「ピアノ・ソナタ第9番 ホ長調」――ついにチェンバロからピアノの時代へ
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1792年、22歳のベートーヴェンは故郷ボンを離れ、音楽の中心地ウィーンに進出します。【天才ピアニスト時代】では、ピアニストとして活躍したウィーン初期に作曲された作品を紹介します。
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
ついにチェンバロからピアノの時代へ「ピアノ・ソナタ第9番 ホ長調」
小山 以前から気になっていることがあります。《悲愴》までは「チェンバロまたはピアノフォルテのためのPour le Clavecin ou Piano-Forte」という記述がありましたが、「第9番」からは「ピアノフォルテのためのPour le Piano-Forte」となりますよね。
平野 《悲愴》くらいまでは、鍵盤楽器といえばチェンバロが主流でした。「第9番」の頃はそろそろ19世紀になろうという時期で、チェンバロよりもピアノフォルテが広く普及してきました。出版社としては、2つの楽器で演奏可能とした方が売りやすかったでしょうが、ちょうど楽器が入れ替わる時期に差し掛かっていて、少しずつチェンバロ(あるいはクラヴサン)という表記が消えてゆく時代でした。
——小山実稚恵、平野昭著『ベートーヴェンとピアノ「傑作の森」への道のり』(音楽之友社)68ページより
ピアノという楽器の進化とともにピアノ・ソナタを書き続けたベートーヴェン。のちに弦楽四重奏にも編曲される大曲第9番は、ついに「ピアノだけ」を想定した作品となりました。小山さんによると、すぐに音が減衰してしまうチェンバロで弾くのは難しいフレーズが出てくるそうです。8番までのピアノ曲と聴き比べてみても面白いかもしれません。
「ピアノ・ソナタ第9番 ホ長調」Op.14-1
作曲年代:1797~98年(ベートーヴェン27歳〜28歳)
出版:1799年12月モロ社
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