「女暴君(ラ・ティランナ La Tiranna)」——ベートーヴェン唯一の英語の詩にのせた歌曲
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1792年、22歳のベートーヴェンは故郷ボンを離れ、音楽の中心地ウィーンに進出します。【天才ピアニスト時代】では、ピアニストとして活躍したウィーン初期に作曲された作品を紹介します。
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
ベートーヴェン唯一の英語の詩にのせた歌曲 「女暴君(ラ・ティランナ La Tiranna)」
ウィーン生まれの女性ピアニスト、マリア・カロリーナ・バルバラ・フォン・チョッフェン(1772~1847)に献呈されている。
「ああ、考えるだけで辛い、この悲運は運命のさだめなのか! 私の感情を煽らないでくれ。傲慢な麗しき女よ、運命の時に強烈な雷鳴を浴びた。それはお前の無慈悲な力、一瞬、私の魂の破壊を見せる」といった、一見悲劇的な内容だが、女暴君とは恋する人だ。
イギリス民謡編曲を除けば、ベートーヴェン唯一の英語の歌詞による歌曲(タイトルのみイタリア語)。
ウィリアム・ウェニントン(生没年不詳)というウィーンに滞在していたイギリス人の詩により、1798年暮れに作曲されたカンツォネッタ。イギリスに帰国する詩人に託され、1799年12月にロンドンのブローデリップ&ウィルキンソン社から初版出版された。
アンダンテ、変ホ長調、4分の2拍子、全81小節の通作歌曲だが、中間部でハ短調によるやや大げさな悲嘆が聴ける。
解説:平野昭
「女暴君」と見て一瞬びっくりしますが、恋する人のことなのですね。女性に振り回されてしまう悲嘆が込められた詩に、ベートーヴェンは共感していたのでしょうか。
「女暴君(ラ・ティランナ La Tiranna)」WoO125
作曲年代:1798/99年(ベートーヴェン28/29歳)
出版:1799年12月
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