アリエッテ「くちづけ」——少年の楽しい自慢話
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1792年、22歳のベートーヴェンは故郷ボンを離れ、音楽の中心地ウィーンに進出します。【天才ピアニスト時代】では、ピアニストとして活躍したウィーン初期に作曲された作品を紹介します。
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
少年の楽しい自慢話 アリエッテ「くちづけ」
クリスティアン・フェリックス・ヴァイセ(1726~1804)が1758年に出版した『楽しいリート集(リーダー)』に収載された詩に、1798年に曲付けしたことがスケッチ研究から知られている。しかし、残されている完成稿としての自筆総譜には1822年12月の日付があり、1825年初頭に初版された。ヴァイセの詩では、少年が大好きな少女に首尾よくキスしたことが得意げに語られている。
「僕ただ一人がクロエのそばにいたんだ、そこでキスしようとしたら、彼女は叫ぶから、って言ったんだ。でも僕は無理やりキスしたんだ。叫ばれなかったかって? そりゃ、もちろん叫ばれたよ。でもさ、ずっと後になってからね」と楽し気に歌う。
アリエッテはアリエッタ(小さなアリア)のドイツ語表記。イ長調、4分の3拍子のアレグレットには、ドイツ語で「生き生きと、でもあまり速すぎずに、そして、ちょっとふざけたように」と指示されている。少年と少女の明るく健康的な話。「もちろん叫ばれたよ」の後の「でもさ」からは、笑いながらの得意げの歌唱となる。
解説:平野昭
なんとも可愛らしい歌詞ですね。後半、少年がスキップしているようなメロディも楽しい作品です。
アリエッテ「くちづけ」op.128
作曲年代:1798年/1822年12月(ベートーヴェン28/52歳)
出版:1825年春
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