣り唄」からインスピレーションを得ています。今回のアルバムに入れたかったもう一つの要素、聴く人を“鼓舞する”曲でもありますね。ちなみに《JONGARA》は音楽之友社さんから楽譜も出版されているので、ぜひ多くの方に弾いていただきたいです。

「御柱祭」は日本三大奇祭の一つともいわれ、長野の諏訪大社で7年に一度開催される迫力満点の神事。長野出身のTAIRIKさんは小学生のときに参加して、その深い印象から《KIYARI》が生まれた

「アンサンブル」を経験してきたからこその「ソロ」

——TAIRIKさんはヴァイオリンとヴィオラ、両方の楽器を巧みに使われていますね。今回も楽曲ごとに変えていたり、両方を弾き分けていらっしゃいます。

TAIRIK ヴィオラをよく演奏するようになったのは今回の収録曲であり、東日本大震災の直後に書いた《天の階》がきっかけでした。“人の声にもっとも近い”と言われる楽器だからこそ出せる音色が、この曲にふさわしいなと。またアンサンブルをするうえでも広がりが出ますしね。

——アンサンブルといえば、今回はピアニストの佐藤卓史さんと久しぶりの共演ですね。

TAIRIK 技術の高さはもちろんですが、楽譜から読み取る情報量や相手の呼吸や動きに自然に寄り添う力に感動します。また今回はクラシック音楽とはだいぶ遠い音楽の《ROCK VIOLA》でアグレッシブな演奏を聴かせてくださり、新たな一面にも出会えました。

TAIRIKさんのこれまでの歩みと新しいはじまりを示すアルバムとなった『Mother』。寄り添いながら力も与えてくれる楽曲と演奏を、ぜひ多くの方にお楽しみいただきたい。

CD情報
『Mother』

 

 

[KICC-1656]

収録曲

①風の記憶 (作曲:TAIRIK 編曲:阿久津健太郎)
②JONGARA (作曲:TAIRIK 編曲:木村裕)
③KIYARI (作曲:TAIRIK 編曲:萩森英明)
④旋律の彼方へ (作曲:SUGURU&KENTA 編曲:阿久津健太郎)
⑤また逢える日まで (作曲・編曲:TAIRIK&SUGURU)
⑥ROCK VIOLA (作曲:TAIRIK 編曲:阿部篤志)
⑦天の階 (作曲:TAIRIK 編曲:阿久津健太郎)
⑧Mother (作曲:TAIRIK 編曲:阿久津健太郎)

ヴァイオリン&ヴィオラ:TAIRIK 
ピアノ:佐藤卓史

 

定価:¥3,300(税抜価格 ¥3,000)

詳細はこちら

取材・文
長井進之介
取材・文
長井進之介 ピアニスト/音楽ライター

国立音楽大学演奏学科鍵盤楽器専修(ピアノ)卒業、同大学大学院修士課程器楽専攻(伴奏)修了を経て、同大学院博士後期課程音楽学領域単位取得。在学中、カールスルーエ音楽大学...

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